■■■2001.12.9 日本反核法律家協会 2001年総会議案〜2002年活動方針〜■■■

2001.12.9の総会で承認された、2001年総会議案です。

                    2001.12.9


■第1 情勢■

1 テロと報復戦争
9・11テロ事件が、国際社会に投げかけた波紋は大きい。テロリストが民間航空機をハイジャックし、ペンタゴンと世界貿易センタービルに突入し、数千人の犠牲者を出したことは、現代の国際社会が、如何に危険に満ち溢れているかを、改めて私たちに教えている。
アメリカ政府は、これを「戦争」と位置付け、同盟国とともにアフガニスタンに対する「武力行使」を展開している。アメリカ政府は、この武力行使を「他のテロ支援国家」にも拡大しようとし、核兵器の使用もほのめかしている。国際問題を武力によって解決しようとする潮流が勢いを増している。国連憲章が予定する「平和解決の原則」が危殆に瀕している。
 国内では、「テロ対策特別措置法」の制定、自衛隊法の改正などが行われ、「PKO法」の改正や「有事立法」、「憲法改正国民投票法」などの準備が進められている。「集団的自衛権」の行使を容認するための憲法改正も現実性を帯びてきている。
非軍事平和主義を基調とする日本国憲法の空洞化が進行している。

2 核兵器をめぐって
  核保有国は、2000年核不拡散条約(NPT)再検討会議で「核兵器廃絶を達成する明確な約束」をした。しかしながら、未だアメリカ1万500発、ロシア2万発など世界には31000発からの核兵器が存在している。包括的核実験禁止条約(CTBT)も実効性を持たず、アメリカ政府は「ミサイル防衛構想」や「使用可能な核兵器」の開発を進めている。
  日本政府は、2001年度国連総会に「核兵器完全廃絶への道程」決議を提出し、賛成多数で可決されたが、「明確な約束」を後退させたことや核軍縮を全面・完全軍縮の文脈に置いたことなどが批判されている。
  日本政府は、国際司法裁判所の「核兵器の威嚇・使用は一般的に国際法に違反する。」との勧告的意見を支持していない。また、アメリカの「ミサイル防衛構想」に協力する姿勢を示している。「核抑止論」に依拠して、アメリカの「核の傘」からの離脱は選択されていない。


■第2 主要な活動報告■

1 コスタリカ訪問
  2000年9月24日から27日の4日間、当協会の代表団が、コスタリカを訪問した。フィゲーレス元大統領夫人のカレンさんやバルガス国際反核法律家協会副会長との会談など、「軍隊のない国」の実情を知る企画であった。(報告書が作成されている。)

2 ウィラマントリー氏の来日 (7月31日から8月10日)
  前国際司法裁判所判事のウィラマントリー氏が来日し、日弁連、早稲田大学、広島、長崎などで、精力的に講演活動をした。当協会は、全面的にサポートした。核兵器の絶対的違法説に立つ同氏の講演は各地で大きな反響を呼んだ。

3 早稲田シンポ
  8月1日・2日、当協会主催で、国際シンポが開催された。海外代表23名を含め、@「国際司法裁判所勧告的意見の含意」、A「核廃絶のための国内裁判所の役割」、B「核廃絶のための法的メカニズム」などのテーマで、先駆的な意見交換が行われた。

4 IALANA理事会とIALANA国際シンポ
  8月4日、広島で、IALANAの理事会が開催され、「広島宣言」が採択された。
  この確定稿については、IALANA本部と調整中である。
同日、「東アジアにおける平和の創造――非核地帯、地域安全保障、法律家と市民の役割」をテーマとしてIALANA国際シンポが開催された。(機関誌「反核法協」42号で特集。)

5 当協会と日本国際法律家協会の両会長を励ます集い
  4月21日、文京シビックホールで、当協会榊原会長と日本国際法律家協会の江藤会長を励ます集いが開催され、各界から多彩なメンバーが参加されました。(機関誌「反核法協」40号)

