○●○●○2001.12.9 日本反核法律家協会 2001年総会における決議文




●総会決議●

1 9月11日に発生した「同時多発テロ」事件、10月8日に開始されたアメリカとイギリスによるアフガニスタンに対する武力行使、自衛隊の海外派遣など、わが国と国際社会は、その平和と安全について新たな大きな課題への対処を求められている。私たちは、核戦争に反対し核兵器の廃絶を求める法律家として、テロ事件による犠牲者に心からの哀悼の意を表明し、犯罪者の処罰とテロ事件の再発防止に誠実に努力したいと思う。しかしながら、私たちは、テロ対処を理由とするアメリカなどによる武力行使と核兵器の使用及び威嚇に反対する。

2 今回のアメリカなどの武力行使は、テロリストとそれを支援するものへの攻撃であるとされ、「報復」、「自衛」、「犯人の引渡し」などがその根拠とされている。
ところで、国連憲章を中核とする現代国際法の下で、武力行使は一般的に違法とされている。これは、「言語を絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」(国連憲章前文)、「平和を破壊する事態の解決を平和的手段と正義及び国際法の原則で実現する」(同第1条参照)とする「平和解決の原則」から導かれるものであり、この原則の遵守は国連加盟国の義務である。国際法は、「報復」や「復仇」のための武力行使は違法とし、例外的に国連による武力制裁と加盟国の自衛権発動の場合のみその違法性を阻却している。そして、自衛権の発動が認められるのは、加盟国が武力攻撃を受けているか受けるおそれがある場合で、安全保障理事会が必要な処置をとるまでの間であり、しかも攻撃との均衡性が必要とされている。今回の武力行使を「自衛権」の行使とすることは無理である。また、国連はアメリカなどに武力行使を授権していないこと及び「犯人の引渡し」が事柄の性質上武力行使の理由にならないことは明らかである。私たちは、アメリカなどの武力行使は、国際法に違反するものとして反対し、その停止を求めるものである。

3 また、アメリカは、今回の作戦で核兵器の使用を排除していないだけでなく、既に、戦術核兵器の配備をしているとの報道もされている(当然のことながらアメリカ当局は否定も肯定もしていない。)。もともと、アメリカは核兵器の先制使用を否定していないが、今回も核兵器の使用をほのめかしているのである。
ところで、国際司法裁判所は、1996年7月、国連総会の決議に応答した「核兵器の威嚇又は使用の合法性」についての勧告的意見で、「核兵器の威嚇又は使用は、国際法とりわけ人道法の原則に反する。しかしながら、国家の存亡が危険にさらされている自衛の極端な状況において、核兵器の威嚇と使用が合法であるか、違法であるかについて確定的な結論を出すことはできない。」としているところである。
今回のテロ事件が、アメリカの国家存亡の危機だとは誰も考えていない。
アメリカの核の威嚇や使用は国際司法裁判所の勧告的意見に反することは明らかであり、私たちは、容認することはできない。
4 更に、看過することができないのは、アフガニスタンに対する空爆によって多くの死傷者や難民が発生していることである。苛酷な自然環境に加え、人為的な生存の危機が発生している。法が必要とされる理由は、人類社会に人道と人権を実現するためである。 私たちは、国際社会からテロを根絶するための努力を惜しむものではない。しかしながら、人道と国際法に反する武力の行使を容認することはできない。私たちは、「力の支配」ではなく「法の支配」による人類社会の平和と安全を希求し、国際法と日本国憲法が到達している「平和解決の原則」を普遍的なものにする努力の継続を決意する。

2001年12月9日
核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会2001年度総会