気候保護と核廃絶
―人道的軍縮と国際人権法の発展状況からの提言―(*)
核政策法律家委員会(LCNP)(※1)
(訳:森川 泰宏)
はじめに
世界未来評議会(WFC)が2015年に公表した『気候と核のつながり』(※2)と題する報告書の序文は、次のように始まっている。「21世紀の現在、人類は、極度の貧困、飢餓、感染症パンデミック、人口動態の変化など、相互に関連し、かつ国境を越える様々な脅威や危機に直面しているが、その中でも、気候変動と核兵器の存続は、人類の生き残りを脅かす主要な脅威として際立った存在となっている。人類の長い歴史の中で、この両者の脅威は比較的新しいもので、前世紀に登場したばかりである。周知のとおり、両者の脅威のいずれもが地球上の生命の生存を脅かすものであって、また、私たち人類の活動から生じたものである。」(※3)
気候変動と核兵器がもたらす挑戦は、同報告書が公表されてからの数年間で一段と手に負えないものとなってしまっている。核保有国は、核兵器を近代化し、場合によっては保有量を増加させてすらいる。米ロ間の核軍備交渉は停滞しており、多国間の核軍縮交渉も行われていない。ロシアによるウクライナ侵攻とこれに対する国際社会の強い反発は、既に希薄となっていた平和と軍縮の問題に関する大国間の協力関係をさらに揺るがしている。そして、もちろん、気候変動も看過できない状況となっている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最近の報告書では、私たちが既に目の当たりにしている猛烈な山火事、激化する台風、大規模な洪水など、世界各地で気候災害を引き起こす世界の気温上昇が避けられないとされている(※4)。
気候変動と核兵器とは以下のような点で密接に関係するものといえる。すなわち、
- 気候変動は、安全保障環境を悪化させ(※5)、ひいては、核兵器の使用を含む武力紛争の要因となる。
- 核兵器に対処する協力関係が損なわれることは、気候変動に対処する協力関係が損なわれることにもつながる。スチュワート(David Steward)とグラノフ(Jonathan Granoff)は次のように述べている。「気候変動、地球規模のパンデミック、その他の様々な重大脅威に直面するなか、私たちの未来は、人間の安全保障を達成するために緊密な協力関係を築けるのかにかかっている。しかし、核兵器の脅威ほどこのような協力関係を損なうものはない。私たちは、人類の未来のために核兵器のない世界を構築しなければならないのである。」(※6)
- 核兵器の備蓄に費やされる資源は、気候保護やその他の社会的に有益な目的のために用いることができず、また、核兵器の製造と配備には、温室効果ガスを発生させるエネルギー消費が必要となる(※7)。
- 大規模な核攻撃の応酬は、温暖化とは逆方向の気候変動を引き起こす「核の冬」により、世界の気温を極端に低下させることになる(※8)。
気候保護と核軍縮・不拡散の分野における課題解決の試みには重要な共通点がある。すなわち、気候保護と核軍縮・不拡散とは、両者ともに中核となる国際条約を基盤とする本質的にグローバルな法的・政治的プロセスなのであって、国際的な法の支配の維持という共通の問題〔すなわち、課題解決のための条約レジームの構築とその義務の履行の問題〕を提起しているのである。
以上の点に鑑み、本稿は、まず、本稿全体の要旨を示し〔Ⅰ〕、気候保護と核廃絶に関連する条約レジームの概要を述べた後〔Ⅱ〕、『気候と核のつながり』の公表後に交渉された核兵器禁止条約(TPNW)の役割も含め、気候保護と核軍縮・不拡散に関連する条約レジームを比較・検討する〔Ⅲ〕。そして、近年の発展状況として、気候保護と核廃絶に関連する国際人権法の展開を確認した上で〔Ⅳ〕、市民社会により提案されている国際的なエコサイド罪〔「大規模環境破壊」に対する犯罪〕の創設について論じることとする〔Ⅴ〕。
Ⅰ 本稿の要旨
- 核軍縮・不拡散と気候保護には、それぞれに一般的義務の履行を目的とした条約レジームが存在しており、国際的な法的合意である核兵器不拡散条約(NPT)、気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)、気候変動に関するパリ協定などに含まれる行動枠組みを定めている。
- 気候保護と核軍縮・不拡散の両分野において、国家は、合意は拘束するという原則、すなわち、条約には法的拘束力があり、誠実に履行されなければならないという基本的な法原則に従って行動する義務がある。
- NPTは、核軍縮に重要な役割を果たしており、おそらくは、さらなる核拡散を防止する上で決定的な役割を果たしてきた。しかしながら、核軍備競争の停止と核廃絶という目標にはほど遠い状況である。
- 核保有国はTPNWに加入しておらず、近い将来に加入する可能性も低い。それにもかかわらず、TPNWは、NPTの「柱」であるべき核軍縮を強調する役割を果たしており、時間の経過とともに、この柱の進歩を促進し得るものである。地域的な非核兵器地帯条約と同様に、TPNWもまた、非核兵器国による核兵器の取得の禁止というNPT上の義務を強化する。重要な点は、TPNWにより、核被害者に対する援助と環境の修復の必要性について、初めてグローバルな政策上の焦点が当てられたということである。
- TPNWは、核兵器による環境・人道上の壊滅的な結末を強調し、加えて環境修復の義務を課すことで、人道的な核軍縮と気候・環境保護との間のつながりを可視化したものである。
- 気候変動の回避という最終的な目的に対して、パリ協定がどの程度機能しているのかについては、疑問を差し挟む余地がある。米国を含むいくつかの国が自らに課せられた〔温室効果ガスの排出量に係る〕国別削減目標を達成できるのかは不透明な状況である。さらに、各国の国別削減目標を合計しても、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標を達成するのに十分なものではない。
- 核軍縮・不拡散と気候保護の条約レジームは、いずれも困難な課題に直面している。核軍縮・不拡散の条約レジームでは、〔核兵器を持つ国と持たざる国との間の〕不平等な二層構造から生じる協力・信頼関係の欠如とパワー・ポリティクスにおける核兵器への継続的な依存とが障壁となっている。気候保護の条約レジームは、大国を含む大半の国から賛同を得ているものと思われる。さらに、気候保護は建設的な問題解決型の手法で行われている。その一方で、気候保護の目標を達成するために経済を変容させることは本質的に困難な課題である。
- 近年の核軍縮と気候保護とのつながりに関する国際人権法上の基盤は、核実験・使用の被害者の人権を擁護するTPNWの条約交渉、核威嚇・使用が生命に対する権利の尊重と両立しないとした自由権規約委員会の認定、国連人権理事会と国連総会による清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利の承認、これら3点の発展によって強化されてきた。
- 〔2017年に設立された英国に中心拠点を置く国際NGOである〕ストップ・エコサイド・インターナショナル(SEI)は、国際刑事裁判所(ICC)に関するローマ規程へのエコサイド罪の追加を提案している。エコサイド罪は、ローマ規程に基づく戦争犯罪、人道に対する犯罪、集団殺害犯罪(ジェノサイド罪)、侵略犯罪に次ぐ、5番目の〔中核犯罪の〕犯罪類型となる。専門家パネルは、エコサイド罪を「自然環境に対する重大かつ広範又は長期的な損害が当該行為により生じる蓋然性が高いことを知りながら行われる違法又は不当な行為」と定義するよう提案している。
- エコサイド罪は、戦時のみならず平時にも適用されることになるであろう。国際的なエコサイド罪の創設は、将来の気候保護に貢献するものであって、おそらくは将来の核兵器の製造や実験から生じる環境被害の防止にも貢献し得るものである。しかしながら、ローマ規程を改正してエコサイド罪を追加したとしても、管轄権上のハードルもあることから、ローマ規程へのエコサイド罪の追加が万能薬となるものではない。
- 国際的な武力紛争の過程で行われるエコサイドは、既存の国際文書、とりわけ、ローマ規程とジュネーブ諸条約第1追加議定書によって既に禁止されている。
- 近い将来にエコサイド罪がローマ規程に追加されるのかは措くとしても、エコサイドの概念は、壊滅的な気候変動の回避と壊滅的な核戦争の回避という二つの要請を人々の意識や政策審議のなかで強く結びつけるものであって、また、そうすべきものでもある。
Ⅱ 気候保護と核軍縮・不拡散に関連する条約レジームの概要
1992年に採択されたUNFCCCは、温室効果ガスの人為的排出の制限や〔森林、海洋などの〕温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫の保護を含む気候変動を緩和するための国内政策の採用を各国に促すための一般的なコミットメントを最初に定めた条約である。1997年に採択された京都議定書は、2010年までに世界の温室効果ガスの排出量を1990年と比べて〔先進国全体で〕5%削減するという目標を設定した(なお、米国は同議定書を批准しなかった)。それから10年以上を経て、2009年のコペンハーゲン合意では、世界全体の気温上昇を2℃より低く保つことが必要不可欠である点について幅広い合意を得ることには成功したが、当該合意では、その成果を確実にするための段階の骨子が示されなかった。2015年に採択されたパリ協定では、〔産業革命以前と比べて〕世界の平均気温の上昇を2℃より低く保つことを目標とし、また、努力目標として1.5℃に抑えることとされた。それ以来、地球温暖化を1.5℃に抑えるための行動が必要不可欠である点について国際的な合意が形成されてきている。もっとも、この水準であっても、地球温暖化はグローバルな人間の安全保障に重大な影響を及ぼすことになるであろうし、その影響は、現時点でも回避することが不可能に近いものである。
2021年に、気候科学者のグループは、これまでで最も重大な警告を発した。2021年のIPCCの報告書は、少なくとも過去2000年間で、人類の活動が前例のない速度で気候を温暖化させた点を指摘して、気候危機の深刻さを強調した(※9)。同報告書では、大気、海洋、雪氷圏及び生物圏における急速かつ広範な変化に着目して、「人為的な二酸化炭素の累積排出量とこれらが引き起こす地球温暖化」との間には、直線的な関係があるという過去の調査結果を再確認している(※10)。
核軍縮のための現在の法的枠組みの礎石は、依然としてNPTである。NPTは、その構造そのものにおいて、核兵器を取得しない義務を負う大多数の締約国と核兵器の保有を認められている少数の締約国(米国、英国、フランス、ロシア、中国〔すなわち、NPT上の核兵器国〕)とを差別する一方で、核廃絶に向けた交渉を遂行する義務を定めている。また、NPTは、世界のエネルギーと環境についての政策にも影響を与えている。NPTは、核・原子力への依存を制限・排除するどころか、「平和」目的での核・原子力関連の知識の共有と援助を促進しているのである。50年以上の歴史を有するNPTに加えて、地域的な非核兵器地帯条約、TPNW、米ロ間の核軍縮協定である新STARTなどの協定が合わさって、核軍縮における法的状況が形成されている。
