I 情勢
1.はじめに
09年総会は、後世の歴史家は、2009年を「大きな転換点」と位置づけるであろう、としている。これは、09年4月のオバマ大統領の「プラハ演説」と8月の「政権交代」を念頭に置いてのことであった。
オバマ大統領が「核兵器のない世界」の実現に言及したことを、核兵器問題については、米国大統領を「敵視」するのではなく、彼との「協働」が可能となったのである、と評価したのである。そして、民主党政権については、そのマニフェストで「北東アジア地域の非核化を目指す」、「2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議での主導的役割を果たす」としていたことや、社民党、国民新党との合意文書で「核軍縮・核兵器廃絶の先頭に立つ」とされていることを踏まえ、これらの文書を額面通りに受け止めれば、この政権との「協働」は可能というべきであろう、と記述したのである。
もちろん、これらの評価は、無留保ではなく、オバマ大統領については、その動機や具体的方策はとりあえず置くとして、としていたし、民主党政権についても、今後、この政権が、「核密約」・「非核三原則」・「米軍再編」・「被爆者援護」などの具体的政策でどのような取り組みを見せるのか。「核抑止論」や「北東アジア非核地帯」についてどのように対応するのか。私たちの要求をどこまで聞き入れるか。私たちの「建設的」提言と運動が求められるであろう、としていたところである。
この1年間のオバマ政権、民主党政権の動きは、私たちの期待に応えたであろうか。ここまでのところ、期待に応えるどころか、むしろ、逆行しているというべきであろう。その端的な表れが、9月に行われた米国の「未臨界核実験」の再開であり、8月6日の広島で行われた菅首相の米国の「核抑止論」は必要との発言である。
オバマ大統領は、世界から核兵器がなくなるまで米国は核兵器を保有する。核兵器の実効性を確保するために実験を行う、という姿勢である。その米国の核抑止力に依存し、「日米同盟」を強化するというのが日本政府である。
オバマ大統領は、ノーベル平和賞の受賞演説で、「正義の戦争」をいい、現実にアフガニスタンでの武力の行使を継続し、民主党政権は、米軍基地の移転、縮小、廃止のプログラムは持っていない。
私たちは、「核兵器のない世界」を口にしながら展開される現実政治を、過不足なく、リアルに把握しなければならない。
2.「核兵器のない世界」は近づいたか
(1)昨年総会よりも少しさかのぼって、オバマ大統領のプラハ演説以降の核廃絶関連の動きを概観しておく。
・2009年7月9日。G8ラクイラ・サミットで「不拡散に関する声明」が発表された。NPTに基づいて核兵器のない世界へ向けた諸条件をつくることを約束。
・同年9月24日。国連安全保障理事会首脳級特別会合で「核軍縮・核不拡散に関する決議」(1887号)が採択された。NPT締約国に対し、「核軍備の縮小に関する効果的措置について、および厳重かつ効果的な管理のもとにおける全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を呼びかける」と明記。
・2010年1月27日。オバマ大統領一般教書演説。「米国の国民にとって最も危険な脅威に直面している」、「核兵器の拡散を抑止し、核兵器のない世界を追求する戦略をとる」。
・同年2月1日。米国、「4年ごとの国防見直し」(QDR)公表。ⅰイラク・アフガニスタンにおける勝利。ⅱ米国への直接攻撃からの防衛、潜在的敵国の抑止、ⅲ抑止が失敗した場合の行動。ⅳ全志願兵制の維持と強化などを戦略的優先課題としている。アジア・太平洋では、在日米軍の長期的プレゼンスを保証し、グァムを地域のハブにする二国間の再編ロードマップの合意を実施するとしている。
・同年4月6日。米国、「核態勢の見直し」(NPR)を公表。ⅰ核拡散とテロを防止する。ⅱ国防戦略における核兵器の役割を低下する。ⅲ縮小した核戦力レベルで抑止と安定を維持する。ⅳ地域における抑止力を強化し、同盟国を安心させる。ⅴ安全で、確実有効な核兵器備蓄を維持する、などとしている。
・同年4月8日。米ロ、「新START」条約署名。核弾頭の上限、運搬手段の上限、発射基の上限などについて合意。
