●●●予防的武力行使に反対する国際アピ−ルへの支持署名のお願い●●●

日本の法律家及び法律家の卵の皆様へ

 国際反核法律家協会(IALANA)の法律家たちは、下記のとおり、国際アピールを起案し、いま世界の法律家の支持署名を集めています。

 支持署名をしてくださる方は、下記アラン・ウェアあて下記e-mailへ、2月14日までに、英語で氏名と自己紹介(肩書き)をお知らせください。

記載事項(英語で)★
 ・Name(氏名):
 ・Occupation(職業):
    例)a lawyer in Japan
      a law student at ○○University in Japan
      (教授・学生の方の場合は、専攻学科・大学名等も明記してくださるようお願いします。)
 ・I agree with your appeal.(予防的武力行使に反対する国際アピ−ルへの賛同の意志表明)
<宛先>------------------------------------------------------
Alyn Ware
e-mail:alynw@attglobal.net
P.O.Box23-257, Cable Car Lane
      Wellington, Aotearoa-New Zealand
Phone: (64) 4 385-8192. Fax 385-8193
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<<予防的武力行使に反対する国際アピ−ル>>

・ 背景説明

国際反核法律家協会(IALANA)は、昨年2002年11月、ドイツのマールブルグで総会を開催し、ヴィラマントリー氏(国際司法裁判所の前判事・次長)を新しい会長に選出しました。IALANAは1989年、ストックホルムで設立され、創立時の課題であった「核兵器の使用が国際法に違反する」という主張を、国際司法裁判所の勧告的意見として国際社会に示す成果をおさめました(1996年)。また、「国連国際法の10年」に関連して、「ハーグ平和アピール(HAP)市民社会会議」を開催し、平和と正義の21世紀を展望する課題(ハーグ・アジェンダ)を提起しました(1999年)。

同じく2002年11月、大量破壊兵器にかんする国連安保理決議第1441号がだされ、
現在米英によるイラクへの武力攻撃と国際法の関係がひろく論議されています(2003年2月)。IALANAはヴィラマントリー氏を含めて、この問題について論議した結果、下記の国際アピ−ルをまとめ、いま賛同者・支持者を集めています。

この国際アピ−ルは、要約すると次のように主張しています。「現在構想されているイラクに対する武力の「予防的」行使は、違法かつ不必要なものであり、従って国連はこのような予防的行使の権限を与えてはならず、またいかなる国家も武力の予防的行使に踏み切るべきではない。」
その理由の要点は、国際法の一般原則に照らし次のとおりです。
・国家間の紛争は平和的に解決することが要請される。
・武力行使は、武力攻撃が発生した場合もしくはその攻撃が差し迫っている場合にのみ、又は、国連安保理が平和に対する脅威であると宣言し、かつ非軍事的措置が不適切であると決定して国連の授権がある場合にのみ、許されうる。しかるに、侵略行為も、そのような行為の差し迫った脅威の証拠も、現在皆無である。また、武力の予防的行使については、先例がない。
・国際法の執行は、すべての国家について一貫した形でなされるべきである。
・様々な懸念に対処するため、予防的武力行使に替わる諸方策が利用できる。

現在、署名者のなかには、次の人々が含まれています。
ヴィラマントリー(IALANA会長、国際司法裁判所の前判事・次長、国際法;スリランカ)
ピーター・ヴァイス(IALANA・前会長、核政策法律家委員会会長;USA)
リチャード・フォーク(プリンストン大学名誉教授、国際法;USA)
ソール・メンドロヴィツ(ラトガース大学名誉教授、国際法;USA))
ジュルス・ロベル(ピッツバーグ大学法科大学院教授;USA)
ピータ・ベッカー(IALANA事務局長、弁護士;ドイツ)
フォン・デン・ヴァン・ビーセン(IALANA副会長、弁護士;オランダ)
ニコラス・グリーフ(ブールネマウス大学教授、国際法;英国)
浦田賢治(早稲田大学教授、IALANA副会長;日本)

この国際アピ−ルの原文は英語であって、その日本語文は伊藤勧・山田寿則
共訳、浦田賢治・監訳です。
(浦田賢治、2003年2月10日)


<<予防的武力行使に反対する法律家及び法律学者による国際アピ−ル>>


世界の様々な法的伝統を背景に持つ、以下に名を連ねる法律家及び法律学者たちは、
中東における大量破壊兵器の拡散疑惑を巡る紛争と、この事態に対応して武力が行使される可能性について、極めて憂慮している。

世界のいかなる地域においても、大量破壊兵器の開発は、このような兵器の取得、保有、及びこの兵器の威嚇又は使用を禁じている普遍的規範に違反する行為であり、このような行為に対しては当然しかるべき処置が講じられるべきである。しかし、現在構想されているイラクに対する武力の「予防的」行使は、違法かつ不必要なものであり、従って国連はこのような予防的行使の権限を与えてはならず、またいかなる国家も武力の予防的行使に踏み切るべきではない。

国際法の一般原則は、次のように定めている。

・国家間の紛争は平和的に解決することが要請される。

・武力行使は、武力攻撃が発生した場合もしくはその攻撃が差し迫っている場合にのみ、又は、国連安保理が平和に対する脅威であると宣言し、かつ非軍事的措置が不適切であると決定して国連の授権がある場合にのみ、許されうる。

・国際法の執行は、すべての国家について一貫した形でなされるべきである。
これらの原則を明確にし適用すれば、イラクに対する武力行使は、次のような根拠に基づき違法行為であると思われる。

