核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会
 
 
 
 
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南北・米朝首脳会談の開催を歓迎する

2018年4月16日
日本反核法律家協会
会長 佐々木 猛也

 韓国と北朝鮮の首脳会談(南北首脳会談)が来る4月27日に、アメリカと北朝鮮の首脳会談(米朝首脳会談)が5月末までに開催されることが決まった。
昨今、北朝鮮の核実験・ミサイル発射、アメリカ・トランプ政権による新核戦略指針「核態勢の見直し」(NPR)の公表等、朝鮮半島での核兵器の使用も含む武力衝突の恐れが懸念されてきた。今回の南北・米朝首脳会談開催は、朝鮮半島での武力衝突を回避し、対話と交渉による平和的解決を図り、「朝鮮半島の非核化」の実現ひいては「核兵器のない世界」を実現するための基盤を創設する第一歩である。
私たちは、南北・米朝首脳会談の開催を歓迎し、その成功に期待する。

 北朝鮮は、会談に先立ち、核・ミサイル実験の停止を表明し、首脳会談において「朝鮮半島の非核化」を協議する意向を表明している。仮に、朝鮮半島で武力衝突が起きた場合、日本国内にある米軍基地や原子力発電所等への攻撃も想定されるところである。日本においても、再び非人道的な被害が生じることを考えると、朝鮮半島での武力衝突は絶対に回避されなければならない。
 朝鮮半島での武力衝突を回避するために最も有効な手段は、関係国の首脳同士が直接の対話と交渉をして平和的解決を図ることであって、核抑止力に依存することではない。
 今回の南北・米朝首脳会談開催は、関係国の首脳同士の直接の対話と交渉による懸案事項の平和的解決を図るものである。

 また、北東アジア地域における平和体制を構築する上で、「朝鮮半島の非核化」は、不可欠の前提である。
 北東アジア地域においては、1992年2月19日の南北間の「朝鮮半島の非核化」に関する共同宣言、1994年10月21日の米朝間の「米朝枠組み合意」、2002年9月17日の日朝間の「日朝平壌宣言」、2005年9月19日の「六カ国協議共同声明」等の一連の国際合意の積み重ねによって、「朝鮮半島の非核化」が目指されてきた。とりわけ、六カ国協議共同声明は、「六者会合の目標は平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認」するとともに、「北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力」、「朝鮮半島における恒久的な平和体制についての協議」、「北東アジア地域における安全保障面の協力」などを合意している。
 今回の南北・米朝首脳会談開催は、これまで積み重ねられてきた一連の国際合意に立ち返り、北朝鮮の核・ミサイル問題に関して武力衝突を回避して「朝鮮半島の非核化」を目指し、日本が所属する北東アジア地域における平和体制の構築を一体的に実現するための第一歩である。

 「朝鮮半島の非核化」、ひいては「核兵器のない世界」の実現は、被爆者をはじめとする市民社会の願いであり、国際的動向でもある。昨年7月7日、国連会議において、「核兵器禁止条約」(TPNW)が122カ国の賛成で採択されている。「核兵器禁止条約」(TPNW)は、核兵器の「使用」や「使用の威嚇」も含めて、核兵器の全面的違法化に踏み切り、核依存体制からの脱却と核兵器廃絶の実現を目指している。
 今回の南北・米朝首脳会談開催は、「核兵器禁止条約」(TPNW)において目指すこととされている核依存体制からの脱却と核廃絶を北東アジア地域において実現する第一歩である。

 世界に核兵器が存在する限り、真の世界平和と安全は図れない。核兵器は人類を破滅に導かねない非人道的な兵器であるだけでなく、武力紛争に適用される国際法の原則と規定に反するものである。北東アジア地域のみならず全世界が「核兵器のない世界」の実現に粘り強く取り組むべきである。

 私たちは、北東アジア地域にある唯一の戦争被爆国である日本の法律家として、今回の南北・米朝首脳会談での粘り強い対話と交渉による平和的解決によって、「朝鮮半島の非核化」ひいては「核兵器のない世界」が実現することを心から願うものである。