I 情勢
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ヒロシマ・ナガサキから63年。世界にはいまだ2万7千発もの核弾頭があるとされている。アメリカは、核兵器の先制使用戦略をとり、「使える核兵器」の開発を進め(核兵器の垂直拡散)、核脅迫をその世界戦略の基本としている。核兵器保有国が増加するだけではなく、非国家主体への核兵器の流出も懸念されている。核兵器の水平拡散の進行である。米国とNPT未加盟のインドとの間の原子力エネルギー協力を定める「米印原子力協定」は、核不拡散体制の根幹を脅かすものである。わが国は唯一の被爆国であるといいつつ、核兵器の有効性を前提とする「核抑止論」を採り、米国の「核の傘」に依存する安全保障政策を採り続けている。他方、国民保護計画においては、「核攻撃があった雨合羽をかぶって風上に逃げろ」などという戯言をいって、被爆者や被爆都市の大きな怒りを呼んでいる。核兵器の持つ非人道性や犯罪性は無視され、核兵器が国家安全保障の要諦だとされているのである。核兵器使用の危険性は高まっていることを忘れてはならない。
北朝鮮の核問題については、「6カ国協議」や「南北首脳会議」などの外交的手段によって、当面は、悲劇的な事態を生み出さない見通しとなっている。これらの外交手段による問題解決は、今後の進展を注視しなければならないことは当然としても、アフガニスタンやイラクで展開されている武力による問題解決と比較すれば大きな成功といえるであろう。しかしながら、国際政治においては、核兵器の使用とその威嚇がいまだ現実的有効性を持っていることを忘れてはならない。
国家間紛争を武力で解決しようとすれば、核兵器は必要で有効な手段となる。だからこそ、核兵器保有国は核の独占と不拡散に固執するし、軍事力に依存する国家は核兵器の開発と保有に走ることになる。核兵器の使用とその威嚇によって自国の意思を貫徹しながら、他国の、とりわけ自国に従属しない国の「核兵器による安全保障」も「民生用の核利用」も絶対に容認しないという米国のダブルスタンダードは、イランの核問題に見られるように、国際社会に不公正で危険な状況をもたらしている。
今必要なことは、「核不拡散」あるいは「核軍備管理」という核兵器保有国の優位性を固定する方法でなく、核兵器保有国に誠実な全面核軍縮交渉を求め、核兵器廃絶条約の実現することである。2010年にはNPT再検討会議が予定されているし、既に、コスタリカとマレーシアは、モデル核兵器廃絶条約改定版を提出している。ちなみに、日本外務省はその邦訳をまだしていない。
ところで、核戦争も核兵器廃絶もいずれも各国政府の選択で可能である。各国政府の姿勢を改めさせるためには、その国の民衆が核戦争阻止と核兵器廃絶の意思をもつことが必要であることはいうまでもない。ところが、各国の民衆の中には、原爆投下が戦争の早期終結や植民地支配からの早期解放のために必要であったと考える人たちがいる。また、核戦争は地震や火山の爆発や津波のような自然災害と同様なものと受け止めている人たちもいる。核兵器に依存する政府の政策を変更させるためには、その人たちに原爆投下が何をもたらしたのか、核兵器の使用が何をもたらすのかを知ってもらう必要があるといえよう。各国の民衆に原爆被害の悲惨な実相を知らせ、合わせて核兵器の使用とその威嚇は国際法に違反することを伝えなければならない。
政府の行為によって戦争の惨禍をもたらすことを許してはならないし、その政府は国民が直接的あるいは間接的に選出していることを忘れてはならない。民衆の力で核兵器のない世界をつくる必要性がいっそう高まっているといえよう。
2 アメリカの核戦略 核の先制使用戦略
ここで米国の核戦略について述べておきたい。米国の核戦略を知ることは、核戦争阻止と核兵器廃絶の課題の出発点だからである。
(1) 基本的スタンス
