今回のIALANAウェビナー”LOOKING BACK AND LOOKING AHEAD: Give Justice to Nuclear Victims!”は、いかがでしたでしょうか?
第1セッションでは、日本と韓国の法律家から、それぞれの国における被爆者に救済と正義をもたらすための訴訟を中心に、お話していただきました。また、証言の映像を通してマーシャル諸島における米国の水爆実験被害の現状も共有することができました。
過去を振り返ることがテーマでしたが、核被害は決して過去のことではないことがわかります。ヒロシマ・ナガサキの被爆者は、日本だけでなく韓国にもDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)にも生存しています。ビキニの核実験被害者は、日本でもなお救済を求めて日本政府を相手取って訴訟を提起しています。第1セッションで振り返ったのは、過去に提起された裁判を通じた取り組みであって、救済されるべき被害はなお現在しています。核実験の被害者は、世界中にいます。その被害者の範囲は未だ確定されていません。被曝2世、3世の問題がそれを如実に物語っています。従って、現状ではその救済も十分なものではないことを想起しなければならないでしょう。
こういった認識を前提に第2セッションでは、これからの取り組みを議論しました。2021年1月に発効した核兵器禁止条約では、被害者の救済と環境修復の義務が「共有された責任」として締約国に課せられています。この仕組みをこれからどのように運用するかが課題です。この仕組みをうまく運用すれば、TPNW締約国の被害者の救済だけでなく、世界中の被爆者の救済に繋げることができるかもしれません。
そこで注目したいことは、現行の人権法や環境法には、被害者の救済と環境の修復を促進する規範や手続きが存在していることです。これらは、TPNWとは別に、すでに機能しています。
来るべき核兵器禁止条約の締約国会合では、条約に基づくメカニズムをどのように構築するかが論点の一つとなります。すでにキリバスとカザフスタンはそのための作業文書を準備していると声明しています。TPNWのメカニズムと人権法や環境法におけるメカニズムとを有機的に結びつける工夫が必要でしょう。その工夫を通じて、TPNWの外にいる非締約国にも、TPNWに含まれる規範を実質的に及ぼすことができるかもしれません。日本や韓国、米国、中国など、多くの被爆者を抱える国は、当面TPNWに参加しないだろうことからすれば、これは大切な問題だと考えます。
世界中の被爆者がこの会議に注目しています。このウェビナーの議論が、本日ご参加の皆さんのこれからの取り組みに何らかの貢献ができたとすれば嬉しく思います。本日の内容について、さらなる質問や情報の共有をお望みの方は、遠慮なくIALANAかJALANAのウェブサイトにアクセスください。
最後に、このウェビナーの登壇者の皆さんと、視聴者の皆さんに謝意を表したいと思います。また、通訳の皆さんの長時間の作業にも感謝したいと思います。
みなさま、大変にありがとうございました。