1 「具体的な軍縮努力の実行をすべての核兵器国に求め、すべての国が核兵器のない世界を実現し維持するための必要な枠組みを確立すべく特別な努力を払うことの必要性を強調」(※1)する1968年の核兵器不拡散条約(NPT)の2010年再検討会議において、1995年以降のNPT再検討会議で採択された最終文書では、設立条約であるNPTの第6条と同様に、核兵器国と非核兵器国の義務とともに、核不拡散と核軍縮の責任が共有されることを明確にしている。
2 5カ国の核武装国がNPTの加盟国であり、そのうちの3カ国は条約の寄託国である。これら5カ国は、NPT第6条の核軍縮義務を含め条約の義務を受け入れている。NPT第6条の不履行は、NPTが無期限に延長された1995年以降の準備委員会での会合を含め、1970年以降のすべてのNPT再検討会議で喫緊の懸念事項として提起されている。
3 3カ国の核武装国がNPTに未署名または未加盟であり、その定義または規定に含まれていない。1カ国が非核兵器国としてNPTに署名、批准していたが、2003年に脱退を通告した。同国の脱退の合法性は引き続き議論されているものの、NPTの外にある核武装国である同国が何回かの核実験を実施し、また核兵器の保有と開発の続行を宣言したということを実際的な目的として重要視しなければならない。
4 核兵器が抑止と安全保障を提供するという信念は、核軍備の開発、製造、維持、配備、および追加の理由付けまたは正当化のために9カ国の核武装国のすべて、またはその一部の国により採用された多くの声明および文書に見出せる。このことは、一部の核保有国により核兵器に付与された仮定および価値を強化することで、核抑止の信念、仮定、および要求が多国間核軍縮の重要な進展を妨げることを意味している。
5 核兵器の使用または使用の威嚇の活動、または他の政治的・実際的取り決めを伴う拡大抑止のドクトリンは、北大西洋条約機構(NATO)の28の加盟国、および1カ国あるいはそれ以上の核武装国との二国間協定を通して他の一握りの国により共有されている。これら核依存国・核傘下国は、すべてNPTの加盟国である。5カ国の核武装国とともに、これらの国は、「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結末をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての国がいかなる時も国際人道法を含む適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認」(※2)した2010年NPT再検討会議の声明をコンセンサスで承認している。
6 「拡大抑止」を通して、核同盟は、「非核兵器国」としてNPTに参加する国の義務、役割、および安全保障上の利益を不明確にさせる。これらの取り決めは、核武装同盟に属する核兵器を受領、取得し、また戦時の際には管理するために、「非核兵器国」の軍事要員の訓練と共同行動を伴うものになる。これらは、非国家主体によるテロリズム、核の輸送や配備、および有事または不測の事態における偶発的核爆発のリスクの増加を含め、当該同盟の内側と外側で、国家の安全保障上、さらなる危険と脅威を創出する。
7 このような核同盟は、軍事協力の必要なあり方の一つ、また一部の同盟国にとっては、自国が核武装するコストと結果を回避する手段ともみなされてきた。また、1960年代の核プログラムの下で、このような国が自国での取得コストと結果を回避して、NPTに加盟しているという議論もなされてきた。一部の核兵器支持者のための上記のような正当化が顕著であるにもかかわらず、核に依存する政治および活動がNPTの条文、目的、精神、および意図、または不拡散レジームに反するものになっていると、NPT加盟国の多数派により考えられることが増えてきている。
8 2015年12月の国連総会において、138カ国の国連加盟国が「多国間核軍縮交渉を前進させる」総会決議70/33に賛成票を投じた一方で、安全保障上のドクトリンと政策に核抑止を取り入れる核武装国とその同盟国は、これとは対照的に12カ国が同決議に反対票を投じ、また34カ国が棄権票を投じた(※3)。
9 国連軍縮会議を含む国連を基礎とした多国間システムにおいて、核軍縮関連決議および努力の全体にわたって再現される傾向のあるこの意思決定のパターンは、1カ国またはそれ以上の核武装国が作業プログラムのような手続決定に関連したコンセンサス決議に参加し、これを拒否することで、1996年以降の交渉の主要な障害、特に核分裂物質条約の交渉および締結の進行を阻害するものとなっている。
10 これらの事実は、核兵器のない世界を実現し維持するために取り組む必要のある効果的な法的措置、条項、および規範についての国家の態度において、核抑止に関連する信念、理論、および活動が重要な要因であることを示している。
11 以下では、核抑止ドクトリンが核拡散の原因となり、核兵器の数的削減を制限し、また核軍縮およびNPTの完全な履行のための効果的な措置および重要な進展の障害となっていることを分析する。
12 したがって、多国間核軍縮交渉を前進させる国連公開作業部会(OEWG)が核抑止の信念、理論、および活動の役割に対処することが必要であり、また適切なことなのである。
核抑止の概念
