6月13日以降、イスラエルは、イランの核関連施設、ミサイル基地、防空システム、革命防衛隊幹部の住居、国営放送の施設等に対する大規模な武力の行使を行っている。この攻撃により、イランでは非戦闘員や民生用施設含む大きな被害が発生している。この武力の行使は「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使、いかなる国の領土又は政府の独立性に対すものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」(国連憲章2条4項)とする武力の行使禁止規範に明らかに違反するものである。
イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの核開発の脅威を理由に「国家を守るための行動であり、他に選択肢はなかった。」として、この武力の行使は自衛権の行使であると主張している。しかしながら、国連憲章が自衛権の行使を認めているのは「国際連合の加盟国に対し武力の行使が発生した場合」である(51条)。イランが核開発によって周辺諸国に脅威を与えていること自体は非難すべきであるが、だからといって「武力攻撃」に該当するものということはできない。イスラエルの自衛権行使は、明らかに自衛権の濫用であるから、国連憲章上武力行使が認められる場合には該当しない。イスラエルのイランに対する武力の行使は国連憲章に違反する暴挙である。
それにもかかわらず、G7各国は、6月16日、「我々は、イスラエルは自国を守る権利を有することを確認する。我々は、イスラエルの安全に対する我々の支持を改めて強調する。」、「イランは、地域の不安定及び恐怖の主要な要因である。」との声明を発した。国連憲章違反のイスラエルの武力行使を容認し、被害を受けたイランを非難するものである。私たちは、このような国連憲章を無視し、加害者と被害者を逆に描くような声明を容認することは出来ない。また、同声明は「我々は、イランが決して核兵器を保有できないことについて、一貫して明確な立場をとってきた。」などとしてイランの核開発疑惑を責めているが、イランはNPTの加盟国であり、これまでも交渉に応じてきている。それらの経緯を無視して、空爆によって核関連施設を攻撃することは、放射能汚染を招きかねない危険極まりない行為であり、慣習国際人道法に違反する可能性がある。このような行為を実行するイスラエルは無法者であり、これを非難しないG7は無責任である。
国連憲章は「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって(中略)解決しなければならない。」としている(2条3項)。国際の平和や安全は,対話と外交努力によって達成できる事柄であり、武力の行使は逆効果である。当協会は「人類と核は共存できない」との立場から核兵器の廃絶と被爆者支援をめざす法律家団体として、イスラエルによるイランの武力の行使を強く非難し、即時に攻撃を停止することを求める。
2025年6月20日
日本反核法律家協会会長
大久保 賢一