日本反核法律家協会事務局長
日本国際法律家協会理事
弁護士 大久保賢一
2016年3月19日、20日、福島大学で第3回「原発と人権」全国研究交流集会が開催されます。日本国際法律家協会と日本反核法律家協会は、次のような「核兵器と原発」に係る分科会を企画しています。
日時場所: 3月20日(日)9:30~14:30 福島大学M講義棟・22号教室
分科会の趣旨
日本は、広島、長崎、ビキニ、福島と被ばく体験をしているにもかかわらず、核と決別できずにいる。核兵器に依存し、原発を基幹エネルギーとしている。加えてインドにまで原発を輸出しようとしている。核拡散のおそれがある。
私たちは「核と人類は共存できない」と考え、これまでも分科会を開催してきた。今回も、日本が核と決別できない背景を検証し、核と決別するための方策を探求したい。マーシャル諸島政府が核兵器国を相手として、国際司法裁判所に提訴した問題にも焦点を当ててみたい。
共同通信の太田昌克さん、福島大学の黒崎輝さん、明治大学の山田寿則さん、明星大学の竹峰誠一郎さん、環境・平和研究会共同代表の鴫原敦子さんをスピーカー・パネリストに迎えての企画である。
分科会の問題意識
この分科会の問題意識は、第一に、度重なる被ばく体験があるにもかかわらず、なぜ、日本政府は核(核兵器と原発)と決別できないのか。国家安全保障を米国の核兵器に依存し(拡大核抑止)、原子力発電を基幹エネルギー(ベースロード電源)としているだけではなく、NPT非加盟国のインドとの間で「原子力協定」を締結し、原発輸出をもくろんでいる現状の確認です。このままでは、核兵器廃絶どころか、核拡散に手を貸すことになるという危機感を共有したいのです。第二に、このような核政策が形成されてきた歴史的背景事情を明らかにすることです。日本の核政策は①非核三原則の遵守、②核兵器の究極的廃絶、③米国の核の傘への依存、④核の平和利用の四本柱で構成されていますが、この政策の形成過程を明らかにし、現状とのつながりを確認したいのです。
そして、このような現状を踏まえたうえで、どうすれば、核と決別できるのか、その方策を検討してみたいのです。現代国際法の下で、核兵器は保有国と非保有国との区別があり、保有国はそれを手放そうとはしていません。また、核の「平和利用」はNPT加盟各国の「奪いえない権利」とされています。国際社会は、「核と人類は共存できない」との思想や価値選択のもとにあるわけではないのです。
私たちが、核兵器と原発の廃絶を望むのであれば、核兵器国に核を手放させ、原発に依存しようとしている国家と国民を説得しなければならないのです。
現在、核兵器国に核兵器を手放させるための努力の一つの試みとして、マーシャル諸島政府の核兵器国を相手とする国際司法裁判所への提訴があります。NPT6条の誠実な交渉と完結の努力を求める裁判です。まだ、入り口論争の段階ですが、小国が大国を相手とする法的手段の行使として括目に値します。支援の必要性を確認したいと考えています。
また、「日印原子力協定」の「大筋合意」が行われましたが、NPTに加盟していないインドへの原発輸出は、核拡散に手を貸すことになります。被爆国日本としてあってはならない事態といえるでしょう。この問題についての議論もしたいと考えています。