◆◆◆ アメリカのイラク攻撃に反対する声明 ◆◆◆

1 アメリカがイラクへの先制武力攻撃を開始しようとしている。空爆だけではなく、地上戦も予定され、兵員の派遣や物資の調達などの準備が整えられている。しかも核兵器の先制使用まで選択肢とされている。在日米軍の動きもあわただしくなっている。現実に攻撃が開始されれば、多くの人命が奪われ、生活の基盤が破壊され、地球環境への悪影響も避けられないであろう。戦争の惨禍がイラクと近隣諸国の民衆を襲うことになる。

2 アメリカは、イラク攻撃の理由として、イラクが、国連安保理の決議を無視していること、大量破壊兵器を開発し、それを拡散しようとしていること、テロリストを擁護していること、独裁国家であることなどを挙げている。アメリカは、すべての国家は自由と民主主義に依拠しなければならず、イラクはフセインという独裁者の国家であり、これを『ならず者国家』・『悪の枢軸』として打倒しなければ、国際社会の平和と正義は実現できないとしている。危険を見ながら行動しないことは許されないし、「自衛」のために必要であれば、国連決議の有無にかかわらず、単独での核先制攻撃をためらわないというのである。

3 ところで、国連憲章は、国連の目的を「平和を破壊するに至る虞のある国際紛争または事態を平和的手段によって実現すること。」(第1条1項)、「人民の同権および自決の原則の尊重に基礎を置く諸国間の友好関係を発展させること。」(同条2項)などとしている。そして、「平和的手段によって国際の平和および安全ならびに正義を危うくしないように解決しなければならない。」(第2条3項)こと、「政治的独立に対する、武力による威嚇または武力の行使を、慎まなければならない。」(同条4項)ことなどをその行動原則としている。他方、安全保障理事会に、平和に対する脅威の認定と非軍事的および軍事的措置をとる権限を認め(39条)、加盟国に対し、武力攻撃が発生した場合の個別的および集団的自衛権を認めている(51条)。

4 この国連憲章に照らせば、アメリカのイラク攻撃は、『平和的手段による解決の原則』と『内政不干渉の原則』を侵害するものであり、自衛権の行使とは程遠い行動ということになる。そして、かかる状況下における核兵器の使用は、「国家の存亡の危機以外の核兵器の使用は国際法に違反する。」との国際司法裁判所の勧告的意見を明らかに無視していることになる。
  アメリカの圧倒的な軍事力の行使は、『人間狩り』ともいうべき地獄絵図をもたらすであろうし、現在の国際社会の公序である国連憲章と国際司法裁判所の決定を有名無実化することになる。アメリカのイラク攻撃は、人道と正義を基調とする国際法に違反するものである。

  わたしたちは、核兵器の廃絶を目指す法律家として、アメリカのイラク攻撃と我が国の協力に反対する。

                                           2002年10月3日
                                  日本反核法律家協会理事会