米国国防総省の「戦略抑止統合戦略の基本構想」(2004年)は次のようにいう。自由で独立した国であるアメリカの生き残りは、最優先の国益である。これは、起こりうる核戦争が極めて危険なものだと敵が見抜き、先制的に侵攻しようとする敵の望みを消してしまうような国防体制によって最もよく確保される。アメリカの核戦力は、いかなる敵も対抗することのできない徹底的破壊効果により敵に犠牲を強い、脅しによる戦略的抑止に重要な貢献をする。核兵器は、アメリカに有利な条件で戦争を迅速に終わらせる究極的手段を大統領に提供する。ここには、紛争解決のために武力を用いることにも、核兵器を使用することにも全くためらいがないことが見て取れる。「核抑止」にとどまらず戦争を迅速に終わらせるための核兵器使用が公然と語られているのである。米国は核兵器を究極的手段いわば「守護神」と位置づけているのである。
(2) 核兵器使用の想定
そして、核兵器がどのような場合に使用されるかについては次のように想定されている(アメリカ統合作戦本部「統合核作戦ドクトリン最終版・2005年」)。
(1)米軍・多国籍軍・同盟軍・一般市民に敵が大量破壊兵器を使用し、あるいは使用しようとしている場合
(2)敵の生物兵器の使用が差し迫っていて、核兵器だけがそれを安全に破壊する効果を挙げうる場合
(3)大量破壊兵器を貯蔵する地下深部の堅牢な壕や米国や同盟国への大量破壊兵器攻撃を行うための指揮・管制施設を攻撃する場合
(4)圧倒的に強力な敵の通常戦力に対抗する場合
(5)米国に有利な条件で迅速に戦争を終結させようとする場合
(6)米国や多国籍軍の作戦を確実に成功させようという場合
(7)敵を脅して大量破壊兵器を使用させないために、米国が核兵器を使うという意図と能力を誇示する場合
(8)米軍、多国籍軍、一般市民を相手に、敵が供給した大量破壊兵器を敵の代理者が使用するのに対抗する場合
ここでは、通常戦力に対抗するためや作戦を確実に成功させようという場合にも核兵器の先制使用が選択肢とされている。これらの想定ではいつ核兵器が使用されてもおかしくないといえよう。とりわけ「有利な条件で戦争を終結させようという場合」などというのは戦争の終結が見えているにもかかわらず核兵器を使用するというものであって、広島・長崎への原爆投下を彷彿とさせる想定ではないだろうか。米ソ時代の「相互確証破壊」から「一方的確証破壊」戦略に改定されたものといえよう。
(3) NPT(核不拡散条約)に対する態度
また、米国はNPT6条が定める核保有国による核軍縮の誠実な遂行についても極めて消極的である。2005年のNPT再検討会議での米国の姿勢は次のとおりである。前回(2000年)の再検討会議のときと時代は大きく変わった(01年9月11日事件による変化)。今、直面する課題は、テロリストやそれを支援する「ならず者国家」が核兵器や核技術を手に入れることを阻止することだ。NPT会議の唯一の課題は、そのために核技術の移転そのものに対する管理を強め、共同歩調をとることだ。核保有国の責任である核軍縮などは既に「モスクワ条約」で達成済みであり、軍縮努力を定めたいわゆる「6条問題」などというのはありもしない問題だ。ここでは、核拡散は問題にするけれど核軍縮などはやる必要はないとの姿勢が明らかである。NPTは核不拡散だけでなく核保有国に誠実な核軍縮交渉義務を課している(6条)がゆえに、かろうじてその不公正さを免れているものである。にもかかわらず、核超大国アメリカが核軍縮義務など「ありもしない問題だ」としてしまうことは、NPTの存在意義を失わせるものである。ここにも、アメリカの傲慢さが如実に現れている。「米印原子力協定」は、米国の世界戦略に合致すれば、核兵器の拡散すら容認するという姿勢の現れである。結局アメリカは、核軍縮などするつもりもないし、核兵器の先制使用を国家戦略にしているのである。そして、この米国の態度は、「核兵器は一国の安全保障に必要不可欠」との思考を世界に広めることとなったのである。
(4) 最近の新しい動き
