核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会
 
 
 
 
  意見 >>> 日本反核法律家協会(JALANA)に関する資料

オバマ大統領への要望書

日本反核法律家協会
会長 弁護士 佐々木猛也

日本反核法律家協会は、広島を訪問するオバマ大統領に対して、次のとおり要望します。

要望の趣旨
1.広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪問してください。
2.被爆者と会談してください。
3.「核兵器のない世界」の実現を再度誓約してください。
4.「核兵器のない世界」を実現するための法的枠組みの交渉を開始してください。

要望の理由
1.日本反核法律家協会は、核兵器の廃絶、原爆被爆者の支援を目的とする日本の法律家及び市民で構成するNGOです。また、国際反核法律家協会のメンバーでもあります。

2.国際反核法律家協会は、今年4月30日、大統領閣下に対して、「各国はいかなる場合にも核兵器を使用しまたは使用の威嚇を行わないことを約束する」宣言をする最初の国家元首となっていただきたい」、広島訪問を「核兵器のない新しい時代へとしていただきたい」という公開書簡を差し上げております。

3.日本反核法律家協会は、2009年4月、プラハで「核保有国として、核兵器を使用したことがある唯一つの核兵器国として、米国は行動する道義的な責任を持っている」、「私は、明白に、信念をもって、米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求することを約束する」と演説している大統領閣下が広島を訪問することを歓迎するものであります。そして、この訪問が「核兵器のない世界」を実現する上で、重要な一歩となることを期待しています。

4.ところで、現在、国際社会では、核兵器使用の人道上の破滅的結末を避けるためには、核兵器を廃絶しなければならないとの機運が高まっています。そして、国連総会は「核兵器のない世界」の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置について実質的な議論をするための公開作業部会(OEWG)を設置しています。しかしながら、米国はこの会議に参加していません。結局、米国は核兵器廃絶のための議論をボイコットしているのです。不参加の理由は、核兵器は自国や同盟国の安全保障のために不可欠であるとの政策(核抑止論・拡大核抑止論)を採用しているからです。

5.「核兵器のない世界」を求めるといいながら、核兵器を国家安全保障の切り札としている限り、核兵器が廃絶される日は永遠に来ないでしょう。そして「核兵器のない世界」の実現の約束は単なるリップサービスに終わるでしょう。現に、米国は4760発の核弾頭を保有し、核戦力の近代化のために10年間で約38兆円を支出することを決めています。プラハでの演説とこの米国の行動は明らかに矛盾しています。この矛盾を解消し、「核兵器のない世界」を本当に実現するためには、核兵器が人類に何をもたらしたのかを再確認することが必要であると思われます。

6.そこで、当協会は、大統領閣下の広島訪問に際して、71年前の8月6日、原爆投下が人間に何をもたらしたのかを直視することと、今なお被爆の影響に苦しむ被爆者の証言を聞く機会を持つことを要望するものです。具体的には、原爆資料館の訪問と被爆者との面会です。原爆被害の実相を知ることは、核兵器の使用が、単に道義的・人道的な問題にとどまらす、無差別攻撃の禁止や残虐兵器の使用などを禁止した戦時国際法(国際人道法)に違反することを認識する機会となるでしょう。

7.1963年、東京地方裁判所は、原爆投下は当時の国際法であるハーグ陸戦法規などに照らして違法であるとの判決を出しています。戦争が正当かつ合法であったとしても、禁止される戦闘手段・方法があることは、国際人道法の大原則です。法律家でもある閣下は、そのことは既に十分に承知しておられることでしょう。「核兵器のない世界」は「戦争のない世界」に先行して実現しなければならないのです。当協会は閣下に対して、その決意を広島で示していただくことを要望します。

8.「核兵器のない世界」」の実現のためには、何らかの法的枠組みが必要であることは明らかです。そして、核不拡散にとどまらず、核軍縮のための誠実な交渉の開始とその完結は、NPT6条や1996年の国際司法裁判所の勧告的意見が指し示すところです。当協会は、閣下に対して「核兵器のない世界」の法的枠組みを構築するための交渉を開始するよう要望します。

2016年5月23日