13 抑止の形態は、太古からのすべての社会で行われてきたわけではないにせよ、それ自体は、多くの場合、個別的・集団的安全保障および防衛戦略の一部であり続けてきた。これらは、歴史を通して、異なる実践者のために異なる意味合い、期待、または意味付けが与えられてきた。
14 国連加盟国の多数派(193カ国のうち150カ国以上)は、自国の必要に応じた合理的な安全保障、防衛ドクトリンおよび政策に従って、あらゆる点で核兵器によらない範囲内での抑止を採用している。これら多数派の国は、自ら核兵器を保有せず、核武装同盟にも参加していない。
15 1950年代から、抑止のために核兵器の保有数と展開数とを同数にすることが一部の防衛または学会のエスタブリッシュメントにより提唱されてきた。軍事的な欠陥があるものの、増大する核軍備と施設のコスト、規模、および数量を正当化し、またはこれが容易に受け入れられるように、このような言説は、核依存国において公的な核戦略として主張され続けた。
16 概念としての核抑止は、異なる防衛エスタブリッシュメントや時代ごとに多様な種類のドクトリンに変容し続けてきた。核兵器の種類と数量の変化が異なる抑止態勢の採用に影響する傾向があるが、これは本末転倒なものである(※4)。
17 抑止は、当初、人々が違法行為を行わないよう厳罰の脅威を与えることに基づいていた。数百年前に軍事および安全保障上の戦略の一部として採用され、抑止対象の国またはその資産や同盟国に対して強制的または攻撃的な行為を控えるよう敵国を説得するために、暴力的な報復の様式で罰を与える脅威を発することに関連するようになった。また、いくつかの理論では、敵を説得し、拒否し、強要し、自制し、敗北させる点で抑止の効果を判断する。2011年に出された論評において、米国の引退した核政策立案者であるジョージ・P・シュルツ、ウイリアム・J・ペリー、ヘンリー・A・キッシンジャーとサム・ナンは、核抑止が冷戦期の理論と実行として発展する以前に、「抑止と戦時戦略が同一であった」(※5)ことを指摘している。
18 抑止が機能するために、国家の政策立案者は、踏み越えてはならない一線を理解する必要がある。この一線を踏み越えるような事態では、行動の脅威は、適切に理解され、十分に恐れられ、また信頼されなければならない。これは、潜在的侵略者が強要または攻撃を通して獲得することを予期している想定利益を上回る損害を与えることを警告し、その意図と能力があることを国家が伝達する能力がなければならないことを意味している。過去には、このことは、たとえ侵略者が「勝利」したとしても、コストが予定された利益よりも大きくなると敵が信じられる程度に威嚇できる軍事力を確立し、計画することが必要であると考えられていた。
19 抑止が核兵器と関連するようになったことで、兵器の種類、配備、作戦の指揮命令、同様に指導者の攻撃意図と能力を信頼に値する程度にまで操作する必要が生じた。
20 準備と効果の点で、核抑止は、子供を含む無辜の非戦闘員の大量殺害、および大規模な環境破壊に関与する脅威をともなう。威嚇行動が国家(またはその同盟国)にいかに著しい損害を与える脅威なのかが認識されたならば、抑止の信憑性は低下する。自殺行為のように見える核による威嚇は、抑止の目的として信頼に値しない。同様に、(国家または非国家主体による)自殺的な侵略が核兵器により抑止されるとは考えにくい。
21 核の支持者による宣伝活動のレトリックは、長きにわたって核兵器固有の特性の一つとして抑止を描いてきた。そうではなく、抑止は、本質的に、潜在的な軍事的・政治的敵対者との間のコミュニケーション関係と安全保障のプロセスなのであって、領土、資源、地域の覇権、またはイデオロギー的・宗教的・経済的な利益などについての敵対関係と紛争に適用されうるものである。軍事的脅威は、特定の状況において有益な抑止の構成要素となるが、その一方で、誤算を含め意図せぬ結果をもたらすことがある。
22 重要な資産または同盟国を脅かすリスクや結果について、潜在的な侵略者の内面に不確実性と恐怖を作り出すことは、不安を増加させるばかりか、むしろ抑制を引き起こすことが想定される。このような仮定に基づくことはほとんど無意味なように思える。それどころか、不確実性は、抑止の警告を認識できない対象国、政体、およびアクターに対し、特に軍事的な増強、訓練または行動を通して伝えられる場合には、不測の危機の危険性を増加させることになるであろうし、その代わりに、当該行動は、自らの利益と安全保障を脅かすものとして認識されることになる。核兵器の巨大な破壊力と短時間の飛行時間は、「それを用いるか失うか」という戦争の霧のパニックの中で不確実性が先制攻撃につながることを意味している。
23 核抑止ドクトリンはNATOの同盟国により採用されており、そうでなくても、すべての核武装国の大半は、都市の大量「対価値」破壊を引き起こすミサイル兵器のために脅威となるのであって、それにより、想定しうるあらゆる攻撃的な行動を敵国の指導者に控えさせようとしている。歴史および軍事心理学の知見では、一般に、軍事的・政治的指導者は、主要都市の包囲または殲滅という敵の威嚇によっては抑止されないことが示されてきた。決定的な抑止として都市への威嚇に頼ることは愚かなことである(※6)。24 抑止は、外交的、政治的、法的、または(必要であるならば)軍事的な異なる多様なツールを用いて、経済的・防衛的能力、その他の力(集団的な経済・政治制裁を調整する能力を含む)、および意図について、多様な側面を主張、保証し、またはサインを出すことを通して達成される。21世紀においては、軍事力は抑止の唯一の構成要素でないばかりか、もっとも重要な構成要素ですらない。諫止、拒否、強要(※7)、および罰は、政治的・経済的圧力、外交的孤立、および制裁の発動などにより、他の手段を通しても行うことができる。抑止のこのようなツールは、隣国または他の国連加盟国による集団行動を通して課されるのであれば、独自に行うよりも一層効果的となる。