・同年4月12日。核安全保障サミット開幕。テロ組織が核兵器を入手しないよう、4年以内に核物質の管理・安全性を強化する方策の確立について協議。
・同年5月3日からNPT再検討会議開幕。5月28日、「最終合意文書」採択。
・同年8月6日。菅首相は、「米国の核抑止論は必要」と公言。
・同年9が。米国は「未臨界核実験」を再開。
(2)最終合意文書の評価
上記のような経緯からして、NPT再検討会議の最終合意文書は、核兵器廃絶をめぐる情勢の到達点と課題を明らかにするものといえよう。この最終合意文書をどのように評価するか。私たちは「核兵器のない世界」に近付いたのか。これが検討課題である。結論的にいえば、「前進はしたが、ゴールは遠い」ということである。少し、詳しく述べておこう。
私たちは、09年総会の方針に基づいて、NPT再検討会議に向けて「意見書」を用意した。それは、次の5項目である。
ⅰ)2020年までに核兵器を廃絶すること。
ⅱ)「核兵器禁止条約」に向けての交渉を即時に開始すること。
ⅲ)核兵器の使用及び使用の威嚇の違法性を再確認すること。
ⅳ)非核兵器国への核兵器使用を禁止すること。
ⅴ)「非核兵器地帯」を拡大することなどである。
この私たちの「意見書」に最終文書はどこまでこたえたのか、それが問題である。
ⅰ)「核兵器のない世界」の実現に期限を設けることについて
最終文書は、「核兵器のない世界」を実現、維持する上で必要な枠組みを確立する必要性を強調し、国連事務総長が提案する「核兵器禁止条約」についても留意している。加えて、「核兵器国は、国際の安定と平和や、減じられることなく強化された安全を促進する形で、2000年再検討会議の最終文書に盛り込まれた核軍縮を加速させることを誓約する」としている。
しかしながら、これらの核軍縮の履行状況については、2014年の準備委員会に報告するように求められ、2015年の再検討会議で次の措置を検討するとされているだけである。要するに、「核兵器禁止条約」に言及し、核軍縮の促進も誓約されているが、「核兵器禁止条約」の交渉開始に直接触れられているわけではないし、核軍縮の履行も報告事項であり、次なる措置は次回以降に先送りされているのである。
ⅱ)「核兵器禁止条約」について
「核兵器禁止条約」(Nuclear Weapon Convention=NWC)は、核政策法律家委員などが提唱したモデル核兵器条約を基にして、コスタリカとマレーシアの政府が国連に提起している条約案である(1997年に提出、2007年に改定版)。この点についての最終文書の態度は、「確固たる検証システムによって裏打ちされた、核兵器禁止条約もしくは相互に補強しあう別々の条約の枠組みの合意を検討すべきであるとの国連事務総長の軍縮提案に留意する」などとしているが、いつまでに交渉を開始するかということについては触れていない。核兵器国の抵抗は頑なだったのである。けれども、ここでは、「核兵器禁止条約」について留意されたことは、前進として評価しておきたい。
ⅲ) 核兵器の使用と使用の威嚇の違法性再確認について
核兵器の使用及び使用の威嚇は、一般的に、国際法に違反する。ただし、国家存亡の危機など極端な自衛の状況においては、合法とも違法とも言えない、というのが国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見である。けれども、私たちは、勧告的意見の「ただし書き」は間違いだと考えている。自衛の手段といえども、無差別かつ残虐な兵器の使用は国際人道法に違反すると考えるからである。
このことについて注目されるのは、最終文書が、「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念を表明し、全ての加盟国がいかなる時も、国際人道法を含め、適用される国際法を遵守する必要性を再確認する」としていることである。この文言の持つ意味は大きい。核兵器が非人道的兵器であり、その使用は国際人道法に違反することを含意しているからである。
ⅳ) 非核兵器国に対する核兵器使用の禁止について