ところで、米国においても、シュルツ元国務長官、ペリー元国防長官、キッシンジャー元国務長官、ナン前上院軍事委員会議長などが「核兵器のない世界を目指して」との論文を共同発表したり、民主党が「核兵器のない世界を追及し、具体的に行動する」との政策を発表している。これらの態度表明は、「歴史上開発された最悪の破壊兵器が、危険な者の手にはいる現実の可能性に直面している。」(共同論文)、「テロリズムの時代において、これらの兵器の危険性は新たな特徴を帯びている。」(民主党)というように「テロ対策」から導き出されているものであり、決してヒロシマ・ナガサキへの原爆投下を反省してのものではない。また、核兵器がなくとも米国の優位は確保できるという発想が背景にあることは容易に想像できるところである。しかしながら、「核兵器のない世界」を目指すという発言は歓迎に値するであろう。
3 わが国の姿勢
ところで、わが国は「日米同盟」を国家安全保障基本戦略としている。米国の核戦略に対するわが国政府の姿勢を確認しておこう。
(1)まず「平成17年度以降における防衛計画の大綱」(04年12月10日)にはこうある。核兵器の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存する。同時に核兵器のない世界を目指した現実的・漸進的な核軍縮・不拡散の取り組みにおいて積極的な役割を果すものとする。また、その他の大量破壊兵器やミサイルなどの運搬手段に関する軍縮及び拡散防止のための国際的な取り組みにも積極的な役割を果たしていく。ここでは、米国の「核抑止力」に依存することが明言され、核兵器のない世界を目指すがそれは「現実的・漸進的」であることとされている。米国は核兵器の先制使用を公言し、核軍縮などしようとしていないことは先に述べたとおりである。このような米国と同盟関係を結びながら「核兵器のない世界」を目指すことは背理であろう。日本政府は核廃絶を「当面する課題」ではなく「究極的課題」として先送りしているのである。米国と共同してのミサイル防衛構想も、相手国から見れば、自国の反撃を阻止した上での核攻撃態勢の構築と映るであろう。わが国政府が真剣に核兵器廃絶をしようとしているとは思われない。
(2)また、先に述べた米国の「統合作戦ドクトリン」について日本政府は、核兵器の使用はあってはならないとしつつも、「いかなる軍備も抑止力として機能している面が強い。」(小泉元首相)としており、「抑止力」の名で米国の核先制使用戦略を正当化している。この政府の姿勢は、北朝鮮の核実験に際して、麻生外相(当時)や中川自民党政調会長(当時)が日本の核武装についての議論も必要だと発言し、安倍首相(当時)がそれを容認していることと共通しているといえよう。久間元防衛大臣の「原爆投下はしょうがなかった」発言もこれらの文脈の中では本音の発言といえよう。結局わが国政府も、米国と同様に国家安全保障上核兵器は有効であり必要であるとの態度をとっているのである。
(3)そして、この態度は、07年5月の日米安全保障協議会における「米国の核戦力が日本の防衛と地域の安全保障を支える」という共同宣言に結実しているのである。核兵器の使用と威嚇に依存しながら保障すべき「我が国と周辺地域の安全」とは何かが根底から問われなければならない。
(4)「米印原子力協定」に対する日本政府の態度
米国はNPT未加盟のインドとの間で「原子力協定」を締結した。インドが核兵器保有国であり、そこに米国が核兵器の原材料や技術を提供することには、核兵器削減や廃絶に逆行することは明らかである。にもかかわらず、日本政府は、原子力供給国グループ(NSG)の臨時総会において、インドを例外扱いする決定を容認してしまった。日本政府の「核廃絶」の姿勢はリップサービスの域を出ていないといえよう。
4 核兵器廃絶をめざす新たな動き
(1) 「モデル核兵器条約」から「核兵器廃絶条約」へ
