ここからは、「未来を見据える:被害者支援と環境回復の今後―核兵器禁止条約(TPNW)と現行国際法とりわけ人権法の活用」と題する第2部に入ります。
私は、司会を担当します、明治大学の山田寿則と申します。大学で国際法を教えるかたわら、IALANA及びJALANAで理事を務めています。
この第2セッションは、3つの部分からなります。イントロダクション、プレゼンテーション、そして質疑応答です。
では、本題に入りましょう。
第1セッションでは、日本と韓国の法律家から、それぞれの国における被爆者に救済と正義をもたらすための訴訟を中心に、お話していただきました。また、証言の映像を通してマーシャル諸島における米国の水爆実験被害の現状も共有することができました。
この第2セッションでは、核兵器使用・実験の影響をうけた被害者の救済や環境損害の回復のために、どのような法的取り組みが可能であるかを考えたいと思います。
ご存知のように、2021年に核兵器禁止条約が発効しました。正確な日時は未定ですが2022年の夏頃には第1回締約国会合が開催される予定です。この条約には、被害者援助と環境修復の条文、第6条と第7条が含まれています。この締約国会合では、この条文の実施についてもテーマとなることが予想されます。実際に、キリバスとカザフスタンは共同声明を出し、このテーマで作業文書を準備することを表明しています。専門家や市民社会でも、このテーマについての提言書づくりが進められています。
このセッションでは、この条約での被害者援助と環境修復の規定の概要を知るだけでなく、国際人権法と環境法の観点から、このテーマに関連する知見を得ることを目的とします。これを踏まえて、被害者援助と環境修復について、法的にどのような取り組みが可能であり、その課題は何かを皆で議論できればと考えています。
本日は、そのためにふさわしい3人のスピーカーを迎えることができました。
まずお話いただくのは、マンフレッド・モーア教授です。国際公法教授(科学アカデミー)であり、IALANA理事を務めておられます。モーア教授には、核兵器禁止条約の第6条及び第7条について話していただきます。
次は、ローザンヌ大学及びサフォーク大学ロースクール客員教授でIALANA共同会長のダニエル・リエティカー博士です。ダニエルには、国際人権法の観点から、核軍縮にどのようなアプローチが可能なのかついて話していただきます。
最後は、エミリー・ガイラードさんです。レンヌ政治学院GENFUT(将来世代と法的転換)修士課程理事で私法講師で、IALANA理事でもあります。彼女からは、環境法の視点からこのテーマに関する課題を話していただきます。
スピーカーの皆さん、ありがとうございました。これで、時間が尽きつつあります。残念ですが、これで第2セッションを終了したいと思います。このセッションでは、被害者援助と環境修復についての様々なアイデアが提起され、課題も指摘されました。この全てを総括することは私の能力を超えています。今後とも、これらの内容を、皆さんで共有しつつ、被害者援助と環境修復のよりより取り組みへと繋げていくことができればと思います。