非核兵器国に対して核兵器を使用しないという約束を「消極的安全保証」という。核兵器を先制使用しないとするのが「先制不使用」であり、核攻撃に対する反撃としてのみ核兵器を使用するというのが「唯一目的」といわれるものである。これらのことについての最終文書の態度は次のとおりである。まず、消極的安全保証については「核兵器の完全廃棄が核兵器使用を防止する唯一の保証であることを再確認し、核不拡散体制を強化しうる、明確かつ法的拘束力のある安全の保証を核兵器国から供与されることに対する非核兵器国の正当な関心を再確認する」としている。
また、「NPT加盟国である非核兵器国に対し、核兵器の使用を行わないという 条件付きあるいは無条件の安全の保証を供与するという、核兵器国の一方的宣言に留意するとした安保理決議に留意する」としている。何とも持って回った言い方であるが、非核兵器国の「正当な関心」といい、「核兵器国の一方的宣言」について触れていることは、この問題について後退はしていないというところであろう。
3.「核兵器のない世界」への道程
以上みたとおり、オバマ大統領の「核兵器のない世界」の実現に努力するとの演説以降、「核兵器の安全保障上、または政治的利益よりも人類に対する重大な脅威が上回るというコンセンサス」が拡大しつつある。これは、私たちにとっても好ましい変化である。しかしながら、事態は私たちが求めるようなスピードで動いているわけでもない。むしろ、米国の「未臨界核実験」の再開や、菅首相の「核抑止力必要論」、「日印原子力協定」の促進など、明らかな逆行現象も起きている。
NPTの最終文書も「核兵器のない世界」のための「法的枠組み」に触れてはいるが、それをいつまでにどのようなプロセスで実現するかについては不透明である。今年度の国連総会でも、日本政府は、マレーシア政府の核兵器条約禁止条約早期交渉開始の決議案に対する棄権の態度を変えようとしていない。
その不透明さと動きの鈍さをもたらしているのは核兵器国の牢固たる抵抗である。その基本的姿勢は、「核兵器で自国の安全を保障する」というものである。「自国に対する武力攻撃をすれば、核兵器による反撃を受け、貴国は壊滅的打撃を受けるぞ。武力攻撃など考えてはならない。」という核抑止論である。自国の安全保障を最高の価値とし、そのためには核兵器の使用を選択肢とするという思考と行動が、「核兵器のない世界」の実現を妨害しているのである。
この「核抑止論」は、「唯一の被爆国」の政府を自認する我が国政府も採用している。民主党政権の誕生により変化が期待された核政策も、結局何らの転換もなされたかったのである。菅首相は、8月6日の広島で、「核抑止力は我が国にとって引き続き必要である」と明言したのである。核兵器の非人道性を無視したこの発言が、被爆者からの猛反発を受けたことは当然であろう。廃棄すべき核兵器で自国の安全を保障するというこの倒錯した理論の突破が求められているのである。
この「理論」を乗り越える手かがりが、NPT再検討会議の最終文書の中にも示されている。先に引用した、「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念を表明し、全ての加盟国がいかなる時も、国際人道法を含め、適用される国際法を遵守する必要性を再確認する。」という部分である。たとえ、「正義の戦争」のためであっても、遵守されるべき法的規範が存在することが述べられているからである。また戦争を抑止するために、核兵器以外の代替手段が求められるべきであり、そのための創意工夫が必要とされているのである。地域的安全保障体制の確立である。民主党もそのマニフェストで、北東アジア非核地帯条約に触れているである。
「核兵器のない世界」に向けての道程は、核兵器依存勢力との激しい攻防の中で進行するであろう。オバマ大大統領は、自分が生きている間には実現できないかもしれないと、再度言ってしまった。けれども、そんな悠長なことを言っている場合ではないであろう。広島、長崎の被爆者たちに残されている時間は決して長くはない。
私たちには、「核兵器と人類は共存できない」という命題を堅持しつつ、核兵器依存勢力と対抗し、「核兵器のない世界」実現のために、一層の奮闘が求められているのである。
II 活動報告