1997年4月。科学、法律、軍縮などの専門家たちは「モデル核兵器条約」を起草し、同年、コスタリカ政府によって国連事務総長に提出され、国連文書として配布された。この「モデル核兵器条約」は、多くの政府、学者、科学者、非政府組織に幅広く受け入れられた。1999年2月、米国の下院もモデル核兵器条約を歓迎し、「大統領に対して、核兵器条約の早期解決に至る多国間交渉を開始するよう強く求める」と決議している。
更に、2007年、コスタリカがマレーシアと共同して、2007年版「モデル核兵器条約」を公式作業文書として2010年NPT再検討会議準備委員会に提出している。その後、コスタリカとマレーシアはこのモデル条約を国連総会にも提出した。また、昨年の国連総会では、核兵器廃絶・核軍縮関連の20の決議が採択され、期限を区切って核廃絶の実現を迫るものもある。(なお、米国は、再検討会議準備委員会では、新型核兵器計画を「正当な誇るべき軍縮記録」とする作業文書を提出し、国連総会では、全ての決議に反対するという態度をとっている。)さらに本年10月24日には、潘国連事務総長が、「核兵器のない世界における国連と安全保障」と題する講演において、核軍縮に関する提案を行い、NPT加盟国とりわけ核保有国に対して、核軍縮に至る効果的措置につき交渉するというNPTの義務を履行するよう要請するとともに、コスタリカとマレーシアが提出したモデル条約が「良い出発点」になると述べている。
(2) 国際司法裁判所に再び判断を求める運動
IALANAは「核兵器廃絶のための世界法廷プロジェクト」を提唱している。1996年。国際司法裁判所(ICJ)は「核兵器の使用、その威嚇は一般的に国際人道法に違反する」、「核兵器保有国には、核軍縮交渉を誠実に行い完結させる義務がある」との勧告を行った。それから12年。核保有国はこの勧告的意見に従っていると言えないのではないか。それを再び国際司法裁判所に問おうという運動である。
(3) 2010年NPT再検討会議に向けての運動
2010年の再検討会議は、核兵器廃絶への展望を切り開く重要な機会である。前回2005年の会議は米国などの不誠実な態度によって、十分な成果を得ることはできなかった。その轍は踏みたくない。原水爆禁止世界大会の「国際会議宣言」は「われわれは、NPT再検討会議にいたる20ヶ月間、『核兵器のない世界』を共通の目標とする全世界的な共同キャンペーンを展開する。」とその決意を表明している。
II 活動報告(07年11月1日-08年10月31日)
1 理事会の開催 いずれも協会事務所(日付の右は主な議題)
(1) 08.2.22 コスタリカ報告(参加者14名)
(2) 08.3.27 「9条世界会議」への参加確認
(3) 08.4.23 「9条世界会議」参加準備
(4) 08.5.22 「9条世界会議」とバルガスとの交流報告
(5) 08.6.26 「新原爆裁判」の中間報告
(6) 08.7.24 「新原爆裁判」の提起について
(7) 08.9.4 「原爆症」認定裁判の到達点
(8) 08.10.16 総会準備
理事会は定期的に開催されたが、例外はあるが、参加者が少数でかつ固定化されている。何とかしなければならない。
2 IALANA理事会および「核廃絶と平和のための国際セミナー」への参加
1月16日から24日までの間、コスタリカの首都サン・ホセで開催された標記会議に、被爆者2名(片山文枝さん・山田玲子さん)や中澤正夫医師、横井久美子さん(歌手)を含め22名で参加。この会議の報告は機関誌「反核法律家」を参照のこと。
3 「9条世界会議」への参加
5月4日から6日の間、「9条世界会議法律家実行委員会」の構成員として、幕張メッセで開催された会議にブースでの展示での展示を行い、分科会などに参加。世界会議では「9条世界宣言」が採択された。
4 バルガス氏との交流
バルガス氏が来日した。1月のコスタリカ以降の再会である。同氏は、9条世界会議への参加、「新原爆裁判」についての意見交換、京都の相国寺(金閣寺・銀閣寺の上位寺)有馬頼底住職との会談など精力的にこなした。
5 「新原爆裁判」についての中間報告