NPTは、核軍縮の議論において重要な位置を占めているにもかかわらず、NPT上の核兵器国は、NPTにおける条約義務と当該義務を履行するために5年ごとの再検討会議で交わされるコミットメントに関し、その進展を大幅に遅らせており、そればかりか、後退させてすらいる。NPT上の核兵器国が核廃絶のために誠実な交渉を行ってきたという主張は、今日の客観的事実を前にしては維持することが困難である。そのような客観的事実には、核兵器の近代化、米ロ間の核軍備管理の停滞、多国間の核軍備管理・軍縮交渉の不在、少なくとも中国の核兵器保有量の増加や核兵器の備蓄に関する透明性の低下などが含まれる。1996年の〔核兵器の威嚇又は使用の合法性に関する勧告的意見(核兵器勧告的意見)における〕国際司法裁判所(ICJ)の全会一致の判断に反して、NPT締約国が「そのすべての側面において核軍縮に導く交渉を完結させる」に至っていないことは確かなことである(※11)。
2017年に、国連の支援の下で122ヵ国がTPNWの条約交渉を行った。TPNWは2021年1月に発効している。気候保護と核廃絶とのかかわりの観点から注目すべき点は、TPNWは、環境に対する核兵器の壊滅的な影響を明確に認めていることであり、そして、核実験・使用がもたらす有害な影響の是正を締約国に義務付けているということである。しかしながら、現在のところ、核保有国はTPNWに加入していない。次章では、TPNWとTPNWにおける人道的軍縮のアプローチとが軍縮全体に及ぼす影響も併せて検討する。
Ⅲ 気候保護と核軍縮・不拡散に関連する条約レジームの比較
核軍縮・不拡散と気候保護には、それぞれに一般的な義務の履行を目的とした条約レジームがあり、国際的な法的合意に含まれる行動枠組みを定めている(※12)。特に、前述したNPT、UNFCCC、パリ協定は、このような条約レジームに当たるものである。
NPT第6条は、「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うこと」を求めている。NPTの前文では、「核戦争が人類に惨害をもたらすものであり、したがって、このような戦争の危険を回避するためにあらゆる努力を払い、及び人類の安全を保障するための措置をとることが必要である」ことに言及し、「核軍備競争の停止をできる限り早期に達成し、及び核軍備の縮小の方向で効果的な措置をとる意図」を宣言した上で、「厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約に基づき核兵器の製造を停止し、貯蔵されたすべての核兵器を廃棄し、並びに諸国の軍備から核兵器及びその運搬手段を除去する」ことを促進するために、国家間の緊張の緩和と諸国間の信頼の強化を宣言している。1996年の核兵器勧告的意見において、ICJは、他の国際法とともに、NPT第6条の権威ある解釈として、「厳格かつ効果的な国際管理の下で、そのすべての側面において核軍縮に導く交渉を誠実に遂行し、かつ完結させる義務が存在する」と判示している(※13)。
UNFCCC第2条は、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を「究極的な目的」と定めている。同条は、〔UNFCCC附属書Ⅰの締約国である〕先進締約国が「温室効果ガスの人為的な排出を抑制すること並びに温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫を保護し及び強化することによって気候変動を緩和するための自国の政策を採用し、これに沿った措置をとる」というUNFCCC第4条2(a)の要件を含む一般的な義務を定めている。同条では、さらなる協力活動も想定されており、そのような協力活動には、UNFCCC第17条に基づく追加協定〔議定書〕の採択が含まれる。その中でも、パリ協定は最も重要な追加協定であって、現時点における気候保護のための運用枠組みとなっている。
1 条約レジームの特徴
多くの多数国間条約と同様に、気候保護と核軍縮・不拡散の条約レジームでは、定期的に締約国会議が開催され、条約目的の達成に向けた進捗状況やその不足部分について議論し、条約義務を履行するためのさらなるコミットメントが交わされる。NGOは、各会合に関連して政策提言を行っているが、実際に各会合にも参加しており、NGOの参加人数は、NPTの会合では数百人、UNFCCCの会合では数千人と相当の規模となる。
十分に整備された条約レジームの特徴は、条約義務の履行を監視する責任を負う国際機関やこれに準ずる機関が存在することである。例えば、化学兵器禁止条約(CWC)の場合、化学兵器禁止機関(OPCW)がこのような機関に当たる。核軍縮・不拡散の条約レジームにおいては、独自の設立条約によりNPT以前に設立された国際原子力機関(IAEA)が非核兵器国に課せられた核兵器を取得しない義務を検証する責任を負っている。当該検証は、原子炉燃料の保障措置に関する制度を通して行われる。換言すれば、IAEAは、NPTからの脱退を宣言して核兵器を取得した朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の案件を含め、原則として、NPT上の核不拡散義務の遵守を監視するものである。国連安全保障理事会(国連安保理)は、北朝鮮の非核化を求め、2010年のNPT再検討会議でも、北朝鮮のNPT復帰が求められた。しかしながら、〔IAEAを含め〕NPT上の核兵器国や北朝鮮以外のNPTに加盟していない核保有国(インド、イスラエル、パキスタン)の核軍縮を検証する責任を負う国際機関やこれに準ずる機関は存在していない。
国連安保理は、国家による新たな核兵器の潜在的・実際的取得に対処する上で積極的な役割を果たしていることから、事実上、核軍縮・不拡散の条約レジームの一部となっている。核軍縮・不拡散の条約レジームのもう一つの要素は、核爆発実験を積極的に監視する国際機関である。この国際機関は、正式には包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)と呼称されており、包括的核実験禁止条約(CTBT)が未発効のため、準備的な機関となっている。
気候保護の条約レジームでは、IAEAやCTBTOに相当する国際機関は存在していないが、IPCCは、科学的根拠に基づく気候状態の評価を通じて、非常に重要かつ独立した役割を担っており、また、国連環境計画(UNEP)は、公教育や国家に対する援助の提供などの貴重な役割を果たしている。パリ協定の第13条7項では、「良い事例」〔グッド・プラクティス〕の情報源として、IPCCが挙げられている。後述するように、温室効果ガスの排出削減の国別目標とその目標を達成するための行動に関するパリ協定の規定に法的拘束力はなく、目標の達成状況を評価する責任を負う機関や団体も存在していない。それにもかかわらず、UNFCCCの締約国会議が毎年開催され、また、外部のオブザーバーにより各国の実績が厳しく監視されていることからすれば、温室効果ガスの排出削減の目標達成には相当の圧力がかかっているといえる。
より広範な制度的枠組みの観点からみると、気候保護の条約レジームには二つの点で核軍縮・不拡散の条約レジームとは大きく異なるところがある。第1に、国連安保理は、気候変動が国際の平和と安全の維持に及ぼす実際の影響や潜在的な影響と関連して、折に触れて気候変動の問題に取り組んできたが、行動指向のアジェンダを追及しているわけではなく、この点は、国連安保理が核不拡散に深く関与してきたこととは対照的である(もっとも、国連安保理は核軍縮の達成には関与していない)。第2に、気候保護の条約レジームは、2015年に国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)に気候保護の目標が含まれたことによって強化されている(※14)。このような目標は、いかなる種類の軍縮でも明示的に取り組まれているものではない(※15)。「気候変動に具体的な対策を」と題されたSDGsの目標13は、UNFCCCに基づいて交わされたコミットメントに従って、気候変動への緩和と適応に関する国家の能力の向上と、当該目標を達成するための開発途上国への援助を求めている(※16)。他のSDGsと同様に、SDGsの目標13の進捗状況は、毎年開催される国連の持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)の際にレビューの対象とされることがある(※17)。
気候保護と核軍縮のいずれの分野においても、特に、NPT、UNFCCC、パリ協定に関しては、各国は、合意は拘束するという原則、すなわち、条約は法的拘束力を有し、誠実に履行されなければならないという基本的な法原則に従って行動する義務がある(※18)。ICJは、当該義務の要件を明確化しており、「信義誠実の原則は、合理的かつ当該目的が実現できるような方法での[条約の]適用を締約国に義務付けている」と判示している(※19)。国連憲章の主要なコメンタリーによれば、「信義誠実〔の原則〕は、条約の意味と目的を妨げることを意図した行動を締約国がとることを禁じるものである」とされている(※20)。核保有国が多国間核軍縮交渉を行うことなく核兵器を無期限に維持する計画を実行していることと信義誠実の原則の要求とを両立させることは困難であり、同様に、気候に大規模な損害をもたらす化石エネルギー技術への継続的な依存に関する多くの国の計画と信義誠実の原則の要求とを両立させることも困難である(※21)。既に確立した義務に従って行われる将来の気候保護と核軍縮の交渉においても、信義誠実の原則に従い、とりわけ、他の締約国の利益を認識すること、受け入れ可能な妥協点を粘り強く模索し、自国の立場を修正することもいとわないこと、交渉プロセスを不当に遅延させたり延長したりしないこと、これらの点が求められることとなるであろう(※22)。
2 条約レジームの有効性
核軍縮・不拡散と気候保護の条約レジームの有効性についてはどうであろうか。NPTを基盤とする核軍縮・不拡散の条約レジームは、さらなる核拡散を防止する上で重要な、そして、おそらくは決定的な役割を果たしてきた。しかしながら、核軍備競争の停止と核廃絶という目標にはほど遠い状況である。米ソの「冷戦」終結から5年後の1995年に開催されたNPT再検討・延長会議、これに続く、2000年、2010年のNPT再検討会議においては、強固かつ全般的な一連のコミットメントが採択されている(※23)。当該コミットメントには、安全保障政策における核兵器の役割の低減、CTBTの発効、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT〔カットオフ条約〕)の条約交渉、核廃絶につながる核兵器の量的削減の取組みなどを挙げることができるが、これらのコミットメントは、そのほとんどが履行されていない。
憂慮すべき点として、1996年にCTBT採択についての交渉が終了してから現在に至るまで、核保有国を巻き込んだ核軍備競争の停止と核軍縮に関する多国間交渉が一度も行われていないことが挙げられる。これに関連して、これまでに核兵器削減の数値目標が多国間で採択・承認されたこともない。この点は、単純な比較ではあるものの、パリ協定の下で国別に設定された温室効果ガスの排出削減目標が中心的な役割を果たす気候保護の条約レジームとは際立った対照をなしている。
さらに、グローバルなパワー・ポリティクスにおける核兵器の重要性が復権する傾向にあり、その例として、特に、2017年に米国と北朝鮮との間で交わされた核威嚇と、ロシアのウクライナ侵攻に対しNATO諸国が軍事介入するのなら核兵器に訴えるとするロシアによる核威嚇が挙げられる(※24)。実際に核兵器が使用されることを除けば、想定される最悪の事態は、非核兵器国との戦争において核威嚇に依存するロシア、ソ連時代の核兵器をロシアに引き渡したウクライナ、そして、挑戦的な核開発と小型核兵器の誇示を行う北朝鮮、これらの事象が相まって、最終的に非核兵器国の一部が核兵器の取得を目指すことである。
