1.ICNND(核不拡散と核軍縮に関する国際委員会)への要望書(資料7)
川口順子元外相を共同議長の一人とする核不拡散・核軍縮国際員会の活動が始まった。当協会はこの委員会に要望書を提出した。要望の趣旨は、@被爆の実相と被爆者の証言を判断の基礎に置くこと、A核兵器の非人道性、犯罪性と違法性を確認すること、B核兵器廃絶の早期実現に向けた具体的「行動計画」を明確に提起すること、C「核兵器廃絶条約」の実現を、期間を設定して提起すること、D各国政府に「核兵器廃絶条約」の制定に向けての「誠実な交渉」を始めるよう勧告することなどである。
2.オバマ大統領のプラハ演説に対する見解の発表(資料8)
4月5日のオバマ大統領のプラハでの「核兵器のない世界」を目指すとして演説に対する協会理事会としての見解を公表した。その趣旨は、歓迎を表明しつつ、「核抑止論」の残滓があること、「核兵器廃絶条約」への言及がないこと、「核の平和利用」の無留保などの問題点を指摘した。(5月11日理事会)
3.IADL(国際民主法律家協会)への参加
6月6日から9日の間、ベトナム・ハノイで開催された、国際民主法律家協会の第17回大会に、他の法律家団体と協力して、当協会のメンバも参加した。何本かの報告書を提出し、分科会での発言を行った。IADLハノイ大会には、約400人の各国の法律家が参加した。特に、北朝鮮の法律家も参加したので、核廃絶も一つの重要なテーマになった。
(1)北朝鮮の法律家の分科会での発言
・アジアの平和にとっての最大の障害がアメリカの軍隊、基地であり、日本の軍事大国化であること。
・北朝鮮が平和の障害だというキャンペーンがはられ、アメリカと日本は人民をだまそうとしていること。
・南北朝鮮は、50年以上も戦争の脅威にさらされているので、平和を希求している。
・人工衛星を発射する権利はどの国にもある。北朝鮮だけが非難されるのはおかしい。アメリカの脅威のもとで、自己防衛の力を高めなければ生き残れないこと。(特にロケット発射について北朝鮮を非難した日本の法律家の発言に対しての発言)
・南北の平和条約をつくること、韓国からの米軍基地の撤退。
(2)IADL大会の決議として、「平和と核軍縮に関する決議」が採択された。
その要点は、以下のとおり。
(1)核抑止論の放棄と、核実験の停止、核兵器国による核の脅威を停止する法的枠組みを作ること。
(2)コスタリカおよびマレーシアが国連総会に提案した「核兵器条約」の制定。
(3)あらゆる核保有国による核兵器の削減および軍縮に関する会議が、できるだけ早期招集
(4)あらゆる人びとのもっとも幅広い強力な運動を。
(5)貯蔵されている大量破壊兵器の破壊の要求。
(6)軍事的な利用に浪費されている富を人間の持続的な発展のニーズのために再配分すること。
(7)核不拡散条約の二重性と不公正さは除去されなければならず、核兵器保有国の義務と責任は、2010年のNPT再検討会議において明確に定められ、核軍縮と全面的包括的軍縮のためのさらなる努力の必要。
4.IALANA(国際反核法律家協会)総会への参加
6月25日・26日、ベルリンで開催されたIALANA総会に、浦田賢治副会長・岡田啓資理事・井上八香アシスタントの三名が参加した。報告文書@)オバマ大統領の「核兵器廃絶」演説を歴史の転換点に(資料8)、A)原爆症認定訴訟とその中で明らかになった事実、B)北朝鮮の核武装強化を止めるために、C)核不拡散と核軍縮に関する国際委員会への要望書(資料7)を提出。総会では、「核兵器のない世界の将来像」に賛意を表明しつつ、「将来像を現実にするには、より一層の措置が必要である。核兵器のない世界は、全体的かつ恒久的な核兵器撤廃を達成する条約の締結を必要としている」、「2010年のNPT再検討会議がこのような条約の締結に向けた交渉の開始を要求しない場合には、国際司法裁判所に全面的核軍縮に義務を誠実に遵守する時間的枠組みの設定についての勧告的意見を求める運動を起こす」との決議を採択している。
5.原爆症裁判についての確認書(資料9の1乃至3)
8月6日、日本被爆者団体協議会(被団協)と麻生首相(当時)・自民党総裁との間で、協定書が調印された。その内容は、(1)一審で認定された原告について、国は控訴しない。既にしている控訴は取り下げる。(2)敗訴原告については、議員立法で救済する。(3)被団協・原告団・弁護団と厚生労働大臣との間に定期協議の期間を設ける、などというものである。原爆症裁判については、一定の区切りがついたが、今後の課題も多い。とりわけ、すべての被爆者に対する国家補償の観点からの支援が求められている。
6.池田会長のテレビ出演
池田会長が、関西テレビの番組に出演し、「核兵器をなくすことはできるか」について発言した。その番組を見た視聴者から、当協会に加入したいとか、資料を送ってほしいとの要望が寄せられている。それに対応した。
7.理事会の開催
(1)2008年12月18日
(2)2009年1月29日
(3)2009年2月26日
(4)2009年4月2日
(5)2009年5月11日
(6)2009年6月16日
(7)2009年7月17日
(8)2009年9月3日
(9)2009年10月5日
本年度は、上記の通り9回の理事会が開催された。参加人数は、多い時には10名ほどになっている。また、理事会報告が作成され、配布されるようになった。熱のこもった議論と決定が行えるようになった。
8.核フォーラム
1997年春に発足した核兵器問題フォーラム(略称:核フォーラム)は、核兵器に関する諸問題について、自由な立場から議論する場として、8月を除き、ほぼ毎月開催されてきている。2008年度中は、日本の核軍縮・不拡散研究における最前線の議論を知るという観点から、浅田正彦・戸崎洋史編『核軍縮不拡散の法と政治 : 黒澤満先生退職記念』(信山社、2008年)を順次読み進めた。2009年度からは、急速に変化する核軍縮の動きをフォローすべく、以下の話題がとりあげられている。モデル核兵器条約、米ロのSTART後継条約交渉、再び国際司法裁判所の勧告的意見を求めるための法的論拠をまとめた、核政策法律家委員会などによる「法的覚書」、ドイツIALANAが刊行した核軍縮の法的義務に関する書籍などである。また、北朝鮮問題を考えるとの観点から、朝鮮大学校非常勤講師の高演義氏を招いて話を伺った。
毎回、十名前後の参加者を得て、活発な議論が展開されているが、更なる話題提供者および参加者の増加が望まれる。
9.ホームページへの記事掲載
10.その他
(1)「北朝鮮」の核実験に対する見解の表明
(2)ワシントンでのICNND会合への被爆者の派遣に協力
(3)「平和憲法を生かして、地球の軍縮を進めよう」−憲法9条&12条inコスタリカ−へのメッセージ送付
(4)原水禁世界大会への参加 |