「新原爆裁判」についての研究・検討がひと段落した。山田寿則・山本リリアン両氏の研究成果は機関誌「反核法律家」のとおりである。米国相手の裁判も米州機構人権委員会への「個人請願」についても多くの困難があることが確認された。米国の原爆投下責任を裁いて欲しいとの声は決して小さくない。しかしながら、「法的手段」には大きな限界が有ることも明らかになった。今後、この課題での取り組みをどうするか。関係諸団体との真剣な協議が求められている。
6 「原爆症認定裁判」の取組み
「原爆症認定裁判」は、全国各地の裁判所で、被爆者原告の勝訴が相次いだ(直近は、10月14日、千葉地裁)。政府(厚生労働大臣)は原爆症の認定基準(「審査の方針)の見直しを余儀なくされ、被爆の距離・入市被爆・癌などの疾病について、一定の改善が見られるようになった。しかしながら、政府は司法判断で敗訴している原告についても原爆症と認めないという態度を続けている。与党の中にも、被爆者が高齢化している中で、このまま未解決にしておくことは人道的にも問題であるという声が出ているが、政府の態度は頑なである。
7 核フォーラムの取組み
核フォーラムも定期的に開催されている(協会理事会の後の時間帯)。最も特筆すべきはその研究成果である「地球の生き残り・『解説』モデル核兵器条約」(日本評論社)の出版である。出版後も、山本リリアンさんの「米州機構人権委員会について」の報告、平山武久さんの「弾道ミサイル計画の実態と問題点」の報告、「核軍縮不拡散の法と政治」(浅田正彦他)の読書会などが継続されている。
8 「米印原子力協定」に反対する取組み
「米印原子力協定」が締結された。この協定は米国のダブルスタンダードの最悪の表れのひとつと評価できるが、当協会は、核兵器廃絶市民連絡会の構成メンバーとして反対の取組みをした。
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以上のとおり、07年総会において取組むこととされていた課題については一定の取組みが行われた。ただし、「大使館めぐり」は全く進展しなかった。今後どうするか検討しなければならない。
特記事項
日本反核法律家協会のホームページをリニューアルした。検索は「日本反核法律家協会」で。
III 来期の方針
1 基本方針「核兵器廃絶条約」の早期実現
情勢のところで述べたように、核兵器拡散と核兵器使用の危機が高まっている。他方、被爆者の高齢化がいっそう進むことになる。被爆者の「核兵器の被害者は自分たちだけにして欲しい。」、「生きているうちに核兵器の廃絶を」との強い想いに応えるために、核兵器廃絶のためのプロセスと核戦争阻止を、法律家としての専門性を生かして、関係団体・諸個人と協力しながら、具体的かつ現実的に行動していく。合わせて、被爆者の要求と権利の実現に尽力する。
そのためには、アメリカの核戦略を弾劾するだけではなく、それを凌駕する理論と運動と体制を構築しなければならない。核兵器に依拠する世界からの転換を求めて、陰りは見えているものの、「史上最強の帝国」といわれるアメリカを乗り越えなければならない。「核兵器による支配」から「法の支配」、更には「良心と理性による自治」、「あらゆる害意がなくなる状況」への展望を切り開くことが求められている。
背景にある問題意識は次のとおり。
(1) 核兵器の違法性を国際社会の有効な規範にすること
(2) 核抑止論の通用性を剥奪すること
(3) 憲法9条の改悪に反対し、非軍事平和思想を国際規範とすること
(4) 軍事力に頼らない国際社会の安全を確立すること
(5) 被爆者の具体的要求を実現すること
2 法律家としての特性を活かしながらの行動テーマ
(1)「新原爆裁判」についての最終態度を明確にする。
「新原爆裁判」についての検討・研究は終了した。困難を自覚しながらその道を進むのか、それとも以下に述べるような方針で進むのか。当協会だけで決定できるテーマではないとしても、当協会としても結論を出す時期に来ているといえよう。