NPTの各種会合で採択されたコミットメントの不履行、さらには、その根底にある核軍縮義務の不履行に対する不満が、2017年に至って、122ヵ国の非核兵器国によるTPNWの条約交渉を推進した。TPNWの当事国と提案国は、従来の核兵器に関する議論を一変して、大量破壊兵器に対する国際法規範を強化するTPNWの重要性を強調する。TPNWは、人道的軍縮の社会運動において道標としての役割を果たしている。つまり、人道的軍縮の運動とは、核廃絶のために必要不可欠な軍備管理の追及において、国家の安全保障ではなく、人間の安全保障を中心に据えることを試みる運動なのである。
重要な点は、TPNWが、核兵器により武装する国や核兵器を保有する国に対し、TPNW加入の時点で、〔管理や計画を含む〕核兵器による武装の解除に至っていない場合、特定の期限付きで核兵器による武装の解除を義務付けていることであり、また、それ以外の締約国にも同様の義務を課していることである。核兵器による武装の解除に至っていない国は必然的に差別的に取り扱われることになるが、このような差別は、例えば、核兵器国に対して保障措置に関する異なる義務を課し、明確な期限を設けずに核軍縮交渉の一般的義務のみを課すNPTとは異なり、不当な意味での差別とはいえない。
TPNWは2021年に発効し、2022年には第1回締約国会議(1MSP)が開催された。TPNWは条約レジームの特徴を有しているといえる。TPNWは、普遍性を有する規範の履行を求め、定期的な締約国間の会合が含まれており、また、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)というダイナミックな市民社会のネットワークによって支援されている。さらに、核実験・使用による被害者に対する援助と環境の修復の義務に関しては、TPNWは、定期的な会合や作業部会を通して、締約国により構成・監視される追加的な実践的履行を求めている。
TPNWは、NPT上の核兵器国には非常に冷淡に受け止められており、近いうちに核兵器国がTPNWに加入する可能性は低い。それでもなお、オーストリアと他のTPNW主要締約国は、TPNWはNPTを補完するものであり、当然の主張ではあるが、少なくともNPT第6条の核軍縮義務を履行する一つの手段として機能すると主張している(※25)。TPNWが〔核不拡散、原子力の平和利用と並ぶ〕NPTの「柱」であるべきもの、すなわち核軍縮を強調する役割を果たしていることに疑いはなく、時間の経過とともに、少なくともこの柱の発展を促進することになるであろう。TPNWは、地域的な非核兵器地帯条約と同様に、非核兵器国による核兵器の不取得というNPT上の義務を強化するものである。重要な点は、次章で述べるように、TPNWにより、核被害者に対する援助と環境の修復の必要性について、初めてグローバルな政策上の焦点が当てられたということである。被害者援助と環境修復の義務を果たすことは至極妥当なことなのであって、責任ある方法で核時代を終わらせるために必要不可欠なことである。
以上の点を考慮すれば、TPNWが核軍縮・不拡散の条約レジーム全体の重要な要素となる見込みは十分にあるといえる。また、TPNWは、環境修復の義務のみならず、核兵器による壊滅的な環境・人道上の影響にも重点が置かれており、核軍縮と気候・環境保護との間のつながりを可視化しているともいえる。
気候保護の条約レジームに関しては、1992年にUNFCCCが採択されてからの最初の20年の間、温室効果ガスの濃度を安全なレベルに安定させるという目標の達成にほとんど進展がみられなかったことは確かである。2015年に採択されたパリ協定は、この傾向を逆転させることを意図しており、世界全体の気温上昇を2℃より低く保ち、努力目標として1.5℃に抑えることを目標としている。この合意の法的拘束力は限定的なものである。各国には、気候変動に対する緩和と適応への「各国が自主的に決定する約束草案」(INDC)を提出することが求められており、INDCは定期的に見直されることになっている。しかしながら、INDCで設定された目標を達成することはUNFCCC上の義務ではない。重要な点は、各国が温室効果ガスの排出削減のために設定した目標に国際法上の拘束力はなく、国別の目標を国内政策にどのように組み込むかによっては、国内法としての拘束力が生じない可能性があるということである。このようなアプローチが取られたのは、米国のオバマ(Barack Hussein Obama)政権が、米国の国内法の下ではパリ協定は〔上院の承認を得る必要のない〕行政協定であって、上院の批准と承認を得る必要のある条約には当たらないと主張できることを望んだという経緯がある。加えて、パリ協定に違反したとしても、罰則規定は設けられていない。
気候変動の回避という最終的な目的に対して、パリ協定がどの程度機能しているのかについては、疑問を差し挟む余地がある。米国を含むいくつかの国が自らに課せられた国別削減目標を達成できるのかは不透明な状況である(※26)。さらに、各国の国別削減目標を合計しても、世界全体の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標を達成するのに十分なものではない(※27)。むしろ、現在の国別削減目標がすべて達成された場合でも、世界の気温上昇は2.7℃に抑えられるにすぎないとの予測すらなされている(※28)。不愉快なことに、一部の政府は、国別削減目標の強化を検討することを約束したにもかかわらず、現在に至るまで消極的な姿勢を維持したままである(※29)。2022年11月に開催された〔UNFCCCの第27回締約国会議である〕COP27では、この点について何らの進展もみられず、気候変動の活動家や科学者らは相当のフラストレーションを抱えることとなった。その一方で、COP27は、気候変動による「損失と損害」を各国に補償する点については道筋を示すこととなった。
核軍縮・不拡散と気候保護の条約レジームは、いずれも困難な課題に直面している。核軍縮・不拡散の条約レジームでは、〔核兵器を持つ国と持たざる国との間の〕不平等な二層構造から生じる協力・信頼関係の欠如とパワー・ポリティクスにおける核兵器への継続的な依存とが障壁となっている。気候保護の条約レジームは、大国を含む大半の国から賛同を得ているものと思われる。さらに、気候保護は建設的な問題解決型の手法で行われている。その一方で、気候保護の目標を達成するために経済を変容させることは本質的に困難な課題である。気候保護に係る経済の変容という課題は、技術的な観点からいえば、おそらくは核兵器への依存を終わらせて核廃絶を達成するよりも困難な課題であることは確かである。ただし、核廃絶の課題は、国家のアイデンティティや競争的な地政学が絡み合ったものなのであり、このような難しさは気候保護の課題では見いだせない。
実際に、気候保護の条約レジームとは対照的に、NPTをポスト冷戦時代における核軍縮の原動力にする努力が試みられてきたにもかかわらず、NPTと核軍縮・不拡散の条約レジームは、核兵器のない世界を作るための協力関係の構築ではなく、概して核兵器を未だ保有していない国に対して核兵器を保有させない取組みが中心となってしまっている。TPNWは、核兵器の存在だけではなく、その負の遺産である核兵器の実験・使用にも取り組むことを目指すことで、人道的な〔あるいは人権指向型の〕価値観に基づいた問題解決へと明確なパラダイム転換を試みようとしているのである。
Ⅳ 気候保護と核廃絶に関連する国際人権法の発展
2015年に『気候と核のつながり』が公表されてから2022年の現在に至るまで、国際人権法に関連する何点かの重要な発展がみられた。第1の点は、既に触れた2017年のTPNWの条約交渉であり、以下でさらに詳述する。第2の点は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の第6条に規定される生命に対する権利に関しての〔自由権規約の履行監視機関である〕自由権規約委員会による2018年の一般的意見36の公表である(※30)。第3の点は、国連人権理事会による2021年の清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利を認める決議の採択であり(※31)、2022年には、国連総会もこれに倣い、当該権利を認める決議を反対票なし、棄権票も少数で採択している(※32)。
第1の点については、TPNWは、第6条と第7条に明記されているように、本質的に核実験・使用の被害者の人権擁護を目的の一つとしていることから、特に、国際人権法の適用に関連する条約という特徴を有するものである。TPNW第6条1項は、「締約国は、自国の管轄の下にある個人であって核兵器の使用又は実験により影響を受けているものについて、適用可能な国際人道法及び国際人権法に従い、差別なく、年齢及び性別に配慮した援助(医療、リハビリテーション及び心理的な支援を含む。)を十分に提供し、並びにこれらの者が社会的及び経済的に包容されるようにする」と規定している。また、TPNWは、前文において、「すべての国がいかなる時も適用可能な国際法(国際人道法及び国際人権法を含む。)を遵守する必要があることを再確認」するとして、国際人権法を引用している。このように、TPNWの人道的な観点は、国際人権法の根底にある観点と非常に類似したものとなっているのである。
TPNWには、環境の保護と修復に関連する重要な要素も規定されている。TPNW第6条2項は、核実験・使用によって引き起こされた環境損害の修復を求めており、前文でも、環境に対する核兵器の「重大な影響」について言及がなされている。さらに、TPNWの前文では、自然環境を保護する規則が武力紛争において遵守されるべき国際人道法の諸規則の一つであることに留意している。これらの要素は、国際人権法上の用語で枠組み化されているものではないものの、清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利と共鳴するものである。
第2の点は、2018年の一般的意見36において、自由権規約委員会が核兵器に関する注目すべき見解を公表したことである。自由権規約委員会は、一般的意見36において、「効果が無差別であって、壊滅的な規模で人間生命の破壊をもたらす性質をもつ大量破壊兵器、特に核兵器の威嚇又は使用は、生命に対する権利の尊重と両立しないものであり、国際法上の犯罪に該当し得る」(第66項)との見解を示している。
また、自由権規約委員会は、特に、「厳格かつ効果的な国際管理の下で核軍縮の目的を達成するために誠実に交渉を進める国際義務、そして、国際責任の諸原則に従って、自らの生命に対する権利が大量破壊兵器の実験又は使用によって悪影響を受け又は受けている被害者に対して十分な賠償を与えること」(第66項)を〔自由権規約の〕締約国は尊重しなければならないとの見解を示している。
さらに、自由権規約委員会は、気候変動を含む環境の保護に関して、「環境の悪化、気候変動、及び持続不可能な開発は、現在世代と将来世代とが生命に対する権利を享受する能力に対する最も重大な脅威の一部を構成しているのであり、…生命に対する権利、特に尊厳のある生活を尊重し確保する義務の履行は、とりわけ、公的及び私的な要因によって引き起こされる被害、汚染、及び気候変動から環境を保護するために締約国が講じる措置に依存する」(第62項)と述べている。
