1 日本反核法律家協会は「人類と核は共存できない」との立場から、唯一の戦争被爆国である日本の法律家として、「核兵器も戦争もない世界」の実現をめざしている。
日本国憲法9条は、1項において「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」として戦争放棄を定めている。2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍そのほかの戦力は、これを保持しない」として戦力の不保持を定め、「国の交戦権は、これを認めない」として交戦権の否認を定めている。
日本国憲法9条2項が定める戦力の不保持や交戦権の否認は、「核の時代」において、戦争の放棄に止まらず、戦争の手段である戦力や交戦権を放棄することで、「核兵器も戦争もない世界」の実現を目指す規定である。
2 この規定が設けられた背景には、1945年8月6日の広島・9日の長崎への原爆投下がある。1946年8月、幣原喜重郎大臣は、9条2項の戦力放棄について、「原子爆弾が発見された」ので、「文明が速やかに戦争を全滅しなければ、戦争が文明をまず全滅することになる」、「日本は、徹底的な平和運動の先頭に立って、一つの大きな旗を担いで進んで行く。戦争を放棄すると云うことになると一切の軍備は不要になります」と答弁している。当時の日本政府は、「核の時代」において戦争で物事を解決しようとすれば「文明が全滅する」と予見し、戦力の放棄まで踏み込んだのである。ここに、日本国憲法9条2項の先駆性と普遍性が存在する。
3 ところで、意図的であれその他の理由であれ核兵器が使用されることになれば、「壊滅的な人道上の帰結」(人類の生存に重大な影響を与える事態・核兵器禁止条約前文)がもたらされることになる。それを避けるためには核兵器の廃絶が最も有効である。にもかかわらず、核兵器は約15,000発存在している。
その理由は、武力で物事を解決しようとすれば、核兵器は「最終兵器」であるがゆえに、それを手放すことができないからである。自衛のためであれ、正義の実現のためであれ、武力の行使と戦力の保持を容認する限り、核兵器への依存は続くのである。そして、核兵器が存在する限り、真の平和と安全は確保できない。
4 こうして、核兵器の廃絶を求めるのであれば、一切の武力の行使を否定し、そのための戦力も放棄することが必要になるのである。私たちは,全世界に対して,武力の行使の禁止に止まらず、「最終兵器」である核兵器廃絶はもとより、日本国憲法9条2項のように戦力と交戦権の放棄を目指すべきことを提案する。