1.今季の活動報告で特筆されるべきことは、NPT再検討会議に際しての代表派遣である。当協会は、他の法律家団体や原爆症弁護団に働きかけて、法律家代表団を組織し、ニューヨークで活動した。代表団は27名の構成。「『核兵器のない世界』の実現のために」と題する日本の法律家の提言を作成してNPT事務局に提出。「被爆者と寄り添った弁護士のたたかい」(佐々木猛也)、「被爆地長崎の法律家としての被爆者援護」(中村尚達)、「原爆症認定集団訴訟が明らかにした事実」(宮原哲朗)、「原爆被害からみた核兵器とその廃絶に向けての提案」(内藤雅義)、「日本における『核兵器条約』実現に向けての取り組み」(山田寿則)、「核密約について」(井上正信)、「北朝鮮とどのように向き合うか」(大久保賢一)、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会への働きかけ方について」(内藤雅義)、「9条の世界化と核兵器廃絶」(笹本潤)の9本の論考を意見書として作成(英文も作成)。これらはいずれも、「反核法律家」68号(2010年4月15日付)に搭載されている。加えて、日本文と英文のチラシを5000枚作成し、ニューヨークの街頭で、浴衣姿の代表団を先頭に、配布。(代表団の皆さんご苦労様でした。また、寄せられたカンパは34名275,000円でした。ご支援ご協力いただいた方、本当にありがとうございました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。)
2.COLAPⅤへの参加 9月18日、19日、フィリピンのマニラで開催されたアジア太平洋法律家会議に参加した。
3.理事会の開催(参加者にはアシスタント及びゲストを含む)
(1) 2009年12月15日 参加者8名
(2) 2010年1月29日 参加者8名
(3) 2010年2月25日 参加者8名
(4) 2010年3月24日 参加者9名
(5) 2010年5月27日 参加者16名(NPT報告)
(6) 2010年6月24日 参加者5名
(7) 2010年7月29日 参加者6名
(8) 2010年9月19日 参加者6名
(9) 2010年10月14日 参加者9名
4.核フォーラム
1997年春に発足した核兵器問題フォーラム(略称:核フォーラム)は、核兵器に関する諸問題について、自由な立場から議論する場として、8月を除き、ほぼ毎月開催されてきている。2009年度中は、日本の核軍縮・不拡散研究における最前線の議論を知るという観点から、浅田正彦・戸崎洋史編『核軍縮不拡散の法と政治 : 黒澤満先生退職記念』(信山社、2008年)を順次読み進めた。2010年度からは、急速に変化する核軍縮の動きをフォローすべく、以下の話題がとりあげられている。モデル核兵器条約、米ロのSTART後継条約交渉、再び国際司法裁判所の勧告的意見を求めるための法的論拠をまとめた、核政策法律家委員会などによる「法的覚書」、ドイツIALANAが刊行した核軍縮の法的義務に関する書籍などである。また、北朝鮮問題を考えるとの観点から、朝鮮大学校非常勤講師の高演義氏を招いて話を伺った。
毎回、十名前後の参加者を得て、活発な議論が展開されているが、更なる話題提供者および参加者の増加が望まれる。
5.原爆症認定裁判
当協会の会員は、原爆症認定裁判に積極的に関与してきた。原爆症認定裁判は、全国の裁判所で連続的に勝利し、その成果と運動を背景に、麻生総理(当時)との「確認書」の策定、それに引き続く「基金法」の制定などの成果を獲得してきた。
しかしながら、現在も、疾病の放射線起因性にこだわる厚生労働省は、被爆者に対する国家補償に基づく対応はしようとしていない。原爆症認定制度の抜本的改善が求められている。
6.核兵器廃絶市民NGO連絡会
核兵器廃絶市民NGO連絡会は、ICNNDへの提言から、外務省との意見交換会へとその活動を進めてきている。「核兵器廃絶日本政策評議会」も発足している。
III 活動方針
A 基本的姿勢
当協会の目的は、ⅰ核兵器の廃絶、ⅱ核戦争の阻止、ⅲ被爆者援護である。この3目標の実現のために奮闘しなければならない。今こそ、「核兵器のない世界」の実現の絶好の機会として、国内外での活動を強化する。とりわけ、「核兵器のない世界」を政治的スローガンとするだけではなく、「法的枠組み」の確立に尽力する必要がある。法的枠組みとして、ⅰ核兵器禁止条約、ⅱ東北アジア非核地帯条約、ⅲ非核法の制定が求められている。核兵器禁止条約は国際条約、東北アジア非核地帯条約は地域内条約、非核法は国内法である。これらは相互に関連しているが、不可分のものではない。従って、同時に実現しなければならないという必然性はない。