第3の点は、国連人権理事会が、2021年の決議において「清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利を人権の享受において重要な権利と認め」たことである。また、同決議では、当該権利の促進には、「国際環境法の原則に基づく多数国間環境協定の完全な履行が必要」であることが確認されている。さらに、同決議の前文では、気候変動が当該権利の享受を妨げる要因の一つであることが言及されている(※33)。同決議では、核兵器の製造、実験、使用、その他の軍事関連活動等への言及はなされていないものの、それでもなお、同決議は、環境分野のみならず、環境以外の諸分野においても、アドボカシーとアクションのリソースとなり得る。同決議自体に法的拘束力はなく、また、これに続く国連総会決議にも法的拘束力がないものの、両決議はともに、清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利に含まれている既存の国際文書に定められた権利の解釈、慣習国際法の規則の結晶化、そして、新たな条約における権利の明確化のための基礎をも築くものなのである。
同決議の採択は重要な潜在的意義を有している。国連人権理事会は国連総会によって設立された機関であり、他の人権条約に基づく国際機関と同様に、その任務は単一の条約の履行に限定されるものではない。したがって、国連人権理事会は、広範な権限を有する政治的・法的な機関なのであって、他の人権条約に基づく国際機関よりも、国連の実務において重要な役割を果たしているといえる。このような国連人権理事会の特徴には、積極的な側面と消極的な側面とがある。ここで関連する積極的な側面は、国連人権理事会がより広範な政治的・政策的議論に影響を与える能力を持つことであり、このことは国連総会にも当てはまる。清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利に対する国連人権理事会と国連総会の認識は、世界中で行われている気候変動訴訟において(※34)、そしておそらくは、ICJから気候保護に関する勧告的意見を得るために行われている運動においても(※35)、気候保護の活動家にさらなる法的論拠を提供することになるであろう。
以上のTPNW、自由権規約委員会の一般的意見36、そして、国連人権理事会と国連総会による清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利の承認、これらの点を合わせ考えれば、核兵器に対して国際人権法を適用するという何十年にもわたって停滞してきた試みにいくばくかの原動力を与えることになるのかもしれない。自由権規約委員会は、1984年の一般的意見14において「核兵器の設計、実験、製造、保有、及び配備が、生命に対する権利にとって、今日人類の直面する最大の脅威であることは明白である」との明確な見解を示している(※36)。しかしながら、その後数十年にもわたり、この核兵器と人権という主題に関して、人権分野からの見解はほとんど示されてこなかった。
2012年に、自由権規約委員会は、フランスに対し、フランス領ポリネシアにおけるフランスの核実験被害者に対する補償に関する質疑を行った(※37)、瞥見の限りでは、他の人権条約に基づく国際機関において、これ以前に核兵器と人権とを関連付ける形で人権問題が取り上げられた例はなく、そのような核兵器と関連する人権問題には、例えば、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第12条に基づく水に対する権利、社会権規約第11条に基づく住宅を含む相当な生活水準に対する権利、社会権規約第12条に基づく到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)における義務、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)における義務、これらの問題が含まれる。ただし、〔国連人権理事会が設置する〕女子差別撤廃委員会は、2018年の一般勧告37において、ジェンダーに関連する人権に影響を与える災害には、「あらゆる種類の兵器の危険とリスク」が含まれることを認めている(※38)。TPNWや他の軍縮フォーラムでも認識されつつあるように、特に女子差別撤廃条約の文脈では、核実験・使用がもたらす即自的かつ長期的な影響が、女性と少女に不釣り合いな影響を与える点について強調がなされるべきである(※39)。
2018年に一般的意見36が採択されてから、LCNPは、他のNGOと共同で、自由権規約委員会における加盟国審査と国連人権理事会における普遍的定期的審査の双方に〔生命に対する権利と核兵器との関係についての〕報告書を提出してきた(※40)。また、LCNPは、米国原子力規制委員会に提出した報告書において、生命に対する権利と人種差別撤廃委員会における非差別の義務との両者を訴えている(※41)。現在、LCNPは、核実験・使用がもたらす女性と少女に対する差別的影響に基づき、女子差別撤廃委員会への報告書の提出を準備中である。各人権機関が取り組んでいる様々な要素を考慮すれば、核兵器と人権に関連する問題が各人権機関の審査において積極的な対象となるのかは依然として不透明な状況である。それでもなお、LCNPは、このような手段を通して、核兵器に対する国際人権法の観点からの批判に係る広範な認識の確立を目指していく所存である。
〔1992年のUNFCCCの採択から〕国連人権理事会が清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利を承認する2021年に至るまでの20年の間にも、気候保護は、様々なフォーラムで人権上の観点からのレビューの対象となってきた。例えば、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、気候保護と人権に関連する何点かの指摘を行っている。2010年に、OHCHRは、「気候変動と水と衛生に対する人権」と題する報告書を公表した(※42)。また、2015年にも、OHCHRは、パリ協定を交渉するCOP21に「人権と気候変動を理解する」と題する文書を提出している(※43)。当該文書は、生命に対する権利、自己決定に対する権利、発展に対する権利、食糧に対する権利、水と衛生に対する権利、健康に対する権利、住宅に対する権利、教育に対する権利、十分な情報が提供された上での有意義な参加に対する権利、気候変動により最も影響を受ける人々の権利、そして、将来世代の権利、これらの権利を含む気候変動によって最も影響を受ける人権について論じたものである。
また、国連人権理事会は、2008年から2021年にかけて、気候変動と人権に関する一連の決議を採択している(※44)。OHCHRと同様に、国連人権理事会は、例えば2015年の決議29/15において、気候変動が多くの人権の享受に負の影響を及ぼしていることを認識している。さらに、国連人権理事会は、上記の一連の決議において、高齢者や障害者などの特定のグループの脆弱性を重要視している。
パリ協定には、「締約国が、気候変動に対処するための行動をとる際に、人権、健康についての権利、先住民、地域社会、移民、児童、障害者及び影響を受けやすい状況にある人々の権利並びに開発の権利に関するそれぞれの締約国の義務の履行並びに男女間の平等、女子の自律的な力の育成及び世代間の衡平を尊重し、促進し、及び考慮すべき」であるとの文言が含まれている(※45)。この見解は、OHCHRと国連人権理事会の見解と一致するものである。
女子差別撤廃委員会は、女性と少女の人権を擁護し、気候変動と気候変動に伴う災害に関連する差別から女性と少女が確実に解放される必要性を認識している。女子差別撤廃委員会の一般勧告37は、気候変動により「女性と少女の多くがより大きなリスク、負担、及び影響を被っている」として、女子差別撤廃条約第2条に基づき、「男女間の平等を保証するために全部門にわたって防災と気候変動に関係した参加型でジェンダーに対応した政策、戦略、及びプログラムの採用など対象を絞った具体的な施策を講じる」義務があることに留意している(※46)。
注目すべき市民社会の貢献として、2017年に、〔米国に中心拠点を置く国際NGOである〕人権と環境のためのグローバルネットワーク(GNHRE)により起草された環境と気候変動に関する宣言では、環境と気候変動に係る原則の一つとして、「すべての人間は、気候に影響を与える可能性のある計画及び意思決定についての活動及びプロセスに積極的、自由かつ有意義に参加する権利を有する。当該権利には、特に、先住民、女性、及びその他の過小評価されている集団の有意義な参加の平等に関する権利が含まれる」と述べられている(※47)。これらの権利と関連する諸原則とは、核兵器に関連する意思決定にも共通するものであって、気候保護と核廃絶の両分野で活動するNGO間での共通基盤の形成に際しても有用なものになると思われる(※48)。
Ⅴ エコサイド罪の提案
SEIは、1970年代初頭にまでその起源を遡ることができるエコサイド罪(※49)をICCローマ規程に追加するように提案している。エコサイド罪は、戦争犯罪、人道に対する犯罪、集団殺害犯罪(ジェノサイド罪)、侵略犯罪に次ぐ、ローマ規程の5番目の〔中核犯罪の〕犯罪類型となる。〔オランダに所在するSEIの支援財団である〕ストップ・エコサイド財団が招集した独立専門家パネルは、エコサイド罪を「自然環境に対する重大かつ広範又は長期的な損害が当該行為により生じる蓋然性が高いことを知りながら行われる違法又は不当な行為」と定義するよう提案している(※50)。このキャンペーンは多方面からの大きな支持を集めている。
エコサイド罪は、戦時のみならず平時にも適用されることになるであろう。国際的なエコサイド罪の創設は、将来の気候保護に貢献するものであって、おそらくは将来の核兵器の製造や実験から生じる環境被害の防止にも貢献し得るものである。しかしながら、ローマ規程を改正してエコサイド罪を追加したとしても、現在の改正規則から生じる管轄権上のハードルもあることから、ローマ規程へのエコサイド罪の追加が万能薬となるものではない(※51)。敷衍すると、侵略犯罪の訴追と同様に、国連安保理による付託ではない場合、ICCによるエコサイド罪の訴追には、改正規定を批准した締約国であって、かつ、エコサイドを実行した国〔被疑者国籍国〕とエコサイドが発生した国〔犯罪実行地国〕との双方の同意が必要になると思われる。米国、中国、ロシア、インドを含む主要国は、ローマ規程の締約国ではなく、〔上記双方の同意を要件としない〕国連安保理による付託の場合でも、国連安保理の常任理事国(米国、英国、フランス、ロシア、中国)の拒否権によってICCへの付託が阻止される可能性がある。このようなハードルがあるにもかかわらず、ICCによる訴追それ自体に加えて、ローマ規程にエコサイド罪が追加されることは、気候変動に関連する国内法と気候変動訴訟の取組みとを強化するものであり、また、現時点での詳細な予測は困難であるものの、気候変動政策一般にも影響を及ぼし得るものである。
国際的な武力紛争の過程で行われるエコサイドは、既存の国際文書、とりわけ、ローマ規程とジュネーブ諸条約第1追加議定書によって既に禁止されている。エコサイドに関連するローマ規程における戦争犯罪は、ローマ規程第8条2(b)(iv)において、「予期される具体的かつ直接的な軍事的利益全体との比較において、攻撃が、巻き添えによる文民の死亡若しくは傷害、民用物の損傷又は自然環境に対する広範、長期的かつ深刻な損害であって、明らかに過度となり得るものを引き起こすことを認識しながら故意に攻撃すること」と定義されている。遺憾なことに、ローマ規程上の戦争犯罪は、自然環境への損害と予期される軍事的利益との間での釣り合いという均衡性の原則の適用の枠内での条件付きの定式化となっている。