6 公開セミナー 「核兵器廃絶2005年に向けて」
  7月7日、カンダパンセで開催された、NPT13項目措置を検証するセミナーを後援し、会員が参加した。

7 コスタリカの集い
  8月2日には東京で、3日には大阪で「軍隊のない国」コスタリカの集いが開催された。コスタリカは、法律家とりわけ若手グループに静かなブームとなっている。来年は、3組の訪問団が予定されている。

8 「核フォーラム」の開催
  定期的に、「核フォーラム」が開催され、有意義な研究成果を上げている。

9 「核兵器廃絶市民連絡会」の取り組み
  いくつかのNGOと協力して、外務省と核政策について意見交換をしている。定期的な会合になっているし、外務省も無視できない活動になっている。

10 HAP・JAPANでの活動
99年5月のハーグ市民会議の成果を継続するために、HAP・JAPANの会議が月一度のペースで開催されている。
  

■第3 基本方針■

1 当協会の目的は、核兵器の廃絶と被爆者の援護である。

  核兵器は人道と人権の究極の否定であり法の否定である。
国際法秩序を実施し、発展・強化して、核兵器の威嚇と使用を阻止しなければならない。
法律家は特別の責任があることを自覚しなければならない。
国内外の法律家及び志を同じくする全ての人々と連帯して目的を達成しなければならない。

2 国際法秩序の実施と発展のために
  国連憲章を基本とする現在の国際法秩序は、「武力行使」を一般的に違法とし、国際紛争の「平和的解決」を原則としている。テロリストを処罰し、テロの再発を防止することは国際社会の共通の課題であることは当然である。しかしながら、そのために「武力行使」を認めることは、「法による秩序維持」を否定することになる。問答無用の殺戮と破壊(戦争)と人道と人権は両立しない。人道と人権の実現が法の役割であるとすれば、法律家たる私たちは戦争を否定しなければならない。武力行使を否定した上で、国際社会の秩序維持の方法を確立しなければならない。

3 核兵器の廃絶のための国際法の確立

@ NPT(核不拡散条約)の再検討会議で確認された核保有国の「核廃絶のための明確な約束」を実現する。
A CTBT(包括的核実験禁止条約)の早期発効を求める。 
B 核兵器条約の現実化を追求する。 

4 北東アジア非核地帯の実現
  北東アジアの非核地帯を構想する運動が広がっている。幅広い方たちの共同ができつつある。日韓の法律家の交流、広島でのIALANAシンポ、第3回COLAP(アジア太平洋法律家会議)での成果などを踏まえて、運動の質的発展を展望する。

5 日本政府の核政策の転換
  日本政府は、「核抑止論」と「核の傘」必要論を採っている。この政策の変更を理論と運動の両面から迫っていく。定期化している外務省との意見交換を有意義なものにする。

6 反核NGOとの協力強化・超党派の議員との意見交換
  これらの課題を実現していく上で、国内外のNGOとの協力は、今まで以上に必要となる。
「核廃絶市民連絡会」やHAP・JAPANでの活動継続と強化を期待したい。
また、核兵器廃絶の課題は、超党派の国会議員との協力が可能である。
共通の課題での他の法律家団体との協力はもちろんである。

7 被団協の核兵器による犯罪を裁く「国際法廷」運動に協力する。

  被団協は、アメリカの原爆投下の国際法違反を国際法廷で裁く企画を提案している。その構想をどのような形で実現するのか、当協会としても全面的な協力を考えたい。


■第4 組織体制■

1 理事会と事務局体制の強化
  理事会は月一回のペースで開催されている。しかし、集まるメンバーは固定化の傾向があり、多くの理事の参加が求められている。全国各地で、有意義な活動をしている会員も大勢いる。東京だけではなく、各地での理事会の開催を検討したい。
  事務局体制は機能していない。その強化は不可欠である。

2 会員の拡大
  核兵器の廃絶と被爆者の援護は法律家の共通の課題たりうる。とりわけ、基本的人権の擁護と社会正義の実現を職責とする弁護士にとっては、原理的な課題といえよう。私たちの働きかけが求められている。   


■第5 財政■
  早稲田シンポとIALANA理事会関係で特別の予算を組んだが、一般会計からの出費が余儀なくされた為、財政は逼迫している。特別の関心を寄せてください。