25 軍事的脅威は、特定の状況において有益な抑止の構成要素となるが、その一方で、誤算を含め意図せぬ結果をもたらすことがある。ある国にとっての抑止は、他の国にとっては危険な脅威となる。歴史は、政府の指導者と軍がどのように自らと敵の行動を異なって理解するのかを示している。
26 抑止不可能な、また多くの抑止可能な脅威は、武力行使に頼るのではなく、潜在的紛争の原因を解消するための非暴力および非強制的な手段を模索するよう、すべての当事者に対して、説得し、奨励するように考案された外交的、政治的、および国際的な行動と手段等を通して、より非暴力的、非強制的、または非抑圧的な手段に中和し、または変換することが可能である。制止的というよりも説得的であるこのようなアプローチでは、我々にこれらの抑止的価値について判断を失わせることもないであろう。
27 適用可能な軍縮と兵器の禁止条約を含む国際法および国際条約のより強力な履行は、重大な人道に対する犯罪、戦争犯罪、または条約違反を含む、発覚や識別、民事請求、および処罰や刑罰を免れようとする潜在的な違反者(供給者や犯罪者)の内面の不確実性を含め、より強化された抑止を提供するであろう。
28 冷戦期のかなりの間、生物化学兵器のような安価でより入手が容易な大量破壊兵器(WMD)が「貧者の核」とみられるようになったことには留意すべきである。しかしながら、生物化学兵器拡散の推進者たちは、過去20年の間、1997年に発効した化学兵器禁止条約(CWC)がこれらの兵器に汚名を着せることを助け、その禁止を根付かせて監視することにより、その大部分が実質的に失われており、また、正式な多国間検証協定が合意されたのは2000年代に入ってからであるものの、CWCは、1972年の生物兵器禁止条約(BWC)のさらなる信頼性と監視をも刺激することになった。
29 BWCまたはCWCのような条約レジームは、国際刑事裁判所(ICC)の広範な役割、権限、および承認と結びつくことで、特に非戦闘員の集団に対する非人道兵器の拡散者、供給者、および使用者を抑止するために十分に活用できる。このような法的・外交的ツールは、普遍的に適用され、かつ非差別的な国際法の下で、いまだ核兵器の保有、配備、および使用が禁止されていないため、現在のところ、核拡散を抑止するために利用することができない。
30 抑止目的で脅威または能力についてのある種のサインを出すことは、戦争を防止するどころか、軍事増強またはエスカレートする行動や反応を引き起こすことにもつながる。歴史は、抑止が想定していた当初の脅威よりも悪い結果を引き起こす誤算によって導かれた誤解の例証に満ちている。
31 すべての軍事的・政治的戦略と同様に、抑止は常に想定通りに機能するわけではなく、また、少なくとも、しばしば失敗することが知られている。抑止ツールと威嚇の利用に頼ることで、その失敗は取り返しのつかないものとなり、紛争や戦争につながる可能性がある。
核抑止―不明確で不安定なドクトリンと矛盾
32 相互確証破壊(MAD)として知られる抑止ドクトリンは、冷戦期の米ソ関係が一定の安定性を見せたことにより信頼された。逆に、シュルツ、ペリー、キッシンジャーとナンによれば、米国の防衛指導者は、「地球が滅亡しないように、大統領により柔軟な選択肢を提供できるよう懸命に努力した。彼らは問題を決して解決しなかったが、ワシントンとモスクワの両者が予測不能かつ潜在的な壊滅的エスカレーションとなる鍵を握っていることを常に認識していた」(※8)という。
33 失敗の予測可能な原因の一つは、抑止関係の主人公が、過大評価や過小評価、または人為的・技術的ミスを通して、サインが出され、配備された意図と能力を誤解または誤算する際に生じる。シュルツ、ペリー、キッシンジャーとナンが2007年に指摘したように、抑止のために核兵器に依存することは、「危険が増大する一方で、効果は減少している」(※9)のである。彼らがさらなる問題点を指摘したその後の論稿では、核抑止は、「歴史上経験したことのない計算に依存した不安定かつ心理的な」ものとして描写されている。1992年から1994年まで米軍の戦略司令部司令官であったリー・バトラー将軍は、「解決不能な矛盾から生まれ、悪魔の種子が持ち込まれた・・・視覚障害者と聴覚障害者の対話」(※10)と核抑止を描写している。
34 核兵器の圧倒的な大量破壊リスクのために、核抑止のミスまたは誤算は、戦争を阻止する代わりに核使用を選択するという絶望的なリスクを取らせ、または先制行動を取るよう敵国を促す可能性が高い。そして、圧倒的な核破壊は、潜在的な侵略者にサインが出される優先的な核抑止の脅威であることからしても、核爆発につながるあらゆる失敗は、人道的・環境的惨劇を引き起こすことになる。