これとは対照的に、ジュネーブ諸条約第1追加議定書に定められた規則は、このような均衡性のテストを含まず、類型的な定式化となっている。ジュネーブ諸条約第1追加議定書の第35条3項では、「自然環境に対して広範、長期的かつ深刻な損害を与えることを目的とする又は与えることが予測される戦闘の方法及び手段を用いることは、禁止する」と規定されている。また、ジュネーブ諸条約第1追加議定書の第55条1項では、「戦闘においては、自然環境を広範、長期的かつ深刻な損害から保護するために注意を払う。その保護には、自然環境に対してそのような損害を与え、それにより住民の健康又は生存を害することを目的とする又は害することが予測される戦闘の方法及び手段の使用の禁止を含む」と規定されている。世界中のほぼすべての国がジュネーブ諸条約第1追加議定書の締約国であるが、未批准国の中には米国が含まれている。もっとも、ジュネーブ諸条約第1追加議定書に規定される上記の各規則は、すべての国を拘束する国際慣習法となっている(※52)。
ジュネーブ諸条約第1追加議定書の各規則は、兵器の種類や戦闘における火や水の使用など「戦闘の方法又は手段」に適用されるものであり、ローマ規程第8条2(b)(iv)の取り扱う「攻撃」には適用されない。ある意味では、SEIにより提案されているエコサイド罪の定義は、ジュネーブ諸条約第1追加議定書の各規則よりも厳格なものとはいえないが、注目すべきは、「自然環境に対する重大かつ広範又は長期的な損害」が存在することを要するのみで、これら3点の要素すべてが存在することを要しないということである。
エコサイド罪は、ローマ規程への重要な追加犯罪となるであろう。また、エコサイド罪は、自然環境に対する広範、長期的かつ重大な損害をもたらす武力紛争中の行動に関するローマ規程、ジュネーブ諸条約第1追加議定書、そして、その他の国際法が規律する既存の禁止規定を強化し、拡大することになる。さらに、エコサイド罪は、非国際的武力紛争においても適用されることになる。より重要な点は、エコサイド罪は、平時に行われる活動にも適用され得ることである。したがって、エコサイド罪は、潜在的には、(SEIにより提案されている定義のように)化石燃料の生産と消費、あるいは核兵器の製造など地球温暖化を引き起こす産業活動によって生じる自然環境に対する重大かつ広範又は長期的な損害を包含する犯罪類型になるものと思われる。
したがって、エコサイドの概念は、一方では気候保護のための、他方では核兵器の不使用と核廃絶のための統一された概念となるであろう。近い将来にエコサイド罪がローマ規程に追加されるのかは措くとしても、エコサイドの概念は、壊滅的な気候変動の回避と壊滅的な核戦争の回避という二つの要請を人々の意識や政策審議のなかで強く結びつけるものであって、また、そうすべきものでもある。
おわりに
2015年以降、気候変動と核兵器の使用という人類絶滅につながるリスクは、驚異的な速度で増大している。私たちが現在世代のみならず、将来世代にわたる地球と人類の繁栄を希求するのであれば、気候変動への緩和と適応のみならず、完全核軍縮、すなわち核廃絶が必要不可欠であることに議論の余地はない。人道的軍縮、国際人権法、そして、エコサイドの概念は、UNFCCCとNPTが約束した目的を達成するための重要な戦略的要素である。過去7年の間、人道的軍縮と気候変動の対策については、いくばくかの前向きな進展がみられているが、その一方で、国際社会は、世界終末時計の針(※53)を巻き戻し、人間の安全保障を実現するために、早急に期限付きの具体的措置を講じなければならないのである。
* 出典:Lawyers Committee on Nuclear Policy (LCNP), Climate Protection and Nuclear Abolition: Developments in Humanitarian Disarmament and Human Rights Since the Release of The Climate-Nuclear Nexus, Sponsored by The Simons Foundation Canada, November 2022, available at <https://www.thesimonsfoundation.ca/sites/default/files/Climate%20Protection%20and%20Nuclear%20Abolition_LCNPNov2022final_0.pdf>.
本稿は、前稿(核政策法律家委員会(訳:森川泰宏)「核不拡散レジームに対峙する核威嚇と核共有」反核法律家115号(2023年)18-27頁)に引き続き、核政策法律家委員会(LCNP)による直近の提言書を訳出したものである。
LCNPは、法学者と弁護士を中心として構成される米国の代表的な反核NGOであり、1981年の設立以降、40年以上の長きにわたり、ニューヨークを拠点として、国際法と米国国内法の観点からの核兵器廃絶に特化した調査・研究、そこから得られた法的・政策的知見に基づくアドボカシー活動を継続している。1989年に設立された国際反核法律家協会(IALANA)の米国における加入団体であり、LCNPのニューヨーク本部はIALANAの国連オフィスを兼ねている。また、LCNPは、IALANAと同じく、2007年に発足した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の構成団体である。LCNPとICANとの関係について、その一端が窺われる論稿として、例えば、ジョン・バロース(訳:森川泰宏)「核兵器の人道的影響に関する国際会議と核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN):オスロ会議の報告」反核法律家76号(2013年)26-31頁(日本反核法律家協会(JALANA)のウェブサイト<https://www.hankaku-j.org/data/02/140407.html>で利用可能)がある。LCNPの過去の提言を含む詳細については、LCNPのウェブサイト<https://www.lcnp.org/>を参照されたい。
本稿の要旨は、本文中ないしは関連注記において相当の紙数を割いて明快にまとめられていることから、訳者による特段の解題を要しないものと思われるが、本稿と関連する市民社会による核廃絶の取組みとして、2017年にスイス・バーゼルで開催されたNGO主催の国際会議「核時代における人権、将来世代及び犯罪」(バーゼル会議)とその成果である「人権並びに核兵器及び核・原子力エネルギーに由来する世代間犯罪に関するバーゼル宣言」(バーゼル宣言)の存在について触れておく必要があるだろう。バーゼル会議は、放射線被爆・被曝の医療上の帰結に係る最新情報を専門家間で共有するとともに、将来世代の権利を含む関連する人権について、刑事法の観点を含む法的アプローチを模索することを目的とした国際会議であり、その成果であるバーゼル宣言は、核・原子力の脅威に対処する科学的知見に基づくあるべき法の指標として、繰り返しの参照に耐える価値があると思われる。詳細については、山田寿則「バーゼル会議とその宣言について」反核法律家94号(2018年)45-51頁(JALANAのウェブサイト<https://www.hankaku-j.org/data/07/171227.html>で利用可能)に詳しいが、バーゼル宣言には、2017年の時点において、本稿でも取り上げられるエコサイド罪とその国際刑事裁判所(ICC)ローマ規程への追加の提案が含まれていることを特に強調しておきたい。なお、バーゼル宣言を受けて、市民社会の立場から米国の議会関係者に向けた政策提言を行った論稿として、アンドレアス・ニデッカー/エミリー・ガイラード/アラン・ウェア(訳:森川泰宏)「核・原子力の脅威と気候変動:我々には将来世代を守る義務がある」反核法律家 95号(2018年)41-45頁(JALANAのウェブサイト<https://www.hankaku-j.org/data/07/191007.html>で利用可能)もある。
バーゼル宣言でも強調された国際人権法上の将来世代の権利の概念は、気候変動への具体的な対策を求めるSDGsの目標13の後押しを受けて、日本においても、公害対策を基軸とした従来の環境法の基本枠組みの再構築を迫るものとなっている。もっとも、このような発展の動態に、気候変動の脅威のみならず、核兵器の使用による壊滅的な結末を含む核・原子力の脅威を適合させていくためには、なお本稿で示されるような市民社会による現行の環境規範への積極的な働きかけを必要とするように思われる。この点、将来世代の権利を組み込んだ環境法学の体系を展望し、発展させる一助となる直近の注目すべき書籍として、編:奥田進一・長島光一『環境法:将来世代との共生』(成文堂、2023年)があるので、本稿と併せて参照されることをお勧めする。
ウェブサイトのURLについては、2023年10月15日の時点で接続を確認した。また、訳出に当たって、一部の構成と注の表記を訳者が調整した。〔 〕は訳者が補ったものであり、訳注を兼ねている。
【註】
- 本稿は、アリアナ・スミス(Ariana Smith、LCNP事務局長〔本稿執筆時〕)、ジョン・バロース(John Burroughs、LCNP上席研究員)、ダニエル・サムラー(Danielle Samler、元LCNP研究員、リバース・ザ・トレンド共同コーディネーター)、イサーク・J・R・アルストン・ヴォイティッキー(Isaac J.R. Alston-Voyticky、ニューヨーク市立大学法科大学院兼同大学シティカレッジ・コリン・パウエルスクール学生)の4名により共同執筆された。
- The Climate-Nuclear Nexus: Exploring the linkages between climate change and nuclear threats, World Future Council (2015, revised edition 2016)〔available at <https://www.worldfuturecouncil.org/wp-content/uploads/2016/01/WFC_2015_The_Climate-Nuclear_Nexus.pdf>〕. 『気候と核のつながり』の主要著者はユルゲン・シュフラン(Jürgen Scheffran)。共著者はジョン・バロース(執筆当時はLCNP事務局長)、アンナ・ライドライター(Anna Leidreiter)、ロブ・ヴァン・リート(Rob van Riet)、アラン・ウェア(Alyn Ware)である〔なお、シュフランとウェアは、モデル核兵器禁止条約(MNWC)の普及と核廃絶に向けた法的争点を明らかにするために、2007年にIALANA、拡散に反対する技術者と科学者の国際ネットワーク(INESAP)、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)によって刊行されたSecuring our Survival (SOS): The Case for a Nuclear Weapons Convention(われらの生き残りの安全保障(SOS):核兵器禁止条約の主張)の共著者でもある。同書の邦訳として、メラフ・ダータン/フェリシティ・ヒル/ユルゲン・シュフラン/アラン・ウェア(編訳:浦田賢治)『地球の生き残り:解説 モデル核兵器条約』(日本評論社、2008年)がある。特に本稿の主題と関連する核廃絶のための重要争点の注釈・論評として、「健康と環境」(同書172-181頁、訳:城秀孝・山田寿則)、「清浄化、廃棄処分および安全な軍縮」(同書186-192頁、訳:森川泰宏・山田寿則)、「核エネルギー」(同書193-199頁、訳:森川泰宏・山田寿則)の各項目を見よ〕。
