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第54回国連総会での決議-核兵器のない世界へ  新しいアジェンダの必要性
1.

11月9日、第一委員会(軍縮・安全保障    12月1日、本会議での投票結果

賛成 90                 賛成 111

         反対 13                 反対  13

         棄権 37                 棄権  39



前  文

1.      核兵器の存在は人類の存続への脅威であると確信し、

2.      核兵器が無期限に保有されるという展望を憂慮し、核兵器を永続的に保有しつつ決してそれを使用しないことが可能であるという議論は、人間の歴史から見て支持できないことを信じるとともに、唯一の完全な防御は、核兵器を廃棄し、核兵器が再び製造されないと保証することであると確信し、

3.      核兵器能力をもちながら核不拡散条約(NPT)に加盟していない三ヶ国が、核兵器の選択肢を引き続き保持していることを憂慮するとともに、彼らがその選択肢を放棄していないことを憂慮し、

4.      核兵器削減交渉が現在停止していることを憂慮し、

5.      大多数の国が、核兵器およびその他の核爆発装置を受領したり、製造したりその他の方法で入手しないということについて法的拘束力のある約束を行ったことに留意するとともに、このような約束は、それに対応するような、核軍縮を追求するという核兵器国の法的拘束力のある約束を背景として、なされたものであることを想起し、

6.      1996年の勧告的意見における、国際司法裁判所(ICJ)の全員一致の結論、すなわち、厳格かつ効果的な国際管理の下において、全ての側面での核軍縮に導く交渉を誠実に追求し、かつ完結させる義務が存在するという結論を想起し、

7.      限りない将来にわたって核兵器の保有が正当であるとみなされるような見通しを持って、国際社会は新しい千年期に突入してはならないことを強調するとともに、核兵器を永久に禁止し廃絶することに断固として着手する必要性を確信し、

8.      核兵器の完全な廃棄のためには、もっともたくさんの核兵器を保有する核兵器国が最初に措置をとることが必要であると認識するとともに、より少ない核兵器を保有する核兵器国が、将来において切れ目のない形でこれらの国々に繋がってゆかねばならないことを強調し、

9.      戦略核兵器削減交渉(START)のこんにちまでの成果および将来の約束を歓迎し、またそれが、核兵器の廃棄をめざして企図された、核兵器の実際の解体および破壊という目的をもった、全ての核兵器国を含む数国間の機構として発展する可能性を示していることを歓迎し、

10.       核兵器計画から核分裂物質を不可逆的に除去することを保証するための、アメリカ合衆国、ロシア連邦、国際原子力機関(IAEA)の三者間の構想を歓迎し、

11.       保有核兵器を実際に廃棄し、その 

   ために必要な検証体制の開発が行われる前に、核兵器国が即座にとることができ、またとるべきである多数の実践的措置があると信じ、これに関連して、最近の一方的な措置およびその他の措置に注目し、

12.       対弾道ミサイルシステム制限条約(ABM条約)が現在も戦略的安定性の要であることを明記し、

13.       NPTの各条項は、加盟国に対して常に、いかなる状況下においても拘束力があることを強調し、

14.       ジュネーブ軍縮会議(CD)において、「核軍拡競争の停止と核軍縮」と題するそのアジェンダ(議事次第)の第一項の下で、専門コーディネーターの報告書とそこに含まれている委任権限に基づいて設置された特別委員会において、差別的でなく、多国間の国際的かつ効果的に検証可能な、核兵器およびその他の核爆発装置用の核分裂物質の生産禁止条約に関する交渉を行うことの重要性を強調するとともに、このような条約は、核兵器の完全な廃棄に至る過程をさらに下支えするに違いないと考え、

15.       核兵器の完全な廃棄が達成されるためには、核兵器の拡散を防止する実効的な 国際協力が不可欠であり、とりわけ、核兵器あるいはその他の核爆発装置用の全ての核分裂物質に対する国際管理の拡大を通じて、そのような協力は増進されねばならないことを強調し、

16.       現在ある非核地帯諸条約の重要性、およびそれらの諸条約の関連議定書の早期の署名と批准の重要性を強調し、

17.       1998年6月9日の共同外相宣言に注目し、またそれが、二国間、数国間、多国間のレベルにおいて、相互に補強し合う一連の措置を並行して追求することを通じて、核兵器のない世界を達成するための新しい国際的アジェンダを要求していることに注目し、

18.       決議53/77Y(訳者注:昨年の国連総会における新アジェンダ決議)の実行に関する国連事務総長の報告書を認識し

19.       核兵器のない世界を維持するために必要な検証制度についての探求に関するIAEA事務局長の最初の報告書に留意し、

主  文

1.      核兵器国に対して、自国の保有核兵器を迅速かつ全面的な廃棄を完了するという明確な約束を行い、また、遅滞なく加速された交渉過程に入り、そうして、NPT第6条の下での誓約である核軍縮を達成することを要求し、

