89か国(締約国56か国、オブザーバー33か国)と9の国際組織、122のNGO団体が参加した核兵器禁止条約(TPNW)第2回締約国会合(2MSP)は、2023年12月1日、「宣言」及び5つの「決定」を採択して閉幕した。
当協会は、2MSPにおける取組みと「宣言」及び「決定」を歓迎し、全世界から核兵器を廃絶するため、日本政府に対して改めてTPNWへの早期参加を求める。
「宣言」では、「核兵器の影響に関する証拠に基づいた政策立案が、核兵器の廃絶に関する全ての決定および行動の中心になければならない」として、「証拠(または根拠)に基づく政策立案」(EBPM)による核政策の評価を行うこととし、「核兵器による壊滅的な人道上の結末への懸念」を再確認するとともに、核リスクが「とりわけ悪化している」として、これを強調し、核抑止論に基づく安全保障政策は「全人類の正当な安全保障上の利益に反」するもので「危険で、誤った、受け入れられない安全保障へのアプローチ」であると厳しく批判した。その上で、核不拡散条約(NPT)第6条に基づく核軍縮交渉の義務が果たされていないことを指摘し、TPNWの締約国がTPNWとともにNPTその他の核軍縮・不拡散レジームを前進・強化させる役割を担って具体的取組みを進めるために、すべての国と共同する意思があることを表明した。また、第1回締約国会合(1MSP)で採択されたウィーン行動計画の実現に断固として尽力することも確認されている。
他方、「決定」では、第6条(被害者に対する援助及び環境の修復)及び第7条(国際的な協力及び援助)に基づく自発的報告のガイドラインやテーマ別討論の実施等、条約の実行に関する事項のほか、核被害者に対する援助及び環境の修復のための国際信託基金の実現可能性とガイドラインを作業部会で集中的に議論し、第3回締約国会合(3MSP)において勧告を提出すること、「核兵器禁止条約に基づく諸国の安全保障上の懸念に関する協議プロセス」確立のため、締約国・署名国や科学諮問グループ、赤十字国際委員会(ICRC)、核廃絶国際キャンペーン(ICAN)その他の利害関係者及び専門家の関与を得て協議を行い、3MSPにその議論の内容と勧告を含む報告書を提出すること等が定められている。
当協会は、上記のような2MSPの成果を次につなげることで、核兵器廃絶の道を歩むことを求めるものである。
2MSPの「宣言」及び「決定」で示された成果はいずれも重要であり、TPNWが核廃絶への道を着実に進めていることを証している。とりわけ、核兵器による被害者救済のための国際信託基金の検討は、実現可能性を含めてのものではあるものの、被害者に対する援助の具体化を目指すものであり、2MSPにオブザーバー参加したドイツが被害者に対する援助や環境の修復に関わっていくための手段や展望を模索していると述べたように、現時点でTPNWに参加していない国々とも共同して取り組むことができる課題である。被害者に対する援助及び環境の修復は、核兵器が絶対に許容されない非人道的兵器であることを示し、廃絶するための重要な取り組みである。
また、安全保障上の懸念に関する協議プロセスでは、科学的根拠に基づき核抑止による安全保障を克服するための議論を深めることが想定される。日本をはじめ、多くの国のTPNWへの参加の障害となっている核抑止論の有効性を否定することは、TPNWの実効性を高め、ひいては早期の核兵器廃絶を実現するために極めて重要である。
他方で、日本政府は未だにTPNWに背を向け、署名・批准するどころか、締約国会合へのオブザーバー参加すら拒否している状況である。かかる日本政府の態度は、核廃絶のために先頭に立って取り組むべき戦争被爆国として、あるまじき態度である。
当協会は、TPNWに基づく核廃絶の道を進展させる重要な成果を残した2MSPの成功を歓迎し、今後さらなる取り組みを進めることを支持するとともに、日本政府に対して改めて、TPNWへ参加することを強く求めるものである。
2024年1月5日
日本反核法律家協会会長
大久保 賢一