私たち反核法律家協会は、広島・長崎の被爆から75周年、核不拡散条約(NPT)発効から50周年にあたって、下記のように決意を新たにする。
1 去る3月10日、国連安保理常任理事国は、NPT体制の意義は承認しつつも、核兵器廃絶を「究極の目標」とするNPT発効50年に関する声明を発している。他方、5月19日にはマレーシアなど核軍縮を推進する17カ国は、「NPTは、核兵器がもたらす人類の生存を脅かす脅威を取り除くための国際的な努力の支え」とする共同コミュニケを発している。
私たちは、これらの見解と同様に、NPT体制は核兵器廃絶のために重要な役割を果たしてきたと評価しているし、これからもその役割は重要であると考えている。ただし、核兵器廃絶は、核兵器保有国がいうような「究極の目標」ではなく「喫緊の課題」である。
2 ところで、これらの声明は、核兵器禁止条約前文が指摘する「いかなる核兵器の使用も国際人道法の原則および規則に違反していること」については言及していない。
1946年1月の国連総会の最初の決議は、核兵器の廃絶を求めるものであったし、1996年の「核兵器の使用あるいは威嚇は、国際人道法の原則に一般的に反する」との国際司法裁判所の勧告的意見は周知のところである。そして、2018年、国連自由権規約委員会は「核兵器の使用あるいは使用するとの威嚇は、生命に対する権利の尊重と相容れず、国際法に基づく犯罪に相当しうる」としている。核兵器の使用や威嚇は、武力紛争に適用される国際人道法だけではなく、国際人権法にも違反するとの見解が示されているのである。
私たちは、核兵器はあらゆる法規範と相容れないと考える。
3 現在、世界は新型コロナパンデミックの最中にあるが、核兵器国間の核軍拡競争が激化し、世界「終末時計」が人類滅亡まで残り100秒とするほどに核兵器使用の危険性が高まっている。新戦略兵器削減条約(新START)延長をめぐる交渉も難航している。核兵器禁止条約の発効は見込まれているが、核兵器国が核軍縮交渉に踏み出す兆候はない。
2000年NPT再検討会議での「核兵器の全面的廃絶を達成するという明確な約束」や2010年NPT再検討会議での「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道上の結末をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての加盟国がいかなる時も、国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する」などの合意は反故にされようとしている
4 私たちは、唯一の戦争被爆国の法律家として、「私たちを最後にして欲しい」と願う被爆者をはじめとする核兵器廃絶と平和を希求する市民社会と協調して、NPT体制の維持・継続、核兵器禁止条約の早期発効、新STARTの延長、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を求め、「核兵器も戦争もない世界」を実現するために引き続き努力することを決意する。