35 「核兵器」を「抑止」という用語に言い換えることをよく耳にするが、これは確かな証拠には基づかないものの、「抑止は抑止するのか」という無意味な質問で表現されるトートロジーにより示されるように、核兵器が抑止するのかどうか、という意味ある質問をさせないことに役立つ。この言語的スピン戦略の意図は、核兵器、抑止、保障、安全保障といった概念とともに、心理的・感情的な思考停止を促進することである。これは、抑止対象となる敵の内面に実際のまたは信頼できる関係があるか否かに生死がかかっているという現実世界について何ら伝えるものではない。猫を「犬」と呼んだところで犬になるわけではないのである。
36 冷戦後、「テーラード抑止」に関するNATO主導の議論は、抑止の役割、要求、およびツールについて広範でより詳細な分析を可能にしている。「テーラード抑止」とは、ある範囲内で特定の主体や状況のために情報伝達または能力を調整するものであるとされる。「テーラード抑止」を開発する努力は、その後、発生を回避したいエスカレーションを誘発することなく、特に有事または政治的関係が悪化する際に、いつ、どのように核兵器を用いるのかという問題に直面した。今や支持されてはいないものの、「テーラード抑止」についての議論は、このツールの射程が21世紀の潜在的な脅威と敵をどのように抑止できるのかという認識を正当化する必要があり、また、非核ツールおよびアプローチにより核抑止に割り当てられる安全保障上の目標の達成方法について、核依存国を憂慮させることになった。
37 一部の政府は、今や核の威嚇と攻撃を抑止するために自らの核兵器の正当性を制限しているが、拡大抑止、先制、および大量報復に関連する多くの活動は、先制核使用のドクトリンに関連したものである。これは、すべての核ドクトリンにおいてではないものの、その大部分で通常攻撃を抑止する手段として顕著であり続けている。抑止のこのバージョンは、核攻撃の最初の一撃を与えることにより通常兵器による武力紛争がエスカレートする脅威を与えることこそが通常兵器による紛争を抑止しうるという信念に基づいている。そのようなケースになる証拠など存在しない。逆に、ウォーゲームのシナリオは、核兵器の先制使用が、たとえ核戦争が地域的に限定されたものであったとしても、地球規模での核の応酬を引き起こす可能性が高いことを示している。
38 国連安全保障理事会およびNPTと関連した核武装国の一部による一方的な「消極的安全保証」の宣言は、核兵器の先制使用を排除しないものの、非核兵器国が核武装国と同盟していた場合の非核兵器国への核の威嚇および攻撃に関する警告を含め、核武装国が非核兵器国に核兵器を使用しないようにする一般的な約束の仕方にいくばくかの警告を提供している。
39 一部の政府は、「戦術」核兵器が核戦争にエスカレートすることなく通常兵器による紛争を抑止または終焉させることができるといまだに漠然と考えている。戦術(別名では「非戦略」)核兵器という分類は誤解を招くものである。今日では、この用語は、短射程かつ地域的な「戦域」戦争用で、大陸間弾道ミサイルよりも小型の核兵器に用いられる。冷戦終結後に、ほぼすべての戦場用核兵器は撤去され、破棄されている。
40 現実には、その規模や範囲に関係なく、あらゆる種類の核兵器は、戦略的なものとして使用されるであろう。一部の核武装国の核政策立案者は、核兵器を高度に不安定な戦域に開発、配備(再配備のケースを含む)し、または戦術的な戦闘用核兵器にすることを積極的に検討しており、これには巡航ミサイルのようなデュアルユースの運搬手段により発射可能な核弾頭が含まれる。
41 ヨーロッパにおける空中発射型自由落下核爆弾、同様に、戦術または非戦略核兵器と思われる兵器の潜在的な新開発は、より小型で運搬に適した核爆弾が抑止力としてより利用しやすくなっているという不安定な印象に寄与している。テロリストによる獲得または攻撃のために、より小型で運搬に適した「戦術」核兵器の脆弱性と結びついたこれらの理論的根拠、そして配備は、将来の核爆発のリスクを高めている。
核不拡散、軍備管理、および国際安全保障に関する核抑止の影響
42 NPTは第6条に核軍縮義務を祀っているものの、信頼できる核抑止には先制核攻撃を受けた後も報復する能力があると敵を説得できるだけの備蓄量と作戦が必要であるという理論と信念により、核軍縮に大きな制限が置かれている。
43 核抑止ドクトリンの普及が核拡散の原動力になっているという証拠が多く見られるようになっている。シュルツ、ペリー、キッシンジャーとナンは、「抑止の主要な要素として核兵器に依存し続けることは、核兵器の拡散を奨励し、少なくとも許容するものであって、核拡散を防止し、核物質を保護し、新たな脅威に効果的に対処するのに必要な欠くことのできない協力を必然的に侵食することになる」(※11)と指摘している。
44 核抑止の主張と活動は、たとえば大規模な軍事能力の構築により「均等化」を求める活動をすることで、サイバー空間と宇宙の資産を含め安全保障を弱体化させる。米国国防総省が実施したコンピューターによるウォーゲームの実験では、目標のセットと飛行ガイドのために多くの核兵器が依存している人工衛星を無力化する兵器の使用は、容赦なく地上での核兵器の使用と核戦争につながった。この結果は、宇宙にある「目と耳」が失われることから生じる不確実な事態によって誤算が引き起こされ、すぐにではないものの、壊滅的な結果をもたらすパニック状態の「それを用いるか失うか」の決定がなされ、抑止が崩壊したものであると分析されている。
