第2回米朝首脳会談に関する会長声明
2019年4月1日
日本反核法律家協会
会長 佐々木猛也
2月27日・28日、ハノイで行われたドナルド・トランプ米国大統領と金正恩朝鮮民主主義人民共和国国務委員長との第2回会談についての当協会の見解は、下記のとおりである。
記
1.トランプ大統領と金委員長の会談では、昨年の「共同声明」のような公式文書は採択されなかった。何らかの文書が作成されると期待していた当協会としては、いささか残念ではある。
2.しかしながら、トランプ大統領は「非常に生産的な2日間だった」、「彼らのビジョンと私たちのものとが完全に一致するわけではない。しかしそれは一年前よりも近づいている」としており、他方、労働新聞は「両首脳は、生産的な対話をつないでいく」、「新しい対面を約束しながら別れの挨拶をした」としているように、決定的な亀裂が生じているものではない。確かに、協議打ち切りやミサイル発射や核実験再開といった言葉が上がって入る。しかし、米韓の大規模軍事演習は停止されているし、いまのところ、長距離ロケット発射や核実験も行われないとされている。米朝間の信頼関係が失われたとは言えない。
3.調印に至らなかった原因は、北朝鮮が、核実験とミサイル発射を永久に中止することの文書化、寧辺核施設の米国専門家の立会いの下での完全廃棄などとの引き換えに、国連制裁決議の一部解除(全面的解除を求めたとの報道もあるが、北朝鮮外相は一部としている)を提案したが、米国が北朝鮮の核兵器廃絶プロセスに同意しなかったからのようである。折り合わない論点が見えたこと自体、会談の成果といえよう。
4.北朝鮮李外相は、「完全な非核化には必ずこのような最初の段階の工程が不可避である」としている。ポンペオ国務長官は「私は楽観視している。チームにはとても複雑な仕事だと最初から言ってきた。これには時間がかかる」としている。66年もの間、軍事的対立を継続している両国が、1回や2回の会談で完全な「雪解け」を迎えられると考える方が楽観的に過ぎるであろう。今後、実務者レベルの交渉が継続され、双方の一致点とタイムスケジュールが策定されることを期待したい。
5.当協会は、両当事国が、国連憲章2条3項の紛争の平和的解決の原則及び核兵器の使用や威嚇は国際法に違反するとしている国際司法裁判所の勧告的意見(1996年7月)に則って行動すること、更には、核兵器禁止条約(2017年7月採択)を踏まえて、朝鮮半島の非核化を進めることを要望する。
6.また、日本政府は、トランプ大統領が「安易な妥協をせず良かった」などとしているが、これは、朝鮮半島の平和や非核化を主体的に進めようともしない、百害あって一利なしの態度といえよう。北朝鮮を「国家承認しない」などという態度を改め、圧力一辺倒ではなく、対話による解決へと転換すべきである。
7.私たちは、この米朝首脳会談の足踏みにめげることなく、市民社会の一員として、朝鮮半島の平和と非核化のために一層努力する所存である。
以上