2.      アメリカ合衆国とロシア連邦に対して、これ以上の遅滞なくSTARTUを発効せしめ、早期締結をめざしてSRARTVの交渉を開始することを要求し、

3.      核兵器国に対して、核兵器の完全な廃棄に通ずる過程に、五つの核兵器国全てが切れ目なく統合されてゆくために必要な措置をとることを要求し、

4.      戦略的安定性を強化し、核兵器を廃棄する過程を容易にし、国際的な信頼と安全に寄与するために、安全保障政策における核兵器の役割を減らせる方法と手段を調査することを求め、

5.       このような文脈において、核兵器国に対して、

 核兵器削減の不可欠な一部分として戦術核兵器の廃棄をめざした削減を行い、

 核兵器の警戒体制を解除し、 運搬手段から核弾頭をとり外す可能性を調査するとともに、それに着手し、

さらに進んで、核兵器政策や体制を吟味し、

自国の保有核兵器と核分裂物質の目録に関する透明性を実証し、また、

軍事的要求より過剰であると申告されたすべての兵器用核分裂物質を、現行の任意保障措置協定の枠内でIAEAの保障措置のもとに置くよう、、早期に措置をとることを要求し、

6.      核兵器能力をもちながらNPTにいまだ加盟していない三ヶ国に対して、明確にかつ緊急に、すべての核兵器の開発や配備の追求を中止し、地域および国際の平和と安全や、核軍縮と核兵器の拡散防止に向かう国際社会の努力を害するような、いかなる行動も慎むことを要求し、

7.        いまだそうしていないすべての国に対して、NPTに無条件にかつ遅滞なく加盟し、また、非核兵器国として条約加盟することに伴って必要とされるすべての措置をとることを要求し、

8.      いまだそうしていないすべての国に対して、IAEAと全面的保障措置協定を締結し、また1997年5月15日のIAEA理事会で承認された模範議定書に基づいて、それら保障措置協定の追加議定書を締結することを要求し、

9.      いまだそうしていないすべての国に対して、包括的核実験禁止条約(CTBT)に無条件にかつ遅滞なく署名および批准し、また、条約が発効するまでの間、核実験の一時停止を行うことを要求し、

10.       いまだそうしていないすべての国に対して、核物質防護条約に加盟し、また、それをさらに強化すべく努めることを要求し、

11.       アメリカ合衆国、ロシア連邦、IAEAの三者間の構想の発展を促すとともに、同様な制度が他の核兵器国によっても開発されることを促し、

12.       ジュネーブ軍縮会議(CD)に対して、「核軍拡競争の停止と、核軍縮」というそのアジェンダの第一項の下で、専門コーディネーターの報告書とそこに含まれている委任権限に基づいて、核不拡散および核軍縮という二つの目的を考慮しつつ、差別的でなく、多国間の、国際的かつ効果的に検証可能な、核兵器およびその他の核爆発装置用の核分裂物質の生産禁止条約の特別委員会を再び設置し、その交渉を追求し遅滞なく締結させることを要求し、また、その条約が発効するまでのあいだ、すべての国に対して、核兵器およびその他の核爆発装置用の核分裂物質の生産の一時停止を行うことを要求し、

13.       ジュネーブ軍縮会議(CD)に対して、核軍縮をとり扱う適切な補助組織を設立すること、また、そのために、適切な手段およびとりくみ方についての集中的協議を、遅滞なく決定に達することをめざして、優先的事項として追求することを要求し、

14.       核軍縮および核不拡散に関する国際会議は、他の場所でとりくまれている努力を効果的に補完することになり、核兵器のない世界のための新しいアジェンダの強化を促進しうると考え、

15.       この文脈において、2000年の千年期総会が、平和、安全保障および軍縮を考慮することに留意し、

16.       1995年のNPT加盟再検討延長会議で採択された諸決定と決議を完全に履行することの重要性を強調し、これとの関連で、2000年4月・5月に開催される来るべきNPT加盟国再検討会議の重要性を強調し、

17.       核兵器のない世界を維持するためには、検証体制の開発が必要となることを確認し、IAEAに対して、関連の他の国際機関や国際組織とともに、そのような制度の構成要素について引き続いて探求することを求め、

18.       核兵器の使用および使用の威嚇が行われないということをNPT加盟国である非核兵器国に実効的に保証するような、国際的に法的拘束力のある条約の締結を要求し、

19.       非核地帯を、とりわけ中東や南アジアなどの緊張状態にある地域において、自由にとり結ばれた協定に基づき、追求し、拡大し、設立することは、核兵器のない世界という目的に向けて大きく貢献することを強調し、

20.       核兵器のない世界が、究極的には、普遍的で多国間で交渉された、法的に拘束力のある条約や、相互に補完し合う一連の条約体系による下支えが必要であることを確認し、

21.       事務総長に対して、現存の資源の範囲内で、この決議の履行についての報告書を作成することを求め、

22.       第55回国連総会の暫定議題に「核兵器のない世界へ:新しいアジェンダの必要性」と題する項目を入れ、この決議の履行について検討することを決定する。

翻 訳: 梅 林 宏 道

     太平洋軍備撤廃運動(PCDS) 

     国際コーディネーター