45 BWCとCWCの下で禁止されて以降の生物化学兵器とは対照的に、核兵器の取得と配備を通して抑止について主張された「約束」は、NPTの内外において、現在の核武装国が拡散の決定を推進する重要な役割を果たし続けている。
46 NPTにおいて「核兵器国」が定義されているために、核抑止の関係国がNPT第6条の核軍縮義務の遵守に向けてより迅速な行動を行わないことの要因や言い訳になり続けている。冷戦終結以降、一部の核兵器国により核の数的削減が行われてきたものの、これらは、備蓄「近代化」プログラムを通して強化された核兵器の開発、弾頭研究に関する協力の制度化、または一部の核武装国間での設計技術と設備の共有を含む、それ以外のNPTを弱体化させる活動により相殺されてしまっている(※12)。
47 1957年のNATOのコミュニケに加えて、米国は、NPTに「非核兵器国」として加盟している多数の締約国と拡大抑止に関する二国間協定を締結している。そのすべてではないにせよ、これらには、核関連情報の交換、核兵器の配備・運搬のための核防衛計画および訓練、または核兵器システムの非核構成部品の移動(運搬を含む)などの条項がある程度含まれている。5カ国はNPTの下で非核兵器国として定義されているため、二国間協定は、有事の際に移動されうる核兵器の管理を考慮して、非核兵器国の領域内への核兵器の受入れ、または設置を含むものとなる(※13)。
48 長年にわたるNPTと国連の環境では、核兵器の能力を放棄し、または保有の断念を選択した政府は、その生産、配備、輸送、拡散、事故、使用の威嚇、誤算や、故意または偶然の使用を通して、核兵器が自国の安全保障に継続的な脅威をもたらすと主張している(※14)。
49 2010年以降の非核政府の増加は、核兵器の人道的結末、および自国の、または地域的・国際的な安全保障のための核兵器の存在および配備によりもたらされるリスクについての懸念が引き起こしたものである。一握りの国が自国の安全保障、抑止、および防衛ドクトリンのために核兵器への依存を取り入れた場合に、このような国は、潜在的な敵または脅威を抑止する代替的な外交的、法的、および政治的ツールを用いて自国の安全保障を構築することが困難になるとの主張が多くなされている(※15)。
核抑止が引き起こす安全保障および人道上の影響
50 抑止に内在する誤解または誤算の不確実性とリスクは、核に基づく抑止、大幅なコスト増、およびあらゆる「抑止の失敗」のリスクによって増大する。
51 抑止の概念と活動に核兵器を取り入れることは、不必要かつ潜在的な重大リスクと脅威を創出するものであり、それには、核弾頭および兵器システムの輸送と配備、誤解と誤算、または、敵対する国および非国家主体による行為に対する備蓄または輸送中の兵器の脆弱性が含まれる。
52 核抑止の失敗または誤算の予測可能な結末には、一つまたはそれ以上の核兵器の爆発から始まり、一つのミスまたは意図的な核爆発から核の「応酬」および核戦争にエスカレートし、広範な放射能汚染と気候および食糧生産の悲劇的な地球規模の影響をもたらす壊滅的な人道的結末が含まれる(※16)。
53 核抑止の支持者は、抑止が核兵器の固有の属性や特性であるかのように安全装置付きの保険的政策として核抑止を取り扱う傾向がある。もっとも核抑止は失敗することがある。そして、そのリスクは、通常兵器による防衛および抑止手段が失敗した場合に予測される結果よりもはるかに大きな受け入れがたい人道的リスクと結末をもたらすことになる。
54 抑止と核兵器を同等視し、抑止のために核兵器に依存することは、特定の核武装国における効果的な抑止に関わる目的、プロセス、およびメカニズムについての歪んだ考え方である。核抑止ドクトリンは、核および他の軍事力の規模、火力、構成などの事項において、安全保障、抑止、および防衛計画の質を低下させる傾向がある。各国の懸念事項により、このことは、核軍備の維持、近代化、または増加に費用を費やす同盟国または政治指導者が、説得し圧力をかけるために軍事産業に投資し、不当利得を得ることにつながる。
55 「必要」かつ「最小限」の抑止とは、核武装のエスタブリッシュメント、または軍事的・政治的指導者が支払いたいと望む戦力構成と軍備量が何かを意味するようになっている。抑止を取り巻く巧妙なトリックは、他の責任ある軍事・政治政策立案者が抑止の「必要条件」とは何かについて語ることを困難にしている。
56 20世紀には核兵器に何かしらの役割があったのかもしれないが、21世紀の安全保障上の課題に対処するために核兵器は実質的に無関係である。核兵器は、国家の優先事項、または、気候破壊から文化的、地域的、宗教的または資源的争いに基づいた紛争まで、重大な安全保障上の問題を解決するために必要な国際関係の再構築を妨げ、複雑にする。核兵器の製造、開発、および配備のための資金と資源との優先順位は、それとは対照的なすべての女性の生活に害をなすジェンダー的影響により、人道上および社会的影響を有している。
57 特別な利害集団の活動により、抑止のドクトリンは、いわゆる、一本柱、二本柱、または「三本柱」の核の戦力構成、即時警戒発射または他の種類の警戒態勢のように先制使用または続く第二撃に核を組み込むかどうか、また、たとえば、前進配備され、消失または検知不能になる「継続海上抑止」(CASD)パトロールのように、弾頭と輸送システムとが組み合わされるかどうか、連続的に武装されるかどうかなど、戦力の構造および核の作戦に関連した事項に過度に焦点を当て続けてきた。これらの活動は、核抑止の支持者が政策立案者に信じるよう望むものに比べ、現実のまたは効果的な抑止にほとんど関係しない。