- Id., p.3.
- Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability, Working Group II, Intergovernmental Panel on Climate Change, 27 February 2022〔available at <https://www.ipcc.ch/report/sixth-assessment-report-working-group-ii/>〕. See FAQ 1: What are the new insights on climate impacts, vulnerability and adaptation compared to former IPCC reports?〔「過去のIPCCの報告書と比べて、気候への影響、脆弱性、適応についての新たな知見には何がありますか?」 available at <https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/about/frequently-asked-questions/keyfaq1/>〕
- See The Climate-Nuclear Nexus, supra〔note 2〕, pp.11-12.
- “Putin's nuclear risk: The stability that characterized the Cold War stand-off may no longer exist,” The Hill, 30 March 2022〔available at <https://thehill.com/opinion/national-security/600348-putins-nuclear-risk-the-stability-that-characterized-the-cold-war/>〕.
- 資源の誤った配分は、軍事支出全般にも当てはまる。さらに、戦闘の際にも化石燃料ベースのエネルギーが大量に消費されることになり、これに伴う温室効果ガスの排出がなされることになる。See Neta Crawford, “Pentagon Fuel Use, Climate Change, and the Costs of War,” Watson Institute, Brown University, 12 June 2019; Angelika Claußen, “War Is a Climate Killer,” International Politics and Society, 1 August 2022.
- See, e.g., Lili Xia Alan Robock, Kim Scherrer, Cheryl S. Harrison, Jonas Jägermeyr, Charles G. Bardeen, Owen B. Toon, and Ryan Heneghan, 2022: “Global food insecurity and famine from reduced crop, marine fishery and livestock production due to climate disruption from nuclear war soot injection,” Nature Food〔available at <https://www.nature.com/articles/s43016-022-00573-0>〕; Alan Robock and Owen Brian Toon, 2012, “Self-Assured Destruction: The Climate Impacts of Nuclear War,” Bulletin of the Atomic Scientists, 68(5), pp.66-74; The Climate-Nuclear Nexus, supra〔note 2〕, pp.13-14.
- Summary for Policymakers, Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, p.6, 2021〔available at <https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_SPM.pdf>〕.
- Id., p.28.
- Legality of the Threat or Use of Nuclear Weapons, Advisory Opinion of the International Court of Justice (“Nuclear Weapons Advisory Opinion”), 8 July 1996, ICJ Reports (1996) 226, ¶2F, dispositif〔available at <https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/95/095-19960708-ADV-01-00-EN.pdf>. 核兵器勧告的意見の邦訳として、訳:山田寿則/監訳:浦田賢治「核兵器の威嚇または使用の合法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見」、ジョン・バロース(監訳:浦田賢治/訳:山田寿則・伊藤勧)『核兵器使用の違法性:国際司法裁判所の勧告的意見』(早稲田大学比較法研究所、2001年)所収、同書205-258頁がある〕.
- 条約レジームの概念については、See John Burroughs, “Treaty Regimes and International Law,” Section 1.1, Nuclear Disorder or Cooperative Security? (2007)〔available at <https://www.lcnp.org/nuclear-disorder-or-cooperative-security>〕.
- Nuclear Weapons Advisory Opinion, supra〔note 11〕.
- “Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development,”A/Res/70/1, 25 September 2015, Goal 13, p.23〔available at <https://www.un.org/en/development/desa/population/migration/generalassembly/docs/globalcompact/A_RES_70_1_E.pdf>. なお、SDGsと国際法との関係については、例えば、西村智朗「『持続可能な開発』概念の拡張と国際環境法」世界法年報38号(2019年)3-26頁(J-STAGE<https://doi.org/10.11388/yearbookofworldlaw.38.0_3>で利用可能)、特に16-19頁を見よ。同論稿では、ウィーラマントリー(Christopher Gregory Weeramantry、元ICJ判事・IALANA会長)の持続可能な開発についての見解(持続可能な開発は、「多くの学術分野、多くの文化、多くの時代背景、多くの人権及び多くの世界の懸念事項を包含する焦点」である)の紹介もなされている(同論稿19-20頁)。ウィーラマントリーの持続可能な開発についての見解を紹介した論稿としては、森川泰宏「現代国際法における弱点領域?:C・G・ウィーラマントリーの主張と『普遍化』概念」学術文化研究10号(2010年)33-44頁(明治大学学術成果リポジトリ<http://hdl.handle.net/10291/16108>で利用可能)、特に40頁もある〕.
- ただし、SDGsの目標16〔「平和と公正をすべての人に」〕は、平和と正義をもたらす効果的な国家統治に取り組むものであり、そこでは、違法な武器取引を減らすことも求められている。Id., pp.25-26.〔さらに、2018年に国連が公表した『われらの共通の未来の安全保障:軍縮のためのアジェンダ』(国連のウェブサイト<https://www.un.org/disarmament/sg-agenda/en/>で利用可能)では、軍縮と特に関わりの深いSDGsとして,目標16に加え、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標4「質の高い教育をみんなに」。目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標8「生きがいも経済成長も」、目標11「住み続けられる街づくりを」が挙げられている。同軍縮アジェンダの邦訳(要約・仮訳)につき、国際平和拠点ひろしまのウェブサイト<https://hiroshimaforpeace.com/sg-agenda/>で利用可能〕
- SDGsを採択した上記国連総会決議(A/Res/70/1)では、UNFCCCが気候変動へのグローバルな対応を交渉するための主要な国際フォーラムであることを認めている。Id., p.23 (footnote).
- HLPFの2022年の閣僚宣言(事前配布のコピー)では、SDGsの目標13の達成が急務である点について、緊急性を表明する複数の項目が含まれている。そのうちの一つでは、「われらは、気候変動がわれらの時代の最大の課題の一つであって、その悪影響がすべての国の持続可能な開発の達成能力を損なうことを再確認する。・・・われらは、パリ協定と」2021年にスコットランド・グラスゴーで開催されたUNFCCCの第26回締約国会議であるCOP26の「成果の履行を求める」とされている〔なお、同宣言(E/HLS/2022/1)については、HLPF 2022のウェブサイト<https://hlpf.un.org/2022>で利用可能。上記引用箇所は同宣言の第97項〕。
- ウィーン条約法条約の第26条は、「効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない」と規定している。
- Case Concerning the Gabčíkovo-Nagymaros Project (Hungary. v. Slovakia), 1997 I.C.J. p.7, at p.79, ¶142〔available at <https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/92/092-19970925-JUD-01-00-EN.pdf>. ガブチコヴォ=ナジマロシュ計画事件の詳細と関連文献につき、例えば、平野実晴「ガブチコヴォ=ナジマロシュ・プロジェクト紛争の解決過程と国際司法裁判所の機能」環境法政策学会誌25号(2022年)145-155頁(J-STAGE<https://doi.org/10.57382/kkhs.2022.25_145>で利用可能)を見よ〕.