紛争の平和的解決が要請されている。

(1) 国連憲章及び慣習国際法は、国家に対して、紛争の平和的解決を求めることを要請している。国連憲章第33条は、「如何なる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない」と規定している。

(2) 国連憲章第51条によれば、「武力攻撃が発生した場合に」初めて、武力による威嚇または武力の行使が国家に許されるのである。それも「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」に限定されている。

(3) 侵略行為または平和に対する脅威が認定された場合、国連安保理は、国連憲章によって、まず「兵力の使用を伴わない措置」(第41条)を使用することが求められている。このような措置が「不充分であろう」場合、又は「不充分なことが判明した」(第42条)場合に限り、国連安保理は、武力行使の権限を与えることができる。

侵略行為も、そのような行為の差し迫った脅威の証拠も、現在皆無である。

(4) 1991年、国連安保理は、イラクによるクウェ−トへの現実の侵攻については、平和の回復に必要なあらゆる手段をとる権限を与えることで対応した。しかし今回の場合、イラクが他国を攻撃することを意図している兆候は皆無であり、またこのような攻撃のために軍備を増強しているという証拠も一切存在
しない。更に、イラクが係争中の主要国家(例えば、アメリカ合衆国と英国)を攻撃する軍事能力を持たないことは、一般に周知の事実である。

武力の予防的行使については、先例がない。

(5) 敵対国による現実の攻撃あるいはその差し迫った危険が存在しない状態で、予防的措置として武力行使を認める国際法上の先例は皆無である。他方、武力の予防的行使が違法であることを明確に示している法は存在する。ニュ−ルンベルグの国際軍事裁判所は、連合国の侵攻を予防するためノルウェ−に対する攻撃を余儀なくされたというドイツの主張を退けている (6 F.R.D. 69, 100-101, 1946)。

(6) 暴力行為の脅威が潜在的で、差し迫っていない状況を根拠に、国連安保理が武力行使の権限を付与したことはない。過去におけるすべての授権は、現実の侵攻、大規模な暴力行為又は人道上の緊急事態に対応したものであった。

(7) もし仮に、国連安保理が、史上初めて、予防戦争の権限を与えるとすれば、安保理は、武力行使に関する国連憲章の規制を根底から掘り崩すことになるであろう。また、安保理は、諸国が様々な状況において「予防的」武力行使を考慮し、戦争を時代錯誤で禁止された行為ではなく、むしろ再び国際政治の道具としてしまう危険な先例を提供することになるであろう。もし、国際法及び国連憲章の枠外で武力が行使されるようなことになれば、何世代もの時間をかけ、多大な人的犠牲を払った末に確立した国際法及び国連憲章の体系と権威は、いま予見できる時間枠で考えても、著しく損なわれることになるであろう。

国際法は、その一貫性が維持される必要がある。

(8) 国際法が法として国際社会の尊敬を維持し、また強者が弱者を服従させるための道具であるとして国際社会に拒否されないためには、国際法は首尾一貫した形で適用されるべきである。

(9) 湾岸戦争を終結させる停戦条件を規定した国連安保理決議第687は、イラクの大量破壊兵器の廃絶それ自体が目的なのではなく、その廃絶は「中東地域に大量破壊兵器のない地帯を設立するという目標へ至る措置を示したものである」と認めている。

(10) 国際司法裁判所は、すべての国家は「厳格かつ効果的な国際管理の下において、あらゆる点での核軍縮に導く交渉を誠実に遂行し、かつ完結させる」
義務を負うと全員一致の判断を下している(核兵器の威嚇または使用の合法性に関する勧告的意見、国際司法裁判所、1996年)。 この目的を達成するための意味のある措置がすべての国家により講じられるべきであり、また〔他国に対する〕国際法の履行の強制を望む国家は、率先して自らこの要請を満たす必要がある。

(11) イラクの大量破壊兵器の廃絶を確保する活動は、同地域及び世界の他の大量破壊兵器の廃絶を確保する同様な活動と平行して、実施されねばならない。これには、イスラエルの核兵器や、中国、フランス、インド、パキスタン、ロシア、英国及びアメリカ合衆国の核兵器が含まれる。

様々な懸念に対処するため、予防的武力行使に替わる諸方策が利用できる。

(12)国連安保理は、イラクの大量破壊兵器に関する様々な懸念に対処するため、多くの方策を既に採用してきた。これらの中には、外交圧力、交渉、軍事応用性のある物品についての制裁、貯蔵されている大量破壊兵器の破壊、及び大量破壊兵器の生産に利用可能な性能を備える施設の査察が含まれている。現時点で、このような方策は完全でないことが判明しているが、イラクの大量破壊兵器能力のほとんとを破壊・削減するに至るには十分実効的に機能している。

(13)イラク及びイラクの指導者を、重大な人権侵害、戦争犯罪、平和に対する罪及び人道に対する罪の廉で告発する方策も利用できる。この方策には、普遍的管轄権をもつ国内裁判所、国連安保理によるアド・ホック国際刑事裁判所の設置、また2002年7月以降に犯された犯罪に対する国際刑事裁判所の活用、そして国際司法裁判所が含まれる。


国際法の原則を無視した大国による武力行使は、国際法の構造を脅かすものであり、更なる違反行為、そして暴力行為と無秩序の循環を拡大させるおそれがある。

我々は、国連及びすべての国家に対して、国際法を遵守する道を追求し、大量破壊兵器に起因する脅威及び他の平和に対する脅威について、あくまで平和的な解
決を図る路線を引き続き推し進めることを要求する。

・これ以上の情報については、国際反核法律家協会(IALANA)のWebsite:www.ialana.orgを、参照してください。 (終)