1945年8月6日と9日から62年余りの時が過ぎている。
あの凄惨な状況を生きのびた被爆者たちも高齢となっている。
被爆者たちの、「人間と核兵器は共存できない」、「核兵器の被害者は自分たちで終わりにして欲しい」、「核兵器を廃絶して欲しい」との痛切な願いにもかかわらず、いまだ世界には3万発近い核兵器が存在し、核兵器保有国は増加し、「使える核兵器」を開発している国もある。
核兵器が人間に何をもたらすかを知っていながら、核兵器を手放さないということは何を意味しているのであろうか。
核兵器保有国の指導者たちは、自らの利益と支配が脅かされるのであれば、人類の滅亡を選択するというのであろうか。
このような傲慢と野蛮を許すことはできない。
他方、広島・長崎の後、核兵器は使用されていない。
東京地方裁判所や国際司法裁判所は核兵器の使用は違法であるとしている。
非核地帯条約は世界に広がりつつあるし、核不拡散条約も存在する。
反核平和勢力は、この62年間、核兵器使用を制止してきたのである。
今、求められていることは、この成果を確認し、核兵器使用に止まらず、その開発、製造、実験、保有、移転などすべての局面においての違法性を確立することである。
「あるべき法」を「現実の法」にするために、新たな国際法規範の確立が求められているのである。
既に、コスタリカとマレーシア政府により、「モデル核兵器条約」が国連に提起されている。
各国政府は、この条約を制定し、締結し、批准することが求められている。
とりわけ、日本政府は、被爆国の政府として、その先頭に立つ責務がある。
各国政府の意思は、その国の民衆の意思によって規定され、日本政府の意思は私たちの意思によって規定される。それが国民主権国家、民主主義国家である。
核兵器廃絶条約の実現は、民衆の意思にかかっている。
私たちは、日本政府の意思を変え、核兵器保有国の意思を変更させなければならない。
私たちは、各国の民衆に、核兵器が人間に何をもたらすのか、その実相を伝えなければならない。
私たちは、核兵器の違法性を確認し、その廃絶を義務付ける国際条約の実現を推進しなくてはならない。
当協会は、核兵器廃絶条約の実現のために、すべての反核平和勢力と共同しながら、法律家団体としての特性を生かして活動することとする。
そのために、当面、以下の行動を取ることとする。
1.「モデル核兵器条約」の存在と内容を広く知らせる。
2.核兵器廃絶の法的・物理的可能性を、学際的に探求し、広く知らせる。
3.核兵器使用の非人道性・犯罪性を明らかにするために、米国政府の原爆投下責任を追及する。
4.その方法として、米国政府を被告とする「新原爆裁判」、米州機構人権委員会への「個人請願」を提起する。
5.核不拡散条約6条の誠実な核軍縮交渉の実現のためにあらゆる可能な行動を取る。