58 近年の戦略地政学の事象や悪化する関係は、認識可能または認識不可能な敵を抑止するために、より多くのかつ異なる核能力が必要であると一部の国の軍事的・政治的指導者に提案させている。それゆえ、安全保障上の影響は、冷戦終結後からの最初の20年間に比べて鮮明になってきている。すなわち、核兵器の禁止または核軍備の再活性化、または、意図的または偶発的な核兵器使用のリスクが高まる軍事ドクトリンが顕著に増加している。
59 抑止が有益な防衛ツールであるという信念自体は争われていない。問題は、核兵器が必要、有益、実行可能かつ正当な抑止の構成要素であるのかどうか、または、核抑止が失敗することによる予測可能な人道的リスクと結末が、核兵器を含まない抑止が失敗するリスクと結末に比べて人類の生存可能性を低くするのかどうか、ということである。
60 核抑止は、抑止態勢が取り組んでいる認識された脅威に他の方法で対処することよりも、失敗のリスクと結末が人類、国家および国際的な安全保障上、より壊滅的になるのであれば、合理的な存続が不可能となる。
61 問題の中心は、核兵器が用いられるならば(一般に抑止のドクトリンと関連して開発される戦争計画の下で、軍事目標のみならず都市に対しても実際に核兵器が発射されたならば)、抑止は崩壊するのであり、それに伴う結果は、これまですべての人が得ていた利益を大きく上回るであろうということである。
62 このことは、好戦的な敵の行動に影響を与える威嚇・強制ツールに比べた場合、(ある者にとって)インセンティブと報酬が(非常に多くの場合)有益であるという意識の向上をもたらすことと関連して、国家または指導者が、強要または威嚇ではなく、むしろ教育的かつ再解釈的なアプローチを通した選択肢を伝えるのであれば、その抑制力(自己否定)は、長期的にはより効果的である。
核兵器によらない安全保障のための効果的な法的代替措置
63 本作業文書では、核抑止が安全装置付きの保険的政策ではなく、また、国家が自国の安全保障政策の一部として行使する抑止の信頼性を得るために核兵器は必要がないという議論を提供してきた。何十年にもわたって、核抑止ドクトリンは、水平および垂直の核拡散をもたらし、核軍縮と核廃絶の障害となっていることが証明されてきた。
64 抑止のために核兵器を用いることが将来のある時点での失敗の確率に影響しないとみなすことにより、このような失敗の予測可能な結末は、他の手段による抑止の失敗と比べてはるかに広範で凄惨なものになるであろうし、また、壊滅的な人道的影響を伴う一つまたはそれ以上の核兵器の爆発という結果をもたらすことになるであろう。
65 2016年2月22日から23日までジュネーブで開催されたOEWGの第1回会合において、アクロニム軍縮外交研究所所長のレベッカ・ジョンソン博士は、多国間核軍縮交渉を進展させる5つの可能な道筋を特定した。すなわち、
(a) 1995年、2000年、および2010年にNPTの締約国により認められ、かつ合意された行動項目の達成を推進することの強調を含め、一方的、二国間、複数国間、または多国間の長期的な(「ステップ」または「ビルディング・ブロック」による)立場からの関与に関する進展を推進するための努力、
(b) 核兵器の使用、配備、開発、製造、備蓄、保有、およびその他の関連活動を禁止する新たな次の段階である国際人道法の下での「核兵器(先行)禁止条約」(Nuclear ban treaty; NBT)、そして、NPTおよび包括的核実験禁止条約(CTBT)を強化し、国際人道法に貢献することを意図した核兵器の完全な排除の要求(ただし、詳細なメカニズムの交渉は含まない)、
(c) 2008年に国連事務総長により提案されたような枠組条約、または個別の相互強化文書による枠組み、
(d) 非核兵器地帯(NWFZ)のさらなる実現をもたらすこと、
(e) 完全に包括的な核兵器禁止条約(Nuclear weapons convention; NWC)。モデル核兵器禁止条約が1990年代にNGOにより起草され、マレーシアとコスタリカにより、2007年の国連総会にその改訂版が提出されている(※17)。
66 アクロニム軍縮外交研究所による本作業文書は、多くの政府代表者と市民社会による承認に裏付けられているが、これらの道筋は、相互に排他的なものではなく、優先的な順位付けを要求するものでもなく、また、核兵器のない世界における平和と安全の到達および維持という長期的な目標に向かって、相互に強化するものとして取り扱われなくてはならない。
67 2016年2月のOEWGの議論において、上記の5つの候補となる道筋が交渉されなければ法的措置に効果がないことが強調された。これらの候補となる道筋を考慮する際、それぞれの提案が、現在の地政学的、構造的、および外交的環境の中で交渉に成功し、また現実化するために必要となる戦略と条件を分析することが求められる。