(2)「モデル核兵器条約」の普及を図る。
「モデル核兵器条約」の存在や内容を知らない人々が圧倒的に多い現状にかんがみ、「地球の生き残り」の活用しながら、同条約の存在と内容を知らせる努力をする。「核兵器廃絶条約」の締結がひとつの目標であることを提示する。「地球の生き残り」を活用しよう。
(3)国際司法裁判所に再度の判断を求める運動に参加する。
IALANAはこの運動を提起している。米国相手の裁判や米州機構への「個人請願」が困難ということになれば、現実に行使できる「法的手段」は制約されてくる。IALANAとの連携が求められることになる。
(4)被爆者と米国元高官との意見交換会を企画する。
米国元高官たちが「核兵器のない世界」を提唱している。彼らが被爆の実相をどれだけ知っているかはともかくとして、彼らに被爆の実相を知ってもらうことは、彼らの主張を更に説得的なものとする可能性があるのではないだろうか。キッシンジャーよりもシュルツはどうかという意見がある。
(5)「原爆症認定裁判」の全面解決をめざす。
この裁判で、認定申請却下処分の取消は、各地の裁判所で相次いでいる。原告・運動体・弁護団の奮闘に敬意を表したい。しかしながら、全面解決に至ってはいないし、国家賠償請求については敗訴が続いている。現行被爆者援護法の下で解決しなければならない課題と、それを乗り越えなければならない課題が並存しているようである。少なくも、認定訴訟に立ち上がった原告の想いにこたえる必要はある。
(6)「東北アジア非核地帯」の実現のために努力する。
北朝鮮に対する「テロ支援国家」指定は解除された。6カ国協議がスムースに進展するかどうかの予断は許されない。いずれにしても、地球上でいまだ非核地帯がないこの地域での運動はますます必要になっている。
3 諸団体・諸個人との連帯と共同
(1)被爆者団体との共同
(2)反核・平和団体との共同
(3)2020ビジョン(平和市長会議などが推進する2020年までに核兵器をなくそうとする運動)への協力
(4)GPAAC(武力紛争に反対する地球キャンペーン)との共同
(5)改憲阻止運動への参加
4 IALANAの強化
IALANAは、核保有国がNPT6条の核軍縮交渉義務を誠実に果たしているかどうかを、国際司法裁判所に判断してもらうという企画を検討している。IALANAの強化が求められている。
5 会員の拡大と理事会の活性化
会員は400名を割り込んでいる。会員名簿の整備と会員の拡大が急務である。また、理事会参加メンバーも固定されている。魅力ある協会、参加したくなる理事会にしたい。
6 事務局体制の強化
協会の事務局は機関誌担当の中山さんだけである。専従とはいかないまでも、事務局スタッフを確保したい。
7 「反核法律家」のグレードアップ
今年は1月に発行した後、今日まで発行することができなかった。「反核法律家」は協会と会員を結ぶ唯一の絆といって過言ではない。その機関誌が定期発行できないということは全く嘆かわしいことである。けれども、その内容は充実していると自負したい。編集体制を確立しながら定期発刊を図りたい。
8 ホームページの充実
ホームページがリニューアルされたことは喜ばしいことである。しかしながら、その内容はまだまだこれから充実しなければならない。また、英語・スペイン語でのページも設置したい。そのためのスタッフも考えたい。
9 核フォーラムの充実
核フォーラムは定期的に開催され、よい勉強の機会になっている。文系の参加者だけではなく理系の参加者も確保したい。核問題を考える上で理系の参加者が不可欠であることは言うまでもないであろう。
10 財政規模を大きくする
IALANAの強化、スタッフの確保、ホームページの充実のためには、財政規模の拡大が必要となる。会員の拡大と合わせて、賛助会費の確保を提案したい。
IV 人事
日本反核法律家協会のホームページをリニューアルした。検索は「日本反核法律家協会」で。
V 会計報告
別紙会計報告のとおり