- “Article 2 (2)”, ¶34, in Bruno Simma, et al, The Charter of the United Nations A Commentary, (Oxford University Press, 3rd ed. 2012). Cf. Antonio Cassese, The Israel-PLO Agreement and Self-Determination, 4 European Journal of International Law Vol.564 (1993) at p.567〔available at <http://www.ejil.org/pdfs/4/1/1219.pdf>〕. カッセーゼは、〔イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)との間で交わされた合意と民族自決権の問題に関連して〕交渉義務の対象となる国が「将来の条約目的を損なうような行為を遂行することは、…許されるものではない」と述べている。
- この点につき、化石燃料不拡散条約が提案されている〔詳細につき、<https://fossilfueltreaty.org/>〕。化石燃料不拡散条約は、化石エネルギー技術の普及を防止し、既に普及されている場所では、化石エネルギー技術の段階的な廃止を求めるものとなるであろう〔なお、多国間核軍縮交渉の義務については、TPNWの採択を受けて、その根拠・内容・履行の国際法上の問題点を検討した論稿として、江藤淳一「核軍縮交渉義務」編:平覚・梅田徹・濱田太郎『国際法のフロンティア:宮崎繁樹先生追悼論文集』(日本評論社、2019年)所収、同書391-412頁がある。TPNWは、「その前文で、全面完全軍縮のための行動を決意し、『交渉を誠実に行い完結する義務』〔主文105項(2)F〕を再確認」しており、「これは、核軍縮交渉義務の存在を示す文言が、NPT第6条の文言から勧告的意見における主文105項(2)Fの文言に変わったことを意味する」とされる(同論稿404頁)〕。
- See Charles J. Moxley, Jr., John Burroughs and Jonathan Granoff, “Nuclear Weapons and Compliance with International Humanitarian Law and the Nuclear Non-Proliferation Treaty,” Fordham International Law Journal (2011), p.694〔available at <https://ir.lawnet.fordham.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=2290&context=ilj>〕; Elizabeth Shafer, “The Legal Imperative of Good Faith Negotiation on the Nuclear Disarmament Obligation of NPT Article VI,” 2 April 2014〔available at <https://static1.squarespace.com/static/603410a4be1db058065ce8d4/t/60749b74e7831f136f1063e2/1618254708180/EShaferpaper.pdf>. なお、別稿であるが、シェファの誠実な交渉義務に係る論稿として、エリザベス・J・シェファ(訳:小倉康久)「誠実な交渉:NPT第6条の核軍縮交渉義務および国際司法裁判所への再質問」編著:浦田賢治『核不拡散から核廃絶へ:軍縮国際法において信義誠実の義務とは何か』(日本評論社、2010年)所収、同書233-257頁がある〕; Cassese, supra〔note 20〕.
- 2022年に開催された第10回NPT再検討会議では、最終文書の採択には失敗したものの、1995年(第5回)、2000年(第6回)、2010年(第8回)の各再検討会議で採択されたコミットメントが引き続き重要であるという点では、大筋の合意が得られている。See “2022 NPT Review Conference: Nuclear Abolition not on the Agenda,” Lawyers Committee on Nuclear Policy, 8 September 2022〔available at <https://static1.squarespace.com/static/603410a4be1db058065ce8d4/t/631a521f09a9cb440930dd94/1662669343343/LCNPCommentary+10th+NPT+RevCon-982022.pdf>〕.
- 2022年6月にIALANAがTPNWの第1回締約国会議(1MSP)に提出した作業文書「Threats to Use Nuclear Weapons: Unacceptable and Illegal」〔国連軍縮部のウェブサイト<https://documents.unoda.org/wp-content/uploads/2022/06/TPNW.MSP_.2022.NGO_.161.pdf>で利用可能。同作業文書の邦訳として、国際反核法律家協会(訳:井上八香/監修:山田寿則)「核兵器を使用するとの威嚇 : 受け入れ難くかつ違法である」反核法律家112号(2022年)38-41頁(JALANAのウェブサイト<https://www.hankaku-j.org/statement/ialana/230222_02.html>で利用可能)がある〕を見よ〔なお、国際政治における近年の核兵器復権現象のトピックに関する必読書として、編:秋山信将・高橋杉雄『「核の忘却」の終わり:核兵器復権の時代』(勁草書房、2019年)がある。同書の主張を批判的に検討した論稿として、大久保賢一「核兵器は『長い平和』をもたらす『秩序の兵器』か??:『「核の忘却」の終わり』に触れながら」反核法律家104号(2020年)48-52頁も併せて参照のこと〕。
- 1MSPの宣言〔いわゆる「ウィーン宣言」〕では、次のように述べられている。「われらは、核兵器の不拡散に関する条約を軍縮・不拡散体制の礎石と認識し、これを損なう危険のある威嚇または行動を遺憾とする。われらは、不拡散条約に全面的に関与する同条約の締約国として、この条約と不拡散条約の補完性を再確認する。われらは、核軍備競争の停止および核軍縮に関連する必要かつ効果的な措置として、核兵器の包括的な法的禁止を発効させることにより、不拡散条約第6条の実施を前進させたことを喜ばしく思う。われらは、すべての不拡散条約締約国に対して、第6条の義務並びに不拡散条約再検討会議において合意された行動およびコミットメントを完全に実施するための努力を再活性化することを強く求める。われらは、われらの共通の目的を達成するため、すべての不拡散条約締約国と建設的に協働するとのコミットメントを改めて表明する。」 Draft Vienna Declaration of the 1st Meeting of States Parties of the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, 23 June 2022, ¶12〔国連のウェブサイト<https://documents.unoda.org/wp-content/uploads/2022/06/TPNW.MSP_.2022.CRP_.8-Draft-Declaration.pdf>で利用可能。1MSPの宣言の邦訳として、例えば、訳:山田寿則「核兵器禁止条約第1回締約国会合の宣言:核兵器のない世界へのわれらのコミットメント」反核法律家別冊(2023年)37-40頁。上記引用箇所(第12項)は同訳によった。訳:河合公明・小倉康久「核兵器禁止条約第1回締約国会合ウィーン宣言(案)『核兵器のない世界へのコミットメント』」反核法律家112号(2022年)2-4頁もある〕.
- 米国のケースでは、2022年8月に署名された気候変動対策法案は、2005年との比較で2030年までに40%の温室効果ガスの排出削減効果があると推定されているが、米国の2030年までの排出削減目標は50%である。Nadja Popovich and Brad Plumer, “How the New Climate Bill Would Reduce Emissions,” New York Times, 12 August 2022〔available at <https://www.nytimes.com/interactive/2022/08/02/climate/manchin-deal-emissions-cuts.html>〕. See also Alexandra Meise, “U.S. Climate Commitments in the Wake of West Virginia v. EPA,” ASIL Insights, 16 August 2022〔available at <https://www.asil.org/sites/default/files/ASIL_Insights_2022_V26_I7.pdf>〕.
- See Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change, Working Group III Contribution to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, p.18〔available at <https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/downloads/report/IPCC_AR6_WGIII_SPM.pdf>〕.
- See Sara Schonhardt,“Countries Back Away from Pledge to Update Climate Goals This Year,”Scientific American, 1 February 2022(citing report by UN Environmental Programme)〔available at <https://www.scientificamerican.com/article/countries-back-away-from-pledge-to-update-climate-goals-this-year/>〕.
- Id.
- Released 30 October 2018, final version CCPR/C/GC/36, 3 November 2019〔available at <https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/HRBodies/CCPR/CCPR_C_GC_36.pdf>. 一般的意見36の邦訳として、日本弁護士連合会仮訳(日本弁護士連合会のウェブサイト<https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2021/HRC_GC_36j.pdf>で利用可能)がある〕. 一般的意見36のコメンタリーとして, See in particular contributions of Professor Roger Clark and Dr. Daniel Rietiker in Human Rights Versus Nuclear Weapons: New Dimensions, Lawyers Committee on Nuclear Policy, January 2021〔available at <https://static1.squarespace.com/static/603410a4be1db058065ce8d4/t/6036b5e61eca1e3c52ff1dfb/1614198246509/Human-Rights-Versus-Nuclear-Weapons-New-Dimensions-LCNP-January-2021.pdf>. なお、同書所収のBonnie Docherty, “The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons and International Human Rights Law”の邦訳として、ボニー・ドチェルティ(訳:森川泰宏)「核兵器禁止条約(TPNW)と国際人権法」反核法律家108号(2021年)50-56頁(JALANAのウェブサイト<https://www.hankaku-j.org/data/01/220202_202101.html>で利用可能)がある〕.
- The human right to a clean, healthy and sustainable environment, A/HRC/RES/48/13, adopted 8 October 31 2021〔available at <https://documents.un.org/doc/undoc/gen/g21/289/50/pdf/g2128950.pdf?token=h55sgLpD1emZxZpOoW&fe=true>〕.
- Resolution A/76/300〔available at <https://documents.un.org/doc/undoc/gen/n22/442/77/pdf/n2244277.pdf?token=0cXFn9ghk9R8QkjiXL&fe=true>〕. 同決議は、2022年7月28日に賛成161、反対0、棄権8の投票結果で採択された。
- 当該箇所(第8項)では、「むしろ、気候変動の影響、天然資源の持続不可能な管理及び利用、大気、土地及び水の汚染、化学物質及び廃棄物の不適切な管理、その結果として生じる生物多様性の損失、及び生態系が提供する恩恵の低下は、清潔で健康的かつ持続可能な環境の享受を妨げること、また、環境破壊は、すべての人権を効果的に享受するに当たり、直接的及び間接的な悪影響を及ぼすことを認識し」と述べられている。
- See Climate Change Litigation Databases ― Sabin Center for Climate Change Law (climatecasechart.com)〔available at <https://climatecasechart.com/>. なお、気候変動訴訟の動向を国際法ないしは気候変動に対する人権アプローチの観点から解説した論稿として、阿部紀恵「気候変動訴訟の世界的動向」国際法学会エキスパートコメント No.2022-6(2022年)、国際法学会ウェブサイト<https://jsil.jp/wp-content/uploads/2022/03/expert2022-6.pdf>がある。気候変動に対する人権アプローチとは、「気候変動によって生じた結果がもたらす人権保障義務の刷新や拡充を唱えるものではなく、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出活動を人権保障義務によって規制し、気候変動問題を直接的・根本的に解決しようとする考え方」(同論稿5頁)であるとされる。日本における気候変動訴訟の展開と企業の行動変容の観点からの訴訟戦略について検討する論稿として、古谷英恵「気候変動訴訟とESG」編著:池田眞朗『SDGs・ESGとビジネス法務学』(武蔵野大学出版会、2023年)所収、同書147-187頁もある〕.