68 この評価には、地政学的、政治的、および外交的条件につき、これらを取り巻く潜在的な障害や方法を考慮しつつ、現実的かつ前向きな分析を必要とする。その分析には以下の事項を含む必要がある。すなわち、必要な条件に着手、交渉し、結論づけ、実施する既存のまたは潜在的な交渉の場およびメカニズム。このようなアプローチは、ドクトリンまたは政策に関し、核武装国が認識している核抑止または核使用に置かれた利益または信頼を含め、(直接的または間接的に)核武装国の態度に影響を与える可能性が高い。また、目指すべき目標、タイミング、または道筋、同様に、進展を加速または阻害する異なる措置の間の相互作用についての、異なる措置の意図的および予測可能な役割と関係、さらに、核武装国と核に依存する同盟、非核国、国内または国境を超えた市民社会のアクター、これらの利害関係者が現在果たす役割など、異なる利害関係者の力と役割、これらの検討である。また、OEWGは、安全保障、人道上の影響、および効果的な進展を妨げるリスクの重要問題を考慮しつつ、これらの要因が交渉プロセスを進捗させるよう変化する方法を検討する必要もある。
69 多くの核武装国が招待を受けた国連加盟国としてOEWGへの参加を拒否したこと、また、コンセンサスという拒否権に基づいた規則により残念ながら助長されているが、国連軍縮会議が20年間も行き詰まっていることは、核兵器の最初の爆発と使用から70年を経ても、核武装国が構造的な拒否権の背後に隠れていることを示している。
70 このことは、核武装国とその同盟国が自国の防衛政策として核抑止ドクトリンとその活動の優位性を維持する限り、これらの国は、核軍縮の実際的な次の段階、効果的な法的措置、および道筋のほぼすべての無期限延期を目指すのではないかと思わせる。このような態度は、これらの国が多国間核軍縮交渉を妨害し阻害するのを容易にし続けるべきという意味ではない。
71 過去70年間の核拡散、軍備管理、または軍縮努力を考慮し、そこから導き出された教訓からすれば、国連加盟国が短期的な次の段階として追及する最も実行可能かつ実際的な法的措置は、核兵器使用にかかる使用と準備に関連した活動を禁止する核兵器(先行)禁止条約(NBT)となるであろう。
72 特定の政府の防衛政策に関する核抑止ドクトリンの保持が軽減されるまで、すべての国に開かれ誰にも邪魔されることのない多国間交渉の場こそが、多国間核軍縮交渉を進展させる唯一の実際的な方法である。このような交渉の場は、核武装国が招待され、参加するものでなくてはならないし、たとえ当初からの参加が得られないとしても、進展が得られるのであれば、交渉への参加が得られるよう開かれたものであり続けなければならない。手続規則ではすべての国が平等に扱われるべきであり、手続または実質の決定をブロックする拒否権が与えられるべきではない。締結される条約、文書、または合意は、署名のために開放される前に採択のために国際総会に提出されなければならない。そして、諸政府は、自国の国内手続または国民の意思に従って、当該合意の署名、批准、加入の有無または時期について、自国の考慮事項に基づき決定することになる。
73 学術上の論議でも指摘されるように、要求事項から交渉の場に重要な措置を採用するよう要求する際には、市民社会の役割が極めて重要である(※18)。
74 交渉を開始し、実行するプロセスはまさに、何が達成可能かを示す新たな方法をもたらすことが多い。多国間条約は、包括的なものになる必要はなく、部分的核実験禁止条約(PTBT)のように部分的なものであってもよいし、また核分裂物質の禁止案のように範囲が制限されたものであってもよい。核兵器(先行)禁止条約(NBT)案のような第一歩は、核武装国および核依存国における核兵器の意思決定に関する計算に変化をもたらす可能性が高く、また、他の段階的アプローチを促進させる可能性も高めるであろうし、さらに、包括的措置と漸進的措置を統合するさらなるプロセスにもつながるのである。
75 核兵器の使用、配備、生産、保有、移動、実験、および貯蔵を禁止し、また核兵器の全面的な廃絶を達成する条件を強調する、多国間で交渉され、地球規模で受けいれられ、また非差別的な核兵器(先行)禁止条約(NBT)こそが、最も実行可能な次の段階になると思われ、また、将来的に法的・政治的抑止のための重要かつ望ましい手段を構成することになるであろう。
*初出:アクロニム軍縮外交研究所著(森川泰宏訳)「核兵器に依存する抑止の安全保障および人道上の影響と効果的な法的代替措置」反核法律家 89号 15-27頁(2016年)
※ 多国間核軍縮交渉を前進させるための公開作業部会(Open-ended Working Group Taking forward multilateral nuclear disarmament negotiations; OEWG. 国連総会決議70/33により設立)の2016年5月11日にジュネーブで開催された会合において、作業文書として提出(UN.doc. A/AC.286/NGO/22/Rev.1)。原文はアクロニム軍縮外交研究所のウェブサイト または、リーチング・クリティカル・ウィルのウェブサイトで閲覧可能。2021年3月29日の時点でURLの接続を確認した。また、注の表記方法の一部を訳者が修正した。
※1 2010 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons, Final Document, Part 1, UN .doc. NPT/CONF.2010/50 (Vol. I) , at 20.
