●●●アメリカのイラク戦争開始とそれに対する日本政府の支持表明に抗議する●●●
〜2003年3月20日 核兵器廃絶をめざす日本法律家協会(日本反核法律家協会)理事会〜

 本日、アメリカ合衆国によるイラクに対する攻撃が始まった。
この戦争が、国連憲章に違反する事は既に明白である。国際世論は数千万人の規模で波状的に反対しつづけており、フランス・ドイツを初めとする各国政府の多くがこの世界の圧倒的世論に押され、戦争反対の立場を貫いたのは当然である。
米英西3国は、武力行使を容認する新決議案を安保理に提出しても、支持が少数にとどまる事を見越して、安保理に提出する事さえ出来なかった。
つまり、あらゆる意味で、今回の米英による戦争は法的にも道義的にも全く正当化し得ないものである。
また、アメリカの核兵器による威嚇はすでに行なわれており、さらに、核兵器使用の危険性もある。
戦争が始まり、58年前の広島・長崎と同じく、無辜の民が多数死ぬこととなる。核兵器廃絶と被爆者援護を目標として活動する当協会としては、このイラク戦争に強く抗議するものである。

さて、このような正当性を全く欠く戦争開始に対して、日本政府は全面的に支持する態度を明確にしている。戦争による唯一の被爆国であり、かつ戦争放棄の憲法を持つ国の政府の態度として、許しがたいものである。
さらに、米国支持の理由として、日米「同盟」「北朝鮮問題」を挙げていることは、朝鮮半島での武力行使という新たな危険な一歩に踏み出したと言うべきである。
アメリカは、北朝鮮をイラクと同じ「悪の枢軸」と決め付け、北朝鮮側の不可侵条約締結の要求に全く応じようとしない。
片や北朝鮮はNPT条約脱退宣言、核物質抽出宣言という、核兵器生産に踏み出すかのような態度を取って、アメリカの譲歩を引き出そうとしている。
双方の外交態度は、朝鮮半島さらにはアジア全域の緊張を極度に高めるものであり、非常に危険である。
以上の情勢の中で、「北朝鮮問題があるから、アメリカのイラク攻撃を全面的に支持する」という日本政府の態度は、逆に朝鮮問題の緊張を高め、火に油を注ぐものでしかない。
日本政府が取るべき外交政策は、北朝鮮が核開発全般を放棄すると約束した昨年の「日朝平壌宣言」を生かし、これを発展させ、朝鮮半島さらには北東アジア非核地帯を実現していく事である。
逆に全く道理のないイラク攻撃について、アメリカを無条件に支持してしまうことは、これからの朝鮮半島を巡る外交にとって、害をなしこそすれ、益することは何一つない。

 当協会は、戦争の違法化を進めてきた過去1世紀以上の世界の歴史に鑑み、そして、朝鮮半島を巡る危険な状況に照らし、米国政府のイラク戦争開始と、それに対する日本政府の支持態度に強く抗議するものである。

 2003年3月20日 核兵器廃絶をめざす日本法律家協会