議長および皆さん。
私は、核兵器の禁止と廃絶および被爆者支援を目的と国際反核法律家協会の日本支部である日本反核法律家協会の井上八香です。当会を代表して発言させていただき光栄です。
提案の趣旨
私たちは、最終文書に次の約束を盛り込むことを提案します。
条約6条及び過去の再検討会議でなされた関連の合意、並びに、国際司法裁判所(ICJ)1996年の勧告的意見、及びモデル核兵器条約に留意して、
本再検討会議が核軍拡競争の停止、核軍縮、並びに全面完全軍縮に向けての「法的枠組み」の確立を開始することに合意する。
提案の理由
提案の理由は次の通りです。
2000年の再検討会議は「核兵器国は保有核兵器の全面完全軍縮を達成するという明確な約束」を採択しました。2010年の会議は「すべてにとって安全な世界を追求し、核兵器のない世界の平和と安全を達成すること」を決意し、「核兵器のない世界を実現し、維持するうえで必要な枠組みを確立すべく、すべての加盟国が特別な努力を払う」ことを確認しました。
しかしながら、核兵器禁止条約は発効していますが、核兵器国が参加する「核兵器のない世界を実現し、維持するうえで必要な枠組み」は作られていません。
この状況は改善されなければなりません。
NPT6条は、各締約国に「核軍備の縮小に関する効果的な措置について,誠実に交渉を行う」ことなどを義務付けています。また、1996年、ICJは全員一致でこの義務は二重の義務、すなわち、あらゆる点での核軍縮に導く交渉を遂行し、かつ「完結させる」義務としています。したがって、2010年の再検討会議が認識したように、6条は「核兵器のない世界の達成と維持」を命じているのです。そのために「必要な枠組み」の検討は当然のことです。とりわけ、この義務は核兵器国を中心にして果たすべきものであることを強調しておきます。
関連して、1997年にコスタリカによって、2007年に再びコスタリカとマレーシアによって配布された「モデル核兵器条約」があります。この条約案は、核兵器の使用・威嚇の禁止にとどまらず、開発、実験、生産、貯蔵、移譲を禁止し、条約発効後一定の期間で関連する核物質や核施設も含めてそれらの廃棄を義務付けています。国連事務総長は2008年5項目の軍縮提案において、このモデル条約は完全な核軍縮に向けた交渉の「良い出発点」を提供するものと評価しました。今まさにこれが「核兵器のない世界を実現し、維持するための枠組み」の議論の一部となるべきでしょう。
最後に、私は、1945年8月6日と9日、米国による原爆投下によって「容認しえない苦痛と被害」を受けた被爆者の想いに触れることとします。被爆者は「私たちの生きている間に核兵器をなくして欲しい」と心から訴えています。彼や彼女たちに残された時間は決して長くありません。締約国にはその願いにこたえる義務があります。
以上が提案の理由です。ご清聴ありがとうございました。
本稿は、2022年1月4日に開会が予定されていた第10回NPT再検討会議におけるNGOのビデオ発言のために用意されたものである。コロナウイルスの感染拡大により会議は再び延期され、発言の機会は見送られることとなったが、ご協力いただいた方々に感謝申し上げたい。