世界法廷プロジェクトの成功

 2.世界法廷プロジェクトに関する決議

 当協会の加盟する、核兵器に反対する国際法律家協会は、昨年5月、ジュネーブで、国際平和ビューロー及び核戦争防止のための国際医師の会とともに、三団体の共催による会議を開き、「国連憲章第96条に基づき、国連総会において、『核兵器の使用と使用の威嚇の違法性』について国際司法裁判所に勧告的意見を求める決議」を求め、運動を国際的規模で展開すること、即ち「世界法廷プロジェクト」を展開することを決定した。この決定に基づき、1年間にわたり、国連及び国連専門機構である世界保健機構(WHO)において活発なロビー活動を展開し、また、当協会をはじめ各国の加盟団体は、この運動を支持するための「公的良心の宣言」の署名を集めるとともに、自国の政府に対し国連総会の提案国になるよう要請行動をするなどして、上記決議の実現のための運動を続けてきた。

 その結果、本年5月、世界保健機構(WHO)総会は、「核兵器の使用は違法かどうかにつき、国際司法裁判所に勧告的意見を求める決議」をし、同決議の送付を受けた国際司法裁判所は、審理を開始するため、WHO並びにWHO加盟国政府に対し、来年610日までに陳述書を提出するよう通知を出した。一方、現在開会中の国連総会においても、非同盟諸国会議は110ヶ国の全会一致で、国連総会(第一委員会平和・軍縮)に「核兵器の威嚇と使用が国際法上許されるかどうか、について国際司法裁判所に勧告的意見を求める決議案を提出した。この事態に驚き、狼狽した米・英・仏ら核保有国は、直接かつ強力な圧力をかけた結果、今年の採決は見送られることになった。

 国際司法裁判所に核兵器の違法性の判断を求める運動は、核兵器のない世界を実現するための有効かつ重要なステップとなると我々は考える。

 したがって、日本政府は、人類最初の原爆(核兵器)攻撃を受け、言語に絶する被害を受けた唯一の被爆国の政府として、率先して核兵器廃絶の運動のイニシアチブを取り、非同盟諸国会議の上記の決議案を支持し、核兵器保有国を含む国連加盟各国に対し、国連総会において上記決議を採決するように働きかけることを、我々は要求する。

 また、すでに世界保健機構の上記決議の送付を受け、審理の準備を開始した国際司法裁判所から日本政府に対し要請されている陳述書の作成については、核兵器の使用の違法性を証明する広島と長崎の原爆被害の実情を証拠として提出するために、早急に被害者団体や被爆関係資料を蒐集し保存している団体及び個人に協力を求めて、出来るかぎりの完全な準備をするべきである。核兵器の違法性を世界法廷で明らかにするためのこの機会に、日本政府がなし得る準備を些かでも怠ることのないよう要望するものである。

 これを怠ることは、政治的にも道義的にも被爆国の政府として絶対に許されないことを肝に銘じなければならない。日本政府が、核兵器のない世界を実現するために、国際社会において全力を挙げることを、改めて要求する。

 

以上、決議する。

1993123

核兵器の廃絶をめざす関東法律家協会 理事会