- See World’s Youth for Climate Justice〔available at <https://www.wy4cj.org/>、なお、当該運動を紹介する論稿として、井上八香「新たな世界法廷運動:気候変動に関するICJ勧告的意見を求めるとりくみ」反核法律家108号(2021年)46-49頁がある〕.
- General Comment No.14: Article 6, ICCPR (Right to Life), Nuclear Weapons and the Right to Life, adopted 9 November 1984〔available at <https://www.refworld.org/docid/453883f911.html>. 一般的意見14の邦訳として、日本弁護士連合会仮訳(日本弁護士連合会のウェブサイト<https://www.nichibenren.or.jp/activity/international/library/human_rights/liberty_general-comment.html>で利用可能)がある〕. 1982年4月30日に採択された自由権規約第6条(生命に対する権利)についての一般的意見6において、自由権規約委員会は、既に「戦争、特に熱核戦争の危険を防止する」よう努力する国家の「至上の義務」について言及していた〔一般的意見6は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のウェブサイト(UNHCR refworld)<https://www.refworld.org/docid/45388400a.html>で利用可能。一般的意見6の邦訳として、日本弁護士連合会仮訳(日本弁護士連合会のウェブサイト<https://www.nichibenren.or.jp/activity/international/library/human_rights/liberty_general-comment.html>で利用可能)がある〕。
- 詳細につき、See “France, Nuclear Weapons Policy, and the Right to Life,” Lawyers Committee on Nuclear Policy, Submission to the UN Human Rights Committee, 5 May 2021.〔available at <https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/Download.aspx?Lang=en&symbolno=INT%2FCCPR%2FICS%2FFRA%2F44849>〕.
- General recommendation No.37, CEDAW/C/GC/37, ¶13, 13 March 2018〔available at <https://www.ohchr.org/en/documents/general-comments-and-recommendations/general-recommendation-no37-2018-gender-related>. 一般勧告37の邦訳として、内閣府仮訳(内閣府のウェブサイト<https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/pdf/kankoku37.pdf>で利用可能)のほか、国際女性33巻1号(2019年)124-139頁所収の訳稿(訳:岡田仁子、J-STAGE<https://doi.org/10.11216/kokusaijosei.33.1_124>で利用可能)がある〕.
- 2021年2月にバーゼル平和事務所と他のNGOが女子差別撤廃委員会に共同で提出した報告書は、このアプローチの一例である〔同報告書については、バーゼル平和事務所のウェブサイト<https://baselpeaceoffice.org/sites/default/files/imce/articles/2021/denmark_nuclear_policy_and_the_rights_of_women_submission_by_alp_bpo_wfc_and_youth_fusion.pdf>で利用可能〕。
- LCNPが提出した一連の報告書には、ロシア(2020年6月、自由権規約委員会)、北朝鮮(2021年1月、自由権規約委員会)、フランス(2021年5月、自由権規約委員会)、米国(2019年10月、国連人権委員会)に係るものがある。これらすべては、LCNPのウェブサイト<https://www.lcnp.org/human-rights>で利用できる。バーゼル平和事務所が他のNGOと共同で提出した報告書については、See Basel Peace Office, “UK and Netherlands nuclear policies challenged in the Human Rights Council” 〔available at <https://www.baselpeaceoffice.org/article/uk-and-netherlands-nuclear-policies-challenged-human-rights-council>〕.
- Lawyers Committee on Nuclear Policy, Public Submission to the Nuclear Regulatory Commission, 21 October 2020〔available at <https://static1.squarespace.com/static/603410a4be1db058065ce8d4/t/606204e3497f333e360bc266/1617036515472/NRC-2020-0065-0178-LCNP-Public-Submission-reVLLW-proposal.pdf>〕.
- Office of the High Commissioner for Human Rights, Mandate of the Independent Expert on the Issue of Human Rights obligations related to access to safe drinking water and sanitation, “Climate Change and the Human Rights to Water and Sanitation,” 2010〔available at <https://www2.ohchr.org/english/issues/water/iexpert/docs/climatechange_hrtws.pdf>〕.
- “Understanding Human Rights and Climate Change,” Submission of the Office of the High Commissioner for Human Rights to the 21st Conference of Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change, 2015〔available at <https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Issues/ClimateChange/COP21.pdf>〕.
- See OHCHR | Human Rights Council resolutions on human rights and climate change〔available at <https://www.ohchr.org/en/climate-change/human-rights-council-resolutions-human-rights-and-climate-change>. 以下で指摘される国連人権理事会の一連の決議の端緒となる2008年の決議7/23(OHCHRのウェブサイト<https://ap.ohchr.org/documents/e/hrc/resolutions/a_hrc_res_7_23.pdf>で利用可能)と決議7/23を受けたOHCHRの報告書(国連のウェブサイト<https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G09/103/44/PDF/G0910344.pdf?OpenElement>で利用可能)を取り上げた論稿として、石橋可奈美「気候変動への人権法アプローチ:脆弱な国家や共同体への補完的対応の可能性」東京外国語大学論集83号(2011年)31-60頁、特に43-45頁がある。なお、同論稿では、ガブチコヴォ=ナジマロシュ計画事件でのウィーラマントリーの個別意見における環境保護と人権との関係に関する言及(環境保護は、「現代人権法理論の重要な部分であり、健康に対する権利やひいては生命そのものに対する権利のような多くの人権にとって、絶対不可欠の条件である」)の紹介もなされている(同論稿52頁)〕.
- The Report of the Special Rapporteur on the promotion and protection of human rights in the context of climate change, A/77/226, ¶3, 26 July 2022〔available at <https://www.ohchr.org/en/documents/thematic-reports/a77226-promotion-and-protection-human-rights-context-climate-change>〕. 同報告書では同箇所〔前文第11項〕を強調している〔なお、上記の特定のグループのうち、特に、国際法上の人権問題の観点から「先住民」を詳細に取り扱った先駆的研究として、住吉良人「先住民の法的地位」法律論叢65巻6号(1993年)1-72頁(明治大学学術成果リポジトリ<http://hdl.handle.net/10291/3905>で利用可能)がある〕。
- General recommendation No.37, ¶28〔See supra note 38〕.
- “Declaration on Human Rights and Climate Change,” ¶13, The Global Network for Human Rights and the Environment〔available at <https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Issues/Environment/SREnvironment/SafeClimate/NonState/PPT_DHRCC.pdf>〕.
- See Andrew Lichterman, “Humanitarian Law, Human Rights, and Nuclear Weapons: Social Movements and the Path of Legal Development,” in Human Rights Versus Nuclear Weapons: New Dimensions, Lawyers Committee on Nuclear Policy (2021), p.43〔See supra note 30〕. リヒターマンの論稿は、LCNPの主催により2019年5月1日に開催されたNPT準備委員会のサイドイベント「人権、民主主義と核兵器」での報告をまとめたものである。
- See “History,” Ecocide Law, Stop Ecocide International and the Promise Institute for Human Rights at UCLA School of Law〔available at <https://ecocidelaw.com/history/>〕.
- “Legal Definition of Ecocide Commentary and Core Text,” Ecocide Law, Stop Ecocide International and the Promise Institute for Human Rights at UCLA School of Law〔available at <https://ecocidelaw.com/legal-definition-and-commentary-2021/>. なお、フィリップ・サンズ(Philippe Sands、ロンドン大学教授)とディオール・フォール・ソウ(Dior Fall Sow、セネガル初の女性検察官・元ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)法律顧問)を共同議長とする独立専門家パネルのメンバーの詳細については、SEIのウェブサイト<https://www.stopecocide.earth/prelaunch-expert-drafting-panel>を見よ〕.
- 特に、ローマ規程第121条(5)の第2文では、「当該改正を受諾していない締約国については、裁判所は、当該改正に係る犯罪であって、当該締約国の国民によって又は当該締約国の領域内において行われたものについて管轄権を行使してはならない」と規定されている。
- See Jean-Marie Henckaerts and Louise Doswald-Beck, International Committee of the Red Cross, Customary International Humanitarian Law (Cambridge University Press, 2005), vol.I, pp.151-158. 米国、英国、フランスについては、長年にわたって主張してきた自国の立場に基づき、核兵器の使用が例外に当たると主張すると思われる。Id., pp.154-155〔なお、米国、英国、フランスによるジュネーブ諸条約第1追加議定書の核兵器使用への適用の否定の詳細につき、例えば、真山全「核兵器使用と戦争犯罪:戦争犯罪処罰に至るまでの国際法上の関門(上)(下)」広島市立大学広島平和研究所『戦争の非人道性:その裁きと戦後処理の諸問題』広島平和研究所ブックレットVol.5(2018年)所収、同書49-94頁(広島市立大学広島平和研究所のウェブサイト<https://www.peace.hiroshima-cu.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2018/03/bl05.pdf>で利用可能)、特に64-65頁を見よ〕.
- “At doom’s doorstep: It is 100 seconds to midnight,” 2022 Doomsday Clock Statement, Science and Security Board Bulletin of the Atomic Scientists, 20 January 2022〔available at <https://thebulletin.org/doomsday-clock/current-time/>. 世界終末時計は、本稿執筆時の2022年には終末まで残り100秒とされていたが、2023年にはロシアによるウクライナ侵攻に伴う核戦争のリスク増加等も考慮されて、残り90秒となった〕.
初出・機関誌『反核法律家』116・117(2023年合併)号
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