非核法の制定は、わが国の核政策を大きく転換することになるし、北東アジア非核地帯の実現はこの地域の平和と安全に大きく寄与するであろう。前者は後者を促迫し、後者も同様の機能を果たすことになる。我が国の非核法は周辺諸国の核兵器への依存理由を消滅させ、北東アジアの非核化は「核の傘」を不必要とするからである。核兵器禁止条約に時間がかかるとしても、非核法の制定や東北アジア非核地帯の実現は先行できるのである。
そのためには、「核抑止論」の破綻を、理論的にも、実践的にも明らかにしなければならない。
加えて、核兵器を廃絶するためには、戦争そのものの廃絶を展望する必要があり、日本国憲法9条の世界化を図る必要があることを認識しなければならない。
法律家団体としての役割は、従来にも増して、大きくなっていると言うべきである。
B 具体的目標
1.非核法の制定を目指す
我が国政府は、非核法は不要であるとしている。「非核3原則」があるからという理由である。他方、政府は米国政府との間で「密約」を取り結んできた。米国の核兵器が我が国の領土、領海、領空に「持ち込まれている」可能性は高いのである。結局、政府は「非核3原則は国是」などと言いながら、それを無視してきたのである。この政府の欺瞞的態度を是正しなければならない。そして、現在も、我が国政府は、米国の手を縛ることは我が国の安全保障上得策ではないとの姿勢を取っている。この姿勢を転換するためには、「持ち込まない」との原則を法規範としなければならないのである。
これまで「非核法」の提案がなされたことはあるが、いまだ実現していない。現在、被団協は「非核法」制定の署名運動に取り組み、日弁連も「非核法」の検討に取り掛かっている。当協会も、その動きに呼応しなければならない。
2.東北アジア非核地帯条約の実現を目指す
先の、NPT再検討会議の最終文書も非核兵器地帯の有効性を承認している。既に、東北アジア非核地帯条約のモデル案も提示されている。与党民主党議員の中にも、この条約の実現を推進しようとする勢力も存在する。政府も、「非核兵器地帯の設置と強化も、核リスク低減に貢献する」(前原外相演説)としている。この地域の非核化について、アプローチの違いはあるものの、少なくも、表立って無用とする言説はないようである。
北朝鮮や中国との対応を巡って、その実現の時期や方法についての議論の錯綜は避けられないかとしても、先送りされるべきテーマではない。
3.核兵器禁止条約の実現に尽力する。
パンキムン国連事務総長は、「核兵器禁止条約」の実現を唱導している。先の合意文書もそのことに「留意する」としている。「核兵器禁止条約」の交渉開始を求める政府も数からすれば圧倒的多数である。しかしながら、核兵器国は消極的であり、我が国政府も賛成はしていない。むしろ、「『核兵器のない世界』に向けた移行期戦略として『核リスクの低い世界』に向かうことを提案する」(前原外相演説)として、早期の交渉開始を妨害しているのである。
当協会は、モデル核兵器条約の翻訳、普及などの努力をしてきたが、「核兵器禁止条約」の実現のために、世界と日本の反核平和勢力との共同が、一層求められている。
C 具体的行動
前記具体的目標を実現するために次の行動をとる。
1.被爆の実相を明らかにし、核兵器廃絶の原点として重視する。
2.「原爆症認定裁判」を含め、被爆者のたたかいを支援する。
3.2010年NPT再検討会議の到達点を確認し、それを後退させず前進させる。
4.日本政府の政策の限界を暴露し、「核抑止論」を乗り越えて、政策転換を図る。
5.反核平和団体との連携を強化する。
6.日弁連の核兵器廃絶に向けた動きをサポートする。
7.IALANAとの連携を強化する。
8.「核フォーラム」を充実する。
9.組織強化を図る。会員・賛助会員の拡大と財政の強化。理事会の充実。
10.情報の発信を強化する。メーリングリストを拡充する。ホームページの充実。「反核法律家」や「ニュース」の定期発行。