※3 Resolution 70/33 of the General Assembly of the United Nations.
※4 Commander Robert Green (Royal Navy, retired), Security Without Nuclear Deterrence, Astron Media, NZ, 2010.〔邦訳:大石幹夫(訳)『核抑止なき安全保障へ―核戦略に関わった英国海軍将校の証言―』、かもがわ出版、2010年〕
※5 George P. Shultz, William J. Perry, Henry A. Kissinger, Sam Nunn, Deterrence in the Age of Nuclear Proliferation: The doctrine of mutual assured destruction is obsolete in the post-Cold War era. Wall Street Journal, New York, 7 March, 2011.
※6 See Ward Wilson, Five Myths about Nuclear Weapons, Houghton Mifflin Harcourt, 2012.
※7 一部の専門家は、強要を核抑止の一側面と捉えているし、また恐喝の形式の一つとしてこれを捉える者もいる。これらの専門家は、トーマス・シェリング(Thomas Schelling)が「強制外交」と呼ぶものに密接に関連する構成要素であることに同意しているが、このような見解の相違を明らかにする必要はない。トーマス・シェリングの「強要対抑止(compellence vs deterrence)」のついてのインターネット検索結果を参照せよ。核抑止の「成功」例として引用されることが多い1962年のキューバ危機について、シェリングは、「1962年10月にケネディ大統領がキューバの海域を隔離するために軍艦を派遣したことは、強要の歴史的例証と考えることができる。封鎖は抑止の段階を決める要素であるものの、本質的に、米ソの衝突を避ける行動を強制する(弁解の余地のない)明白な行動であった」と述べている。
※9 George P. Shultz, William J. Perry, Henry A. Kissinger, Sam Nunn and others, A World Free of Nuclear Weapons, Wall Street Journal, New York, 4 January, 2007.
※10 General Lee Butler, public speech given in Wellington, New Zealand, 1 October 1997.
※12 2010年に英仏間で締結されたテウタテス条約を含め、よく知られている例では、弾頭研究に関する核協力の制度化、設計技術または設備の共有、そして、相互防衛目的での原子力利用協力のため、1958年から繰り返し延長されている相互防衛協定の下、米英間で行われている継続的な核協力またはミサイル移転などがある。他の核武装国間による協力については、多くの協力が行われていると推測されているものの、ほとんど知られていない。
※13 核に依存する「傘下」国の一つに焦点を当てた最近の議論として、See Onur Guven and Sico van der Meer, A treaty banning nuclear weapons and its implications for the Netherlands, Clingendael Policy Brief, May 2015.
※14 20年以上のこれらの会合および議論の文書と分析については、アクロニム軍縮外交研究所のウェブサイトを参照せよ。
※15 たとえば、1995年以降の一連のNPT会合での声明および作業文書、ノルウェー、メキシコ、およびオーストリア政府により公開されているオスロ(2013年5月)、ナジャリット(2014年2月)、ウィーン(2014年12月)で開催された核兵器の人道的影響に関する3つの国際会議の文書と議事録、同様に、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のウェブサイト、リーチング・クリティカル・ウィルのウェブサイト、国連軍縮研究所のウェブサイト、国際法政策研究所(ノルウェー、オスロ)のウェブサイト、国際赤十字のウェブサイトなど、市民社会のウェブサイトを参照せよ。
※16 See Ira Helfand, Nuclear Famine: Two Billion People at Risk, IPPNW, 2013 (updated from 2012); Owen B. Toon, Richard P. Turco, Alan Robock, Charles Badeen, Luke Oman and Georgiy L. Stenchikov, Atmospheric effects and societal consequences of regional scale nuclear conflicts and acts of individual nuclear terrorism; also Alan Robock, Luke Oman, Georgiy L. Stenchikov, Owen B. Toon, Charles Badeen and Richard P. Turco, Climate consequences of regional nuclear conflicts, Atm. Chem. Phys. 7 (2007) .
※17 "Effective legal measures: Possible pathways towards a nuclear-weapon-free world" Working Paper and notes for Presentation by Rebecca Johnson, director of the Acronym Institute for Disarmament Diplomacy, in Panel I on 'substantively addressing concrete effective legal measures, legal provisions and norms that will need to be concluded to attain and maintain a world without nuclear weapons', Open-ended Working Group on Taking forward multilateral nuclear disarmament negotiations, Palais des Nations, Geneva, 22 February 2016.
※18 For example, Rebecca Johnson, Unfinished Business: The negotiation of the CTBT and the end of nuclear testing (UNIDIR 2009); and Mordechai Melamud, Paul Meerts, and I. William Zartman (eds.), Banning the Bang or the Bomb? (CUP, 2014).