核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会
 
 
 
 
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アメリカ・トランプ政権の「核態勢の見直し」(Nuclear Posture Review)に強く抗議し、ただちに撤回するよう求めます!
2018年2月8日
京都原水爆被災者懇談会世話人代表 花垣ルミ
京都「被爆2世・3世の会」世話人代表 平 信行
 アメリカ・トランプ政権は2月2日、「核態勢の見直し」(NPR)を公表しました。その内容は、核兵器廃絶を求める世界の大多数の人々の願いに真っ向から対決し、核兵器の強化で世界への影響力を一層強めようとするものです。私たちは人類を破滅の道へと導くこの危険な蛮行を断じて許すことはできません。

 今回の「核態勢の見直し」の特徴は第一に、核弾頭の小型化と新型海洋発射巡航ミサイルの開発をめざしています。明確な核兵器強化策であり、再び世界を核軍拡競争の悪夢に陥れるものです。
 第二に、核戦略の3本柱(大陸間弾道弾、潜水艦発射ミサイル、戦略爆撃機)すべてを維持し、さらなる近代化推進を強く示唆しています。
 第三に、アメリカと同盟国への重大な戦略的非核攻撃のあった場合も ― すなわち通常兵器による攻撃であった場合も ― 核の使用検討を妨げないと公言しました。核兵器の使用制限を緩和し、核戦争に近づく危険性を厭わない姿勢です。
 第四に、前のNPRでは核実験は行わないとしていましたが、今回は必要が生じた場合は再開もあり得るとしました。核実験による影響、被害も考慮の外に置く方針転換です。
 第五に、国連の核兵器禁止条約への敵視と警戒感を露わにし、核不拡散条約(NPT)の定める軍縮義務に対してさえも逆行・後退の態度を示しました。「核抑止論」にしがみつき、世界を「力」と威嚇で圧しようとする態度です。
 総じて、核使用の制限を大胆に引き下げ、多様な核兵器開発で核攻撃の選択肢を大きく拡げ、より「使いやすい」核攻撃態勢を構築しようとするものです。

 昨年7月7日、122ヶ国という圧倒的多数の国々が国連の核兵器禁止条約を採択しました。200を超える国際NGOも参加するなど世界の市民運動も大きな貢献を果たしました。その功績を称え、一日も早い核兵器禁止条約の執行による核兵器完全廃絶を期待して、ICANにノーベル平和賞が授与されました。これが世界の世論です。これが世界の大多数の人々の進もうとしている大道です。
 トランプ政権の「核態勢の見直し」はこの流れと願いにまったく逆行したあからさまな挑戦です。
 私たちはアメリカ政府に強く抗議し、2月2日公表の「核態勢の見直し」をただちに撤回するよう求めます。
 私たちは、アメリカも含めたすべての核保有国と「核の傘」に依存する国々が、核兵器禁止条約を真摯に受け止め、条約に参加していくことを強く求めます。
 緊張関係にある北東アジア情勢も、圧倒的な核保有国であるアメリカが核の放棄、核廃絶への態度を明らかにした時、初めて根本的解決への道が切り開かれるのです。

 トランプ政権の「核態勢の見直し」公表に際して、日本政府はこれを高く評価するとの見解を明らかにしました。人類史上初めて核兵器の実戦使用を被った国として、これまで世界の先頭に立って核廃絶を訴えると言ってきた日本政府は、その姿勢をも投げ捨てたといえる驚くべき見解です。
 このような愚かな態度をとる日本政府に対して、私たち被爆者とそれに連なる者は悲しみをもって強く抗議をします。
 そして日本政府こそ、唯一の核兵器使用国であるアメリカに対して「核態勢の見直し」を撤回するように正していく、そうした真っ当な